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「んで結局昨日の暗殺者はなんだったんだ?」

朝食後、早々に片づけを終えた面々は昨日の件について話そうと再び食堂の椅子に腰かける。

ドーパが入れてくれた食後のお茶を前に、それぞれが難しい顔をしているが、その答えを知っているのは俺だけだ。

けれど今何の対策もしていない状況でそれを話すわけにはいかないので、俺は当たり障りのない結論に達するよう誘導する。

「昨日は考え事をしていたら寝てしまっていて、ふと目が覚めたら目の前にあの人がいたんです。あの時目が覚めていなかったら、私は確実に死んでいました」

まずは状況整理からと俺が口火を切ったので、皆は聞きの姿勢を取った。

「目が覚めた時、私は彼と目が合いましたし声も聞かれました。それでも実行したということは、彼の暗殺対象者は私で間違いなかったのでしょう。この島に女性は私しかおりませんから」

その後のことは彼らも見ていたので割愛する。

そして改めて言わねばならないことがあることに気づいた。

「グランプ、ドクト。2人が駆けつけてくれなければ、あのまま私は死んでいたでしょう。来てくれて、本当にありがとうございました」

一番俺の部屋に近いから音が聞こえたのだろうが、あの時駆けつけてくれたのがこの2人でよかった。

グランプでなければ暗殺者に勝てないし、ドクトでなければ怪我を適切に処置できなかったはずだ。

この部屋割りを考えたのが誰だか忘れてしまったが、心から礼を言おう。

「間に合ったとは言い難い状況だったけどな。ま、嬢ちゃんが無事でよかったよ」

「私は貴女が持っていた回復薬を使っただけです。気にしないでください」

礼を言われたグランプは多少バツが悪そうな顔を見せたが、すぐにニカッと白い歯を見せながら俺の無事を喜んでくれる。

そしてドクトも大したことはしていないと謙遜しつつ微笑んでくれた。


「今回は助かったからよかったけどさ、なんでネージュが狙われたんだろうね」

俺の話に区切りがついたのを見計らって、ハーピスが核心に迫る。

それに最初に答えを提示したのは双子だった。

「やっぱり僕たちのせいかな?」

「マーマハが僕たちを許せないから、僕たちが気を許したお姉ちゃんを殺そうとしたのかも」

2人は手を取り合い、不安に顔を翳らせながら言葉を紡ぐ。

核心に触れていないその答えを誤魔化すために採用してもよかったが、それでは2人が傷ついてしまうので、俺は代替案を提示する。

「それはどうでしょうか。側妃様にこの島でのことを知る術はありませんし、貴方たちがどう生活しているかもご存知ではないでしょう」

本当は知る術はあるしご存知だろうが、盗聴されているかもしれないこの状況でそれを知っていると知らせるのは得策ではない。

むしろ今の状況を利用して『側妃のことなんて疑ってもいませんよー』とアピールをしたいところだ。

「私が狙われた、というよりは、この島に派遣された修道女を襲った、と考えるべきなのかもしれません」

だから見当違いな推理を披露する。

「ターギ司祭の件を思えば、教会内の彼の味方をなくすためだったとは考えられませんか?彼が管理する第1~10までの監獄島にいる修道女は皆彼を慕っている者ばかりですし。なにより司祭の死は問題になっても、修道女の死はそこまで問題になりません」

俺が疑っているのはあくまでターギ司祭関連であって、ネージュ個人に関連するものだとは思ってもいない、と。

これが側妃の耳に入れば、あの女は俺を何も知らぬ愚か者として警戒の対象から外してくれ…はしなくても、警戒を緩めるくらいはするかもしれない。

「でもおっさんが追放されたのって、こいつらのせいって話じゃなかった?なら可能性はあるんじゃない?」

「それはあくまであの時点で思いついた可能性の一つでしかありませんし、何の確証もない話でした。むしろ私は教会内のいざこざで追放された可能性の方が高いと思っています」

だからハーピスが言った余計な意見も、申し訳ないが潰させてもらう。

僅かでも側妃を疑っていると思われてはならない。

「そうですね。ここで話し合っても正確な答えはわかりませんが、私もその可能性が高いと思います」

そう言ってありがたいことにドクトも俺に賛同を示してくれた。

頭の良い彼が言うと説得力があると感じるのは俺だけではないようで、今回の件は『司祭追放の余波』という結論で終わった。




「ネージュ、ちょっといい?」

話し合いの後、最後まで食堂に残っていたハーピスが静かに声を掛けてきた。

「なんでしょう?」

静かながらも妙に圧を感じるその声に、不審に思いながらも俺は彼と向き合う。

すると珍しく髪の隙間から垣間見えた彼の瞳は有無を言わせないほどの強い光を放っていた。

「あんた、何を知っている?」

そして彼の口から出た言葉に、俺は呼吸を止めた。

読了ありがとうございました。

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