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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
6章 守るべき人(王国歴153年)
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優柔不断の対価

 それしか手段はない。

 ウノの去った部屋で、イルムは自嘲する。


 イルムは、ウノに彼女の出自について語った。

 王族の出である事。

 そして、それは今の情勢でならかなり強力な手札になりうると。





 王家の血筋などは疑われる可能性もあったが、実は証明するのは簡単だった。

 王族限定ジョブ『プリンセス』のジョブ固有の≪聖魔法≫というスキル。

 これが何にも代え難い証明手段となる。



 細かい理屈は分からないが、王族にしか≪聖魔法≫は使えない。

 イルムなどは「公爵家には何度も王族が降嫁しているので使えてもおかしくないのでは?」などと考えているが、ジョブ・スキル共に王位継承権を持つ王族に限定されている。

 逆に、このジョブに就けない者は王位継承権を持たないと言ってもいい。


 だからこそ≪聖魔法≫が使えるウノは国内情勢に大きな影響を与える。


 現在国王を手中に収めているのはミルグランデ公爵家で、王領を自陣営に組み込めるのも、そういう正当性があったからだ。

 アブーハ公爵家も王族を確保している。国王と王族では力関係で劣り王領を確保できていないが、それでも戦争をする正当性はこれで確保できる。


 残るサーベリオン公爵だけは王族を確保していない。よって下手な動きをすると反逆者コースだ。元自領を奪い返すぐらいなら正当性を主張できるが、軍で他領を奪う事は出来ない。

 クリフたちの村の時は、戦争とは関係ないところで恭順してきたから受け入れただけなので良かったというだけだ。



 もちろん、ルール破り、正当性のない戦争もありうるので、油断などできるものではないのだが。

 ここでサーベリオン公爵が王族を確保した場合、正当性を持って戦争を起こせる。


 ただ、これまでサーベリオン公爵が王族を確保してこなかったのは、それが難しいというのも理由のひとつなのだが、その戦争をしたくなかったからだ。

 自分が戦争を起こす気など持っていないと宣言したからこそ、王家とは距離をとった。


 それが、王族を確保していたとしたら?

 サーベリオン公爵本人の考えはともかく、周囲の目にはどう映るだろうか?

 影響力の大きさから、ウノの出自は交渉カードとしては使えるだろう。クリフの助命程度であれば、応じてもらえる可能性は高い。





 ウノが出自を明らかにした場合、王国の内戦は激化するだろう。

 それこそ、ゲームのシナリオ通り(・・・・・・・・・・)に。


 それをイルムは、シナリオの強制力のようだと感じた。

 自分という異物が作り変えてしまったシナリオを、本筋に戻そうという外なる意志。

 陰謀論めいているが、どうにもその考えがイルムの頭にこべりつく。



 これから戦争になるだろう。

 かもしれない、ではなく。何千、何万と人が死ぬ。友人の命ひとつでは釣り合いが取れないが。

 それでも、だ。


 もう、言ってしまった。進んでしまった。

 後戻りはできない。

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