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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
7章 かくして英雄は生まれる(王国歴154~155年)
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優勝者は英雄に

 秋の後半、武闘大会が始まった。


 収穫を終えた近隣の農民が、ここ最近では一番のお祭りだと公都に押し寄せ、観客となった。

 他の貴族領からも人が来て観戦するようで、公都は大いににぎわうことになった。


 さすがに被災地はまだ復興されていないが、それでも武闘大会を行う闘技場は無事だったので問題ない。

 むしろ空き地となった被災地を区画整理し、そこに新規で宿を作るなど利用していた。

 住人がいると簡単にできない区画整理も、人がいなくなり建物が完全に壊れてしまえば貴族の権力で出来てしまうのである。



 そんなにぎわう公都であったが、イルムは平常運転である。

 特に何かをしようとするつもりがない。


 ネリーの子供が生まれたのでそちらにかかりきりになり、遠出はクリフを迎えに行ったぐらいだ。

 生活の方は公爵家からの給与があるので特に不都合はない。


 子供ができると物入りになるというが、それぐらいの蓄えはすでにあったし、怪我人を癒すお仕事の需要をうまく満たすことで稼ぎは悪くない。

 期間だけを見ればだが、何気に盗賊退治に近い収入を得るほどであった。

 実際は一日の拘束時間を見れば時間単位の収入は下がっていて、危険をとるか効率をとるかという話である。

 今のところは、家にいられる時間を優先するようである。



 イルムの行動に関わらず、というよりもイルムが関わらないことで武闘大会は盛況のうちに進んでいく。

 酒場では「誰が勝った」「誰が優勝するだろう」といった話で盛り上がり、賭け札が貨幣とともに飛び交う。


 なによりも、「サーベリオン公爵領最強は誰なのか?」という話題は、誰の耳にも無視できない話題として聞こえる。



「魔法使いはなぁ。護衛の騎士様がいないと無理だろう?」


 イルムの名前も時々「最強」の中に紛れ込むのだが、魔法使いとしてはともかく、剣を扱った時の強さは一般には知られていない。

 そのため、だいたいが「1対1では勝てないだろう」と話が結ばれる。



 そんな中で、「組み合わせの妙で負けはしたが、すでに敗退した騎士の中にこそ最強がいる」と言う者もいれば「優勝した騎士こそが最強」と譲れない者たちの話は聞く者の耳を楽しませる。

 おそらくでもなんでもなく、実際に公爵が不正にトーナメント表を作り上げた結果、早い段階で実力者同士が潰し合いを行い、消えていった結果である。


 トーナメント表そのものは予選通過者と予選免除者の中からくじ(・・)を使って公衆の面前で決めたから不正を疑われてはいない。

 だが実際には手品のような方法でどうにかしていたという訳であった。

 目の前で堂々とされると、意外と人は疑わないということだ。


 「誰が最強」と言い合う者たちは、おそらく永遠に真実には気が付けない。





 武闘大会はいくつもの番狂わせの中で、平民出身の騎士が優勝した。

 どこかの誰かの、予定通り。


 ウノを妻とする権利を得た男の名はミラルド。22歳とウノより若い青年騎士だ。

 平民なので姓は無く、ただのミラルドである。


 彼は優勝の栄誉を讃えられ、一代限りの名誉男爵となり、公約通りウノの夫となった。

 平民が庶子とはいえ王族を妻にするという快挙に民衆は希望を抱き、大いに沸く。稀代の英雄と持て囃す。

 誰もがミラルドのようになりたいと憧れる。



 ミラルドは最強でも何でもなく、騎士団でも上位の中では下の実力しかない。才能はあるし努力しているが、本物の天才には敵わない程度の男だ。

 メイドに扮した事実上の本妻がいるとか、そういった話も民衆には聞こえてこない。


 ただ、平民の星として長く語られる英雄は、この戦争の落ち着いた最悪のタイミング(・・・・・・・・)で誕生した。


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