表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
5章 魔法使いの弟子たち(王国歴149~152年)
72/135

幕間:貴族の動き

 公都に大打撃を受ける。

 そして多数の死傷者が出た。


 こういった大事件は、さすがに隠し通せるものではない。

 情報はミルグランデ領、アブーハ領にもすぐに伝わった。





 ミルグランデ公爵側は、これを機に反撃を、とはいかなかった。

 領地を取り戻されたサーベリオン領に仕掛けるよりも、領地を奪われたアブーハ領側にこそ仕掛けたかったからだ。


 1年後の今はまだ領民も自分の言う事を聞くだろうが、数年後に同じことが言えるはずもない。

 戦うべきはアブーハ公爵なのだ。

 今は敵を増やせる時ではなかった。


 よって、ミルグランデ公爵はサーベリオン公爵に資材の援助を対価とした、数年の休戦条約を提案する。

 これが成立すれば戦力をアブーハ公爵に集中させることが出来るので、外交大使には公爵の継嗣が向かう事になった。





 アブーハ公爵側も、すでに不可侵条約を結んだサーベリオン領に侵攻するといった事は出来ない。

 条約を破れば信用を一気に失い、今後の統治に苦労するのが目に見えているからだ。

 だから出来るだけ支援を行い、ミルグランデ公爵と休戦条約を結ばないように工作をするよう、計画を立てる。


 幸いにも同じ敵を相手に戦い、不可侵条約を結んでいる相手なので、災害に対する支援物資を送りつけたとしても不思議ではない。

 「仲間である」という友好ムードを演出し、これを機に取り込みを行う事を画策し始める。


 この交渉を上手くまとめ敵戦力を分断した状態にもっていければ、昨年得た領土を安全に支配下に置けるだろう。

 どちらかといえば非戦論者よりのサーベリオン公爵が相手では交渉が難航するとみられるので、アブーハ公爵は自分の部下の中から優秀な、信頼できる騎士団長(・・・・)を派遣することに決めた。





 サーベリオン公爵は自領の状態から他公爵の考えを正確に見抜き、どちらにするかを考える。


 アブーハ公爵とミルグランデ公爵の、どちらの提案を受け入れるなら、戦争が早期終結をするか? 公爵として一番利益を出せる選択は?



 アブーハ公爵の提案に乗れば数年間は戦争を回避できるだろう。

 アブーハ公爵は手に入れた領土を完全に手中に収めるまでは動かない。

 しかし、さらに数年経った後であればまたミルグランデ公爵領を侵略すべく動き出しかねない。


 ミルグランデ公爵の提案に乗った場合、あと1年か2年先に、アブーハ公爵と戦争状態になるだろう。

 領地を早く奪還せねば、戦力的にも統治者的にも奪い返せなくなるのだから。

 ただ、戦争をどうやって終わらせるか考えた場合、その一線の後であれば、結果がどうであれ交渉の余地ができる。結局土地の総面積は変わらないのに、人も兼ねも大きく消費してくれるのだから。

 まず間違いなく、戦争をしない事を選ぶ自領が最大勢力になれる。巻き返しは十分に可能だ。



 利益だけを見れば、ミルグランデ公爵の提案に乗る方が良いだろう。

 ただ、ここに部下の心情なども加味して考えねばならない。


 人は心を持った生き物なのだ。機械的で合理的な考えだけには従えない。

 一度謀略を仕掛けてきたミルグランデ公爵を信用できないという見方もあるし、どこまで協力するのかという話もある。


 あとは味方をする勢力をコロコロ変えると、その分評価が落ちるという外聞も気にしないといけない。

 面子に信頼や信用(他所からの評価)というのは、貴族にとって重要なのである。





 貴族たちは自分の思惑を、バレているとは知っていてもあえて隠しつつ、交渉に臨む。



 が、この交渉の結果を決めるのは、彼ら貴族ではなかった。


 個人的な感情だけで暴走する男が二人(・・)

 一人はイルム。こちらへの備えはされていた。

 だがもう片割れは非常に地味で目立たず、ノーマーク。


 その結末は、誰も考えていなかった方へと転がることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ