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「今ちょっと立て込んでおりまして。ネージュに何の御用でしょうか」

ハーピスには王子の呟きが聞こえなかったのか、それともこの局面を乗り切ることを優先したのかその声音だけではわからなかったが、王子に用向きを問うた。

それはこの場にいる囚人たちと俺の共通の疑問だったので、全員が王子を注視する。

「…殿下は婚約者の姫を探しておられるのだ」

するとゼイゼイという息切れの声とともに先ほど遠くで聞こえていたお付きの人の声がハーピスの質問に答えた。

ようやく王子に追いつけたらしい。

「…婚約者?」

それにバッシルが呟けば、

「正しくは『元』ですが。彼女との婚約はなかったことにされましたので」

王子が苦笑したように言葉を補足する。

実際が苦笑だったかはわからないが、さておき。

んーと、元婚約者って、もしかしなくても俺かな?

何故ここにいることがバレているのか知らないが、どうやら王子の目当ては第一王女としての俺のようだ。

「その元婚約者を探していらっしゃるなら、何故ネージュの元へ?」

今度はドクトが王子に問う。

予想外の事態に殺人を犯した青年の仮面が取れてしまっているが、きっと今側妃はそれどころではないだろうから大丈夫だろう。

「そのネージュという修道女が、どうやら貴国の第一王女ブランシュ様ではないかという話になったからですよ」

それに答えるのは先ほどと違う声のお付きの人だった。

「元々婚約破棄の際におかしな点がいくつもあった。だが尋ねても明確な返答はもらえず、ブランシュ様も行方知れずになって…」

そしてそれを次いだのはお付きその1だろう声で、俺の知らない両国のやり取りを説明してくれる。

「ところが最近になって、急に殿下がブランシュ様がネージュと名を変えて監獄島にいると仰って。半信半疑で国境の街にいた司祭に確認したところ、『先日第9監獄島にネージュという修道女を連れて行った』と言うのでこうして訪ねた次第でありましてな」

まさか本当にいるとは、と弱り果てたような困惑した声でそう言う彼の言葉に俺はさらに疑問を深める。

何故王子は最近になってそんなことを言い出したのだろうと。

しかも話を聞く限り、元々知っていたわけではない?

「もしかして、その司祭って…」

俺が今の言葉を元に考え事をしていると、ハーピスが恐る恐ると言った様子でお付きの人に声を掛ける。

あれ?そういえば聞き逃してたけど、なんか国境の司祭の言い方変だったな。

まるで自分が俺をここへ連れてきた、みたいな…。

「ああ、たしかターギ司祭と言いましたかな」

そしてお付きその1の言葉でそれが事実だと気づいた。

あの人、そんなとこに飛ばされてたのか…。

「なるほど、話はわかりました。しかし何故ルイス殿下はその様なことを?どなたかからお聞きになったのですか?」

思わぬ形でターギ司祭の消息が知れたからか、ハーピスの声音がほっとしたようなものになった。

しかしまだ疑問は解けないと、再度王子に問う。

今更だけど直接王族と言葉を交わすって、不敬罪とかにならないよね?

「ええと、人に聞いたわけではないんです」

王子はハーピスの問いに少し困ったように答える。

それは言葉を探しているようであり、自分にもわかっていないような不確かなことを説明しようとしているようにも思える声だった。

「…信じられないと思いますが、突然思い出したんです」

逡巡後、王子は説明を諦めたように声を落とすと、

「自分が別の世界で須藤ルイとして生きてたことがあるってことを」

そう言ってはは、と力なく笑った。

読了ありがとうございました。

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