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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
7章 かくして英雄は生まれる(王国歴154~155年)
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村の様子

 盗賊捕縛――いや、盗賊奴隷の回収と言った方が適切か。

 イルムたちは一月ほどダーレンで何度か仕事をこなし、そろそろ帰ろうかという算段となった。


 が、その前に寄り道をする。





「普通の村だなぁ」

「そりゃそうさ。普通の村だからな」

 

 一行は名も無き小村、クリフとウノが住んでいた村を訪れた。

 せっかく近くに寄ったのだし、帰れる里があるのなら顔を見せるぐらいは構わないだろうと思ってだ。


「クリフ! クリフじゃないか! 帰ってこれたのか?」

「おやっさん! 元気そうでよかったよ」


 クリフが村を歩けば見知った顔がクリフに声をかける。

 何人かは素直にクリフの無事を喜ぶのだが、そうでない者も多少はいた。


「ウノは? 嫁さんはどうしたんだ? 逃げられたとか言わないよな」

「……バカやって、離縁させられたよ。あいつはまだ、公都にいるよ」

「……そうか。すまんな、変な事を聞いて」


 それはウノの事を聞く者。

 ウノがいないことを残念がるぐらいなら問題ないというか自然ことだが、中にはウノを連れて帰って来なかったことをなじる者もいる。

 せっかく帰ってきたクリフを罵倒する始末であり、見ていた多くの者が顔をしかめる。


 そういった連中はクリフがどうこうという話ではなく、自分の事しか考えていない。ウノの魔法の恩恵をアテにしているような者たちだ。

 特に暴力的な者はイルムに捻られて強制的に黙る羽目になる。


 当たり前だが、戦闘能力という面ではルーナにすら劣る彼らに抗う術はない。イルムたちの体格を見れば暴力的にふるまうのは危険だと、少し考えればわかる事だ。

 だというのになぜ強気になれるのか、イルムには全く分からなかった。



 行って帰るだけの旅程ではあったが、その日は村に一泊することになっている。

 イルムたちも重くなった財布を持って夜の森を歩きたくない。主に安全よりも手間の面で。


 泊まる先はただの空き家だ。

 村民が使うような家を借りるだけなので、部屋が分かれているという事はない。大部屋ひとつの家だ。

 その中で、全員が額を突き合わせて村の様子について話をする。


「なんか様子がおかしいというか。キナ臭いよな」

「私もそう思う。何か、暴発する寸前といった雰囲気よね」

「ああ。不満をため込んでいる者が多かったな。痩せた者も少ないしし支援はされているようだが、何が不満なのだろうな?」


 この村に始めてきた三人は、この村は初めてでもいろいろな村を渡り歩いた経験から村に漂う不穏な空気に気が付いていた。


 どうにもならないといった不満を抱えて生きている者は世の中に多くいるが、普通なら実力行使まで行く者などほとんどいないはずだ。

 だがそういった事をしそうな、剣呑な雰囲気の者が多く見受けられた。

 これはかなり危険な兆候である。


 三人は、村の住人であったクリフに視線を向ける。


「分からねぇよ。俺が村を離れるまでは普通だったはずだ。

 飯にそこまで困ってないはずなのにここまで余裕がなくなるとか想像もしてなかった」


 この村の最近の問題というと、魔物の猪が出たぐらいだ。

 お金はかかったが、すでに退治済みという話である。

 それでここまで空気が悪くなるというのは考えられない。



「残ってどうにかするつもりか?」

「まさか。嫁と子供が待っているんだ。クリフには悪いがすぐに帰るよ」


 この問題をイルムがどうにかしようとしているように見えたのだろう。ジャンが小さく警告を発する。

 が、イルムの方はあっけらかんとしている。そんなつもりは無いと言い切る。



 その代わり、イルムはクリフの方をちらりと見た。

 つまりは、そういう事なのだろう。

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