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「なんだと!?」

バッシルの言葉にドーパが驚きの声を上げれば、クロマンス王国一行側からも動揺の声が漏れる。

騒ぎと言うほど大きくはないが、先ほどまで沈黙が続いていたために一気に音が溢れたような気がする。

それはそうだろう。

先ほどまで共に過ごしていた人間や探していた人物が死んだと聞かされれば、信じられないという気持ちが先に来るものだ。

「…どういうことか詳しく聞かせてもらえますか?」

ややして落ち着きを取り戻したのか、須藤君が静かにバッシルに問う。

きっと彼は『もしかしたらそんなシナリオもあったかもしれない』とか考えていることだろう。

残念ながらそんなものは存在しないが。

「なんか王城にいる妹のためだったみたい。側妃に頼まれたって言ってたよ」

バッシルはそう言うと一拍間を置いた。

そして勿体ぶるように口を開くと、

「もしかしたら婚約解消も側妃のせいかもね。なんかネージュを目の敵にしてたって話だったし」

図らずも核心を突いてしまった。

中々の推理力だ。

けれど前世の記憶がある須藤君は既にそのことを知っているはず。

「ああ、確か正妃が亡くなったことで負った心の傷を癒すには王城は思い出が多すぎるとかいう理由でネージュを修道院に入れて、そのままうまく生活しているみたいだから修道女として一生を終えさせてあげましょう的なことを国王に吹き込んだったかな?それに伴ってルイスとの婚約も破棄になったんだっけ」

ほらやっぱり知ってた。

でも今それを言うと、きっとクロマンス王国の人は驚くと思う。

だって破棄された当時、スノーリット王国からは理由を教えてもらっていないとさっきお付きその1が言っていたじゃないか。

「で、殿下!?何故それを?」

案の定お付きその1が驚いた声で須藤君に訊ねる。

須藤君が前世を思い出してから日が浅いようだから、そのことを彼らに教えていなかったのだろう。

ていうかこの話、側妃に聞かれていたら問題な気がするんだけど。

「何故って、ネージュのことと同じです。須藤ルイはそのことを知ってる。それだけです」

須藤君はまた困ったように笑いながらそう言った。

こいつもしかして今までそうやって誤魔化してきたのか?

意外と雑だなぁ。

「ともあれ理解しました。なるほど、貴方は側妃から命令されてネージュを殺害した。そういうことですね」

須藤君はそう言うとコツコツと靴音を鳴らしながら部屋の中を進んでくる。

俺の方に。

「ああ、この顔、間違いない。彼女がネージュです」

そして俺の頬に手を当てて確かめるように顔を撫でる。

ちょっと待って、それは流石にバレる。

なんせ生きているんだから体温もあるし死後硬直もしていない。

「こんなに冷たくなって。せっかく探し当てたのに残念です」

けれど須藤君はそう言うと俺から離れて行った。

そして横にいたハーピスに「この紙とペン、お借りしてもいいですか?」と言うと、何事かを紙に書き始めた。

さらさらシャッシャッと紙にペンを走らせる音がすぐそばで聞こえる。

その音では何と書いてあるのか当然わからないので、一体何を書いているのかと気になって薄っすら目を開けてみた。

するとばっちり目が合った。

誰とって、ルイスの顔した須藤君と。

ヤバいと思った瞬間、彼はにっこりと笑顔を浮かべると、何も言わずにまた紙に文字を書く作業に戻った。

なんで?と彼の対応に疑問を持ったが、それよりも背中に走った悪寒に反射的に目を閉じる。

完全に閉じる前に見えたハーピスの眼には「お前何やってんだ」という驚きと怒りが確かに見えた。

読了ありがとうございました。

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