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須藤ルイ。

それは三根純が生きていた世界で無黒社の営業マンであり、ルイス王子のモデルとなった人物と同じ名前だった。

但し参考にしたのは名前と容姿だけで、性格はまるで違う。

彼は最低な女嫌いなどではなく、ドクトのような優しく礼儀正しい青年だった。

その彼が今、ルイスとしてこの世界にいる?

俺と同じように転生したと、そういうことか?

「…私たちもその話を聞いた時は耳を疑いました。しかし、今は信じるしかないと思っています」

お付きその2が王子の言葉を補足するように口を開く。

「以前の殿下は女性不信で、女性に対して、その、酷く不誠実な振る舞いをしていらっしゃいました」

自国の王子の恥を晒すのは気が引けるのだろう、彼は慎重に言葉を選びながら説明を続ける。

「初恋のブランシュ様のことが忘れられなかったためでもあるので私たちも強く言えず、無法な振る舞いはエスカレートする一方で。城の者は皆このままでは誰も嫁ぎに来てくれないのではと危惧していたのです。ところがある日、殿下は人が変わったようになった」

自分で設定しておいて言うのはなんだが、王子が酷すぎる。

クロマンス王国の皆様、本当に申し訳ない。

「突然倒れた殿下は丸1日寝込みました。そして目を覚ますと、自分は王子としての記憶を持っているが、意識は須藤ルイという人物であると仰ったのです」

お付きその2はその時のことを思い出しているのか、声にため息が混じっている。

衣擦れの音もするから、額に手を当てて頭を振っているのかもしれない。

「何を馬鹿なと、殿下は頭を打たれたショックでおかしくなってしまったんだと誰もが思いました。しかし何日か過ぎるうちに私たちも殿下のお言葉は真実なのかもしれないと思い始めました。なにせ女性への態度が今までとは全く異なりましたから」

自国の王子相手に随分な発言があった気がしたが誰もそれにはツッコまず話は進んでいく。

「あれほど蔑視していた女性に慈愛すら感じるような目を向け、不誠実な行動を取らなくなった。それだけで城の者がどれほど喜んだことでしょう。お陰で令嬢から向けられる目も変わり、評判を聞きつけた高位貴族の皆様から縁談の打診までくるようになりました。元々女性問題さえなければ非常に優秀でご令嬢の結婚相手として申し分ない方でしたから。これでお世継ぎの心配もいらなくなったと私たちはさらに喜びました」

なんというか、ほんと、重ね重ね申し訳ない。

だが根拠はないものの、本当に須藤君はルイスに転生したのだと確信した。

もし須藤君がルイスに転生してなかったらクロマンス王国は滅んでいたかもしれなかったのだから、彼には感謝してもし足りない。

「しかし殿下はそれを拒まれました。『ルイス本人が決めるべきことを僕が勝手に決めるわけにはいかない』と。ああこのくそ真面目めと思いましたが仰っていることは至極当然と、私たちは再び諦めました」

ねぇ、ちょいちょい暴言入ってない?

お付きその2さん、丁寧な口調の割に口が悪いね。

「あの、今のところルイス殿下が須藤ルイという人物の人格になった、というのは信じがたいですが理解出来ました。でも何故ネージュのことを知っていたのかはわからないのですが…」

思ったよりも話が長かったせいか、そっとハーピスが口を挟んだ。

そうか、俺的には王子が須藤君であればネージュのことを知っているのは当然と思うが、ハーピスたちにしてみれば意味わからんよな。

須藤君は自分がモデルになった王子がいるからと進んでこのゲームをプレイしてくれたから、前世を思い出した後に自分が転生した世界が天罪の世界だと気がついたのだろう。

ただ、それを説明するのは酷く難しい。

ゲームというものも前世というものも浸透していない世界でどうやってそれを説明するか。

今俺が悩んだところでどうしようもないが、須藤君がどう説明するのか、つい自分に置き換えて考えてしまった。

「それなんですが、説明が凄く難しくて。とりあえず須藤ルイは『修道女であるネージュが第一王女ブランシュであることを知っている』ということだけお伝えしておきます」

須藤君はまた困ったように笑いながらハーピスの質問に答えたが、これは答えたと言っていいのか…?

俺の感想と皆の感想が同じだったのかはわからないが、その場にしばし気まずい沈黙が降りた。


「え、えー…こほん。それで、そのネージュですが、先ほどからずっと貴方の後ろで眠っているようですね。もしかして体調不良でしょうか」

ややして空気を変えるように須藤君が咳払いをした後、とうとう俺の存在に触れた。

これに言葉が詰まるのは今度はこちら側だ。

ハーピスやドクトが冷や汗をかいている気配がする。

「ええっと、ネージュは、ですねぇ」

なんとか誤魔化そうとしているのか、しどろもどろになりながらハーピスが言葉を紡ぐ。

助けてやりたいが、今ここで俺が起きればナナリーが危険になるかもしれない。

「ネージュはさっきここにいるドクトに殺されたよ」

どうしようと悩んでいると今まで何も声を発しなかったバッシルが突然ドクトを告発した。

関係ないけどバッシル、中身違うとはいえ一応王族相手には敬語使ってー!!

読了ありがとうございました。

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