表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
7章 かくして英雄は生まれる(王国歴154~155年)
94/135

アブーハ公爵の宣戦布告

 騎士の行方不明が問題になって数ヶ月。

 とうとう、アブーハ公爵はサーベリオン公爵に宣戦布告を行った。





「友好の使者であった我が騎士を害し、だと言うのに度重なる挑発行為に加え――」


 騎士の件だけであれば、まだアブーハ公爵は我慢した。

 限りなく怪しくはあるがミルグランデ公爵側による離反工作の可能性があったし、徴用していたとはいえ部下一人の命と領全体の利益を天秤にかければ、戦争回避も視野に入れるべきだからだ。敵はミルグランデ公爵一人が良かったのだ。


 しかし、民衆単位で交戦論、開戦論が広まっている現状で。我慢にどれだけの価値があったのだろうか?

 ウノという王族の登場もあり、サーベリオン公爵を危険視する動きも領内で強まった。

 面子の問題、王族という先の問題、民衆の意思。

 それらが相まっての開戦である。


 10年前の同盟も、更新時期を過ぎてしまえば約束破りではなく外聞も悪くない。

 戦の火ぶたはアブーハ公爵が切ったのである。





 こうなるとサーベリオン公爵にはミルグランデ公爵との同盟が望ましいのであるが、それもまた難しい。


 ミルグランデ公爵がサーベリオン公爵にすり寄ったのは、王族という手札を持っていなかったことが大きい。

 彼の公爵の強みは「現王妃の父親であり、宰相の地位にある」という点だ。

 ウノという危険要素が加わったサーベリオン公爵は身内に引き込むにしても難しく、民意が「サーベリオン公爵を宰相に」などと言っていては仲間にしかねるといったところ。

 最近(9年前)は交戦していた事もあり、問題が増えてしまえば手を取ろうという意見を持つ者たちの声も萎んでしまう。


 それでも相互不可侵条約を結ぶ程度に手を取り合うべきだと、自分たちの領地を取り戻すまでは敵対すべきでないと、落しどころを決める。


 同盟ではない、だが敵でもない。

 両公爵の関係は、そのような妥協を許容した。





 サーベリオン公爵は、ウノを身内に引き込んだことを後悔している。

 しかし今更放り出す事ができるはずもなく、そのまま進むしかない状態だ。



 希望はいくつかある。


 イルムという男が行った「魔法教育」は多くの魔法使いを生み出した。10年前とは比べ物にならないほど騎士団が強化されたのである。戦力は十分という訳だ。

 ウノの存在は民衆を死地に追い込む疫病神のようであり、戦意をこれ以上なく高める勝利の女神でもある。ミラルドに率いられた兵士たちは勇猛果敢に戦うだろう。


 ミルグランデ公爵が過去から視線をそらし、手を取ってくれたというのは良い材料である。これで二面作戦などされればどうにもならないほど追い込まれただろう。アブーハ公爵とミルグランデ公爵が手を取り合えないほど仲が悪いので助かった。

 あとは、アブーハ公爵の年齢だ。アブーハ公爵は齢60を数え、いつ鬼籍に入ってもおかしくない男だ。彼が死んだ場合、大きな遺恨を残すような何かさえなければ、関係の修復が可能になるかもしれない。少なくとも、状況が大きく変わるだろう。



 懸念されるのは、ウノの年齢である。


 ミラルドが戦争に駆り出されることは不可避である。その間、公都にウノがいると子供が出来なくなる期間が伸びる。

 戦争は早く済んだところで数ヶ月はかかる訳で、そんなにも子供ができない期間が長くなると、お産の技術が拙い王国では加齢により出産時の危険度が増していく。ウノの子供ができないという事だけは絶対に避けたい。


 ウノ本人が一時犯罪者に落ちたクリフ以外を拒絶している事もあり、体裁を整えるのに随分手間がかかってしまった。

 こうなると仕込む(・・・)のに使える時間はそう長くは無い。出兵前にはどうにかなってほしいと、公爵は切実にそれを願った。





 そしてイルムは、なぜかミラルドの副官に任じられていた。

 剣と魔法の実力を評価されての事である。


 今のイルムには妻だけでなく家もあり子供もいる。

 逃げ出すという選択を、イルムは取れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ