それでも、このどうしようも無い現実で
「おっさーん、大吟醸。」
キィイ、と小気味良い音を立ててドアが開く。
「おーお前、退院したのか。」
「そんなことより大吟醸。」
「お前未成年だろ。」
街中にある小綺麗な寿司屋、『富来屋』。
午後5時、板前のおっさんの前のカウンターに座る。
「‥‥‥大吟醸。」
「そればっかりだなお前!無いって言ってんだろ!」
「何で寿司屋に大吟醸がねーんだよ。」
「うちはウイスキーしか無いの!それに未成年に酒出す寿司屋があるかあ!」
「何で寿司屋にウイスキーが有るんだよ!ウイスキー出す寿司屋に比べたら未成年に酒出す寿司屋のがまだ有るわ!」
「んだテメエやんのかああ!」
キィイと、ドアが開く
「やめい、二人共。」
「殺ったろうやないかいいい!」
「やめい、二人共」
「ええ度胸しとるなわれエエエエ」
「やめい言うとるやがああああぁぁぁあああ」
「「ぼっさんが切れたああ(笑)~~」」
「おどれらあああああああ」
「まあ落ち着けぼっさん。」
「そうそう、大吟醸でも飲んで。」
「だから大吟醸ねえって。」
「あア?(怒)」
「おオン?(怒)」
「ハア。しゃあないやっちゃなあ‥‥、おっさんいつもの。」
「あいよ」
「久しぶりやな雪斗。」
「ほんまに久しぶりやな似非関西弁。」
「似非やない!大阪に3年住んでたんやぞ!」
「3年だけじゃねーか。」
「3年しか‥じゃない3年も‥や、ときにお前どこ行っとたんや。」
「大阪や」
「嘘つくなや!」
「病院だよ。」
「それまた何で?」
「話はさかのぼること3週間前‥‥。」
キーンコーンカーンコーン
「チャイムの物真似上手いな。」
俺は一人寂しく夕陽の沈む土手を歩いていた‥‥。
「お前の学校の下校時間3時だろ。」
「あと土手なんてないやろ。」
失意に沈みながら川を眺める。
「川なんてないやろ。」
「排水口じゃねーのか。」
今日は期末試験の返却日だった。
「展開が分かってきたぞ。」
先生に渡された紙を眺める。
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必修科目落第のお知らせ
再試験の日程は‥‥‥
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終わった‥‥。
項垂れながら横断歩道を渡る。
「川どこいったんや。」
「埋め立てられたんじゃねーか?」
信号が青になったその時だった。
‥‥‥‥。
「溜めないで話せや。」
ドスンと鈍い音と共に、意識が遠ざかって‥‥‥。
「要は信号無視のオートバイに轢かれたと。」
「まあそんなとこだな。ドヤア」
「なぜドヤ顔をする。」
「んで全治4週間の怪我。最近ようやく歩けるようになったってわけ。」
「なるほどなあ。」
「あーあ。トラックなら異世界行けたかもしんねーのになー」
「全く、滅多な事言うもんや無いで。」
「ばっきゃろう、異世界転生は全中高生の夢だぞ!」
「全中高生に謝れ、貝とサバの太巻きセット一丁!」
「いつ見ても変な組み合わせだよな、それ。」
「これがうまいんや、いただきまーす。」
「おっさん俺もいつもの。」
「あいよ、お子さまランチな。」
「ちげーよハゲが」
「なんじゃテメエやんのかああ!」
「殺ったろうやないかいいい!」
「うん。やっぱりサバはうまい!」
彼は知らない‥‥‥、事故の衝撃で彼の魂の一部が欠けて、次元をさ迷い、いずれ一匹の微生物に乗り移る事を、彼は知らない、知るよしもない、今までも、これからも、彼尾城雪斗は異世界など行かずに、行けずに、それでも生きるこのどうしようも無い現実で
「お前金あんの?」
「つけといてっ」
「あっ逃げたっ、食うのはやっ」
「くそっまたやられたああああ」
さぼ‥‥‥休み前最後の投稿。




