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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
5章 魔法使いの弟子たち(王国歴149~152年)
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幕間:多忙な聖女

 多くの死傷者が出た事で、“聖女”ウノも治療に駆り出された。



 彼女が公爵家の養子になったのは、「凄い回復魔法を使える人材を手元に置いておき、自由に使えるようにするため」だった。


 暗殺などの手段を取られたときに、近くに回復魔法の、それも高レベルな使い手がいるというのは非常に頼もしい。それに自分や身内を助けるだけでなく、部下の身内にも回復魔法で恩を売れるかもしれない。

 また、養子にすることで他の貴族の干渉を防ぐ理由を用意できる。平民の恋人どころか夫もまとめて受け入れたのも、他の貴族が嫁にすることで干渉してくるのを防ぐのにも都合がいい。自分の度量に広さを見せられるし恨まれないし、聖女が既婚である方が、未婚よりも都合が良かったのだ。


 そしてこういった時に民衆に奉仕をさせれば、民からの名声を得ることが出来る。



 ウノは事件以降、非常に大変な時間を過ごす羽目になっていた。





「本日の治療はもう終わりです。お疲れさまでした」

「ありがとう、カーラ」


 ウノの魔力は当たり前だが有限であり、助けられる人数に限りがある。

 広範囲回復を施すことで人数を稼いではいるが、それでも怪我人の数からいえば全く足りない。


 ウノの魔力が完全に回復していれば300人は何とかなるが、毎日魔力を限界ギリギリまで使っていると回復量が追い付かず、1日に100人ぐらいが限界となってしまった。

 ウノの魔力は最大値が非常に大きく、1日では完全回復してくれないのだ。

 だから公爵家が治療するものを選別し、より治療が必要なところを優先して回復魔法を使わせている。



 それと、それ以外の者が接触しないように、非常に気を使っている。

 後回しにされた者の身内がウノを恨まないとは限らないからだ。


 ならばそういったものに直接陳情をされないように気を使うのが護衛の仕事である。

 ウノの護衛は騎士50名とそれ以外の、裏の者が20名と、かなり気を使われている。



 ウノはそうやって周囲に気を使われている事を分かっているが、それをどうにかしようとは考えていない。

 自分にできる事はちゃんとやっているという自覚があるし、それ以上手を広げようにも魔力が全く足りないという現状を考えると、何もできない事を理解しているからだ。

 もしも直接顔を合わせ頼まれれば無駄に(・・・)苦しむ事になるのを理解しているのである。


 言われるままに助けた場合、他の誰かが犠牲になるだけなのだ。

 問題が解決するどころか、逆に問題を大きくするだけでしかない。


 何も考えずに生きられればいいのだろうが、彼女の視野は、苦しむ人の姿を捉えてしまっている。

 知ってしまった事を恨みつつ、心労に悩まされながらも、ウノは聖女として夫とともに頑張っていた。





 なお、イルムたちも似たような事をしてはいるのだが、こちらはそこまで気を使われていない。

 本人がかなり強いと分かっているので、護衛などもいるにはいるが、何とかなるだろうと案内役程度の仕事しかしていない。


 付け加えると、大衆の人気はほぼウノが持っていってしまっている。

 イルムに助けられた者も少なくは無いのだが、むしろウノよりも助け数は多いのだが、それでも人の噂話に上るのはウノの方だった。


 そのあたりは公爵の行っている情報操作の成果であり、「助けてくれるなら、男よりも女の方が見栄えがいい」といった理由ではない。

 イルムの活躍は、聖女の陰に隠れて非常に地味な結果に終わった。

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