無事な終わり?
ウノが王族として名乗り出た事は、一瞬で王国内に広まった。
王族の証である≪聖魔法≫を使える事が前提としてあり、疑いの余地が無かったので、とんとん拍子に話が進んだ。
クリフも恩赦による減刑が適用され死罪を免れた。
想定されていた中でも、特に穏当な結末である。
イルムが最悪として懸念していたのはウノの暗殺だが、今のところ、サーベリオン公爵にその意思はないようだ。
「無かったこと」にしてしまえば一番穏やかに話が終わるのだが、公爵の持つ良心と王家への忠誠心は、汚い手を使うことを躊躇わせたようだ。
突然の王族出現に、アブーハ公爵・ミルグランデ公爵の双方は動揺を見せた。
アブーハ公爵の方は最悪で、かつて自分たちが探していた王族が他の公爵についたのだ。ウノが旗頭となり主導的な立場に上り詰めれば敵対されてもおかしくは無いので、気が気ではないだろう。
ミルグランデ公爵の方はまだマシである。アブーハ公爵の行った破壊工作の真相を知ったことに加えサーベリオン公爵と共闘の芽が出てきたという事を考えれば、良い方向に話が進むと期待できた。
問題は自分たちが抱えている国王の反応であるが、庶子の従妹が現れたぐらいでは立場が揺らぐことは無いだろう。
両公爵の陣営は状況の変化に即座に動くほど小見ではなく、その動きは重い。
想定外に想定外を重ねたウノの話は、まずは自陣営の各部署と調整をしつつ、慎重に動くようであった。
今回使者が送られてきた理由である、肝心、要のサーベリオン公爵との同盟案などだが、これらはどちらの陣営も見送る事となった。
状況が大きく変わり過ぎたためにそれぞれの陣営が話を練り直さねばならなくなったのだが、現地にいる者たちだけでは権限を大きく超える調整が必要であるため、まずは話を持ち帰らねばならない。
派閥の長である公爵本人を交えつつ協議し、新しい案を持ってくることだろう。
そして。
ウノの処遇であったが。
「これからは王女として振舞うように、らしいです」
「ウノ……」
クリフの助命は認められたが、二人は離縁させられる事になった。
それも仕方が無いだろう。
助命されたとはいえ、クリフは犯罪者であり、王族の伴侶としてふさわしくないと公爵らから判断されたのだ。
平民であることも減点要素だが、そちらよりも犯行に至った流れを考えれば、すぐに手を出してしまう性格的な面の方が決め手となったわけだ。
責任ある立場の人間が軽率な行動をするようでは困ると言われて、反論できる人間がどれだけいるだろうか。
正論であるため、ウノも反論できなかった。
感情論を振りかざしたところで意味は無く、理では相手の方が間違いなく正しい。
イルムもこれに反論することはできない。
……愛人として囲う分には問題なかったりするのだが、その場合は公爵の用意する夫を迎え入れることを条件として出されることになった。
いずれ受け入れねばならないのだが、しばらくは気持ちの整理を付けるのに時間を使う。
ウノが本当に立ち直るのは、まだまだ先になりそうだ。
今回のクリフの暴走は、この時点だけを見れば、ほぼ理想的な終わり方を見せた。
しかし、姑息な方法では長く平穏を保てない。
次の問題がすぐそこまで迫って来ていたのであった。




