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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
7章 かくして英雄は生まれる(王国歴154~155年)
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武闘大会の告知

「ウノにはちゃんと伝えておくから」

「任せたぞ、イルム。……本当に大丈夫なんだよな?」

「そっちこそ。俺は伝えるだけだから簡単だって」

「うん。そうだな。そうだよな」



 村を出るイルムたち三人。

 そして一人残るクリフ。


 イルムはクリフを村に残す決断をした。


 クリフは恩赦によって元犯罪者ではあるが、基本的に行動の自由を得ている。村に残る事は特に問題なかった。そもそも、普段の行いそのものは悪くないので、ある程度以上の信用もある。

 できない事と言うと、元妻であるウノの傍にいるような事ぐらいだろうか。

 それに、クリフの問題より村の問題を放置するのが拙そうだからという理由もある。


 不穏な空気の村を放っておくと良からぬことをしかねないから、村の事は元住人(クリフ)に任せる。

 クリフは騎士と比較すればそこまで強くないが、それでも普通の兵士よりは強い。教師にはなれないが魔法も多少は扱える。

 元住人という情報収集のしやすさもあり、人選としては悪くなかった。



 それと、ジャンにしてみれば公都に戻ってきてくれないほうが都合が良いという事情もあった。


 ウノがクリフに拘っている事は周知の事実であり、本人も特に隠そうとしていない。

 そのクリフが公都にいるより、遠方にいてくれた方がウノの心変わりをさせ易い。

 物理的な距離は心の距離にも影響するのだ。ウノの「何かあればクリフに偶然会えるかも」という期待を打ち砕くにもちょうどいい。


 そう言った事情があり、ジャンたち公爵家側もクリフが残ることに賛成した。



 こうして、イルムたちは公都に帰参するのだった。





 イルムたちは移動時間を含め、おおよそ二ヶ月の間、公都を離れていた。

 普通、二ヶ月程度では特に大きな変化が無いのが世の中というもののはずだが、帰ってきた公都は大きく様変わりしていた。


「イルムイルム、大変だよ!!」

「聖女様の婿を決める、一大武闘大会?」

「優勝者に結婚の意思が無かったらどうするのかな?」


 それは、ウノの結婚相手を決める武闘大会のお知らせから始まり。

 それにより集まった公爵領中の猛者と賑やかしのおかげで公都中がお祭り騒ぎになっていたからだ。 


 離婚歴ありとはいえ、公爵の義理の娘で聖女のウノである。

 領内での人気は高く、身分に拠らず結婚の目がるなら、それがわずかな可能性であっても挑戦しようという人間は大勢いた。

 今はそういった連中が公都に集合している。


 災害復旧中の工事で人が集まっていたところに、更に人が集まったのだ。

 騒ぎが起きるのは必然と言えた。



 ふむ、とイルムは(ウノ)の考えを推測する。


 ウノとしてはクリフではない、新しい夫など欲しくない。本人がそう言っている。

 断るための方便として武闘大会を言い出したと考えられる。公爵がこんな事を言い出したとは考えにくいので、ウノが言い出したとみるのが自然だろう。

 しかし、武闘大会で優勝者が出た場合は結婚しないといけないのなら、この計画は片手落ちだ。一時的に結婚を迫られなくなるだけで結果が変わらない。


 武闘大会で結婚相手を決めてしまう理由は?

 クリフのことを諦めるつもりなのか。

 それが違うとなれば、クリフが優勝すると信じているのか。


 それは違うとイルムは結論付ける。

 イルムの妹は、夫を簡単に忘れられるような性格をしていない。

 クリフが優勝するなどと、ありえない夢を見るほど夢想家でもない。



 まさか。

 そんな言葉がイルムの頭の中によぎる。

 しかし、それしかイルムは考えつかなかった。


 ウノはおそらく――(イルム)と結婚するつもりなのだと。

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