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ドタドタドタ…

ガチャ

「ドクトー、嬢ちゃん目を覚まし…」

続きは「たか?」ですかね。

ノックもせずに部屋に入ってきたグランプは起きて右手をドクト、左手をバッシルに握られている俺と目が合うと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で言葉を止めた。

「お前、ノックぐらいしろよ」

一人手の空いていたハーピスがそちらへ歩いて行ったと思ったら、言いがてらグランプの頭を叩いた。

けっこういい音がしたし、叩かれたグランプも「いってぇ!」と声を上げたが腐っても下級騎士、学者のやわな攻撃など言うほど痛くないだろう。

「悪かったよ。俺のノックの音じゃ嬢ちゃんを起こしちまうかと思って一応遠慮したんだ」

やはりというべきか、叩かれた部分をさすってはいるが、大して痛くもなさそうにしながらもグランプはばつが悪そうな顔で言い訳をしていた。

「いやそこは普通ノックの音を小さくするって方に気を遣うんだよ」

しかしハーピスにあっさり論破され、今度は苦虫を噛み潰したような顔で唸った。

表情豊かな奴だな。

しかも下級騎士と学者という正反対の立場でありながら2人は仲が良いようだ。

そういう設定はなかったので少し意外に思いながらも、2人を見ているとなんだかしっくりくる気がしてくる。

「で、何しに来たの?」

グランプへのお説教は済んだらしいハーピスが改めて訪問の目的を訪ねれば、彼は「ああ」と先ほどのことなどもう忘れたように話し始めた。

「そろそろ飯作らなきゃなんねぇ時間だから来たんだよ。なんか嬢ちゃんが今日の夕飯はカルパッチョとカニシャブだかって言ってたから、起きてんならどんな料理か聞こうと思ってな」

彼はそう言うと「ちなみにお前知ってる?」とハーピスに聞くと彼は「いや知らない」と返す。

グランプから聞かされた未知の料理名になにそれと首を傾げ、ハーピスはこちらに顔を向けた。

その様子は不審半分、期待半分といったところか。

未知ではあるものの昼のことがあるから期待を持ってくれたのだとしたら、ちょっと嬉しい。

「だよな。昼のホウトウといい、嬢ちゃんは変な料理知ってんなー」

グランプは何も考えていないのだろう、ガハハと豪快に笑いながらハーピスと共にこちらを振り返り、

「んでお前らはいつまで手握ってんだ?」

無邪気な瞳をドクトとバッシルに向けた。


「別にやましい気持ちがあったわけではありませんからね」

「触られたから握り返しただけだし」

グランプの指摘に慌てて手を離した2人は恥ずかしそうな、照れたような、気まずいような、何とも言えない顔でぶつぶつと言い募る。

それは手を握っていたところを見られたからだけではなく、泣いてしまったことも合わせての表情だろう。

「だからって女性の手を男2人で拘束するもんじゃないぞー」

「そーだそーだ」

下級とはいえ騎士だったグランプに珍しく騎士道精神に則った至極真っ当なことを言われた2人はうぐっと呻いたが、囃し立てるハーピスのことは睨んでいた。

「自分はほっぺ撫でてたくせに…」

「聞こえませーん」

バッシルの小声の訴えもなんのその、両手を頭の後ろに組んだハーピスは胸の閊えが取れたからか、随分と機嫌が良さそうだ。

ちなみに今は部屋を出て廊下を4人で歩いている。

そう、5人の人間がいるのに、歩いているのは4人で。

「ていうかなんでグランプがネージュ抱えてるの」

残る1人の俺はグランプに抱えられている。

しかもいわゆる『お姫様抱っこ』。

こんなとこで乙女ゲーム設定出てこなくていいと心底思った。

「倒れたばっかなんだから当たり前だろ」

「いや意味わかんない」

バッシルの批難がましい言葉も視線も彼には全く届いてないようだ。

どこまでも自身の騎士道精神に素直に従うグランプは結局台所まで俺を下ろすことはなかった。

俺もうお嫁に行けない。

今は修道女の身だし元々独身を貫くつもりなのでどっちにしろ行かないが、恥ずかしさのあまり俺は顔を両手で覆い、こういうシーンではありきたりなことを思っていた。

読了ありがとうございました。

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