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今話からネージュ視点に戻ります。

「なんか、クロマンス王国の王子って奴が来た」

ドーパがそう言った瞬間叫ばなかった俺を誰か褒めてくれ。

なんなんだその超展開。

今まで王子のおの字もなかっただろうが。

俺は今目を開けるわけにはいかず、もどかしい思いをしながら必死に聞き耳を立てた。

なにせクロマンスの王子こそ、俺の計画している大団円風王子ルートの攻略対象だからだ。


クロマンス国第一王子、ルイス。

緑がかった青髪に宵闇色と比喩される黒に近い濃紺から青へのグラデーションとなっている瞳を持つ。

年齢は20歳で、その年齢の王子にしては珍しく婚約者がいない。

元々スノーリット王国の第一王女(つまり俺)を婚約者にするという話だったが修道院に入れられた際にその話は流れ、その後はよく知らない。

ゲームの設定では王子の肩書目当てに群がる女性に嫌気が差し女嫌いになっているはずだ。

それ故自分に群がる女性たちを見下し、彼女らと誠意なく付き合う軽薄な遊び人で、最低な女の敵と名高いキャラクター。

けれど実はネージュが初恋であり、彼女の影をずっと追っているという裏設定があった。

そんな最低一途王子が今ここに来ているという。

なんで??


「なんで他国の王族がこんなとこに?」

俺と同じ疑問を持ったのだろう、ハーピスがドーパに来訪の目的を問う。

だが彼も事情をよく知らないらしく、「さあ?」と言って首を捻っているようだ。

「なんか知らんが、ここの担当修道女に会わせろと言っていた」

「…はぁ」

ハーピスがため息を吐き、同時にガシガシという頭を掻きむしるような音が聞こえる。

なんで面倒事が次から次へと、といった心境だろう。

俺もだよ。

なんで王子が来るのがこのタイミングなんだ?

ゲームではもっと…、と思ったところで俺は気がついた。

これアレじゃね?

モチーフの白雪姫の方の設定に引っ張られた的な。

白雪姫では継母から受け取った毒リンゴを食べて仮死状態となった後すぐに王子が現れる。

継母である側妃の命を受けたドクトに殺されたことになっている今の俺の状況は、毒リンゴを食べた白雪姫の状態と酷似しているのではないか。

ということは今後の展開はどうなる?

絵本では王子が白雪姫の寝込みを襲って生き返る。

だが原作のグリム童話では王子が白雪姫の死体を見て一目惚れしてお持ち帰りしたはずだ。

これは…どっちの展開でも俺ピンチ!?

頼むハーピス!

頑張って王子にはお帰り願って!!

ああ、でも帰られると俺の目指すエンドが遠のく…。

さてどうしたものか。


「失礼」

俺とハーピスがそれぞれ思い悩んでいると、部屋の外あたりから知らない声が聞こえた。

いや嘘です。

ばっちり聞いたことあります。

ゲームの中で、だけど!

「ずいぶん時間がかかっているようですが、何かありましたか?」

丁寧な口調で話すその声は、画面越しに聞いていたルイス王子そのもの。

なのだが、なんだか違和感がある。

「何か、というか、あいつが…」

ドーパが王子の言葉におどおどと返す。

あいつ真面目だからきっと王族に対してどう話したらいいか迷ってるんだな。

というか、遠くから「殿下ぁ!?」「お待ちくださいー!!」と必死に叫ぶ声とバタバタとした4~5人の足音が聞こえるんだが、まさか王子1人で行動してたのかよ!!

やめてやれよ、お付きの人可哀想だろ。

「恐れながら申し上げます。先ほどそこにいるドーパより貴方がクロマンス王国の王子であらせられると聞きましたが、第一王子のルイス殿下で相違ないでしょうか」

お付きの人の言葉を聞いたからかドーパの態度からか、そこにいるのがルイス王子だと推察したハーピスは王子に問う。

頭が良いだけあって、失礼ではないレベルの敬語で話せている。

「ああ。君は…」

たしかハーピス、だったかな。

王子は肯定を返した後、ぼそりと小さな声でハーピスの名を呟いた。

「こほん。僕はここの修道女であるネージュに会いに来たんです。彼女はどうしたのでしょう?」

きっとにこりと笑って友好を感じさせる表情で言っているのだろうことが想像できる声音だった。

けれど俺はそれよりも前に聞こえた言葉で頭が真っ白になっていた。

『ハーピス、だったかな?』だと?

なんで名乗ってもいないのに囚人の名前なんかを王子が知っている?

そんな設定、王子にはないぞ!?

サブサブタイトル:ドクト、毒リンゴになる。

読了ありがとうございました。

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