表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
5章 魔法使いの弟子たち(王国歴149~152年)
67/135

救助活動

 夕暮れというのは、明るかった空が徐々に暗くなっていく時間帯だ。

 だから空が薄暗いというのは、不思議な事ではない。


 だが、今、空が暗いのは夕方だからではない。

 黒煙が空を覆っているからだ。

 イルムの視界の半分は、黒煙で彩られている。


 また、完全に暗くなっていない理由は、街が燃えているからだ。

 赤々とした炎が踊り狂っており、惨状を照らし出している。


 そして、その中で助けを求める人の、絶望の声。

 怪我人のうめき声が聞こえる。

 炎の中の誰かを呼ぶ声が聞こえる。

 ただただ現状を受け入れられず、泣き叫ぶ声が聞こえる。


 それはイルムが生きてきた中でも特に恐ろしい、地獄のごとき光景。


 ――煉獄

 地獄と同一視される、悪臭を放ち消える事の無い、永遠に燃え続ける炎の世界――


 戦争よりも理解しがたい不条理が、そこにはあった。





 何が起きたのかイルムには理解できなかったが、吹き飛ばされた家屋の瓦礫で多くの死傷者が出ている。

 この時間は家で家族のだんらんといった人が多く、多くの人が崩れた家屋の下敷きになっているのだ。そして、逃げる事もかなわず炎に焼かれ死ぬ。

 無事に逃げ延びた人も、目の前で自分の家が焼かれていく光景に崩れ落ちる。



 そんな光景にショックを受けたイルムだが、とにかく目の前の人たちを助けるために動き出す。


「静謐なる空に音は無く、影は揺らがず、全ては完成された世界として飾られるだろう。時空(とき)すら凍れる、白の慈悲よ≪アレンジ:範囲無限≫≪エクス・アイス≫」


 まずは被害を食い止めるために消火が先決である。

 怪我人を背に、イルムは魔法で消火活動を行う。

 魔法で火を消し去り、少なくない範囲を安全地帯へと作り替えた。



 範囲制限を取り払った≪エクス・アイス≫。

 ≪エクス≫ランクの魔法だが、範囲制限が無い事で威力は拡散し、消火をするもほんのわずかに延焼を遅らせる程度の効果しか生み出さない。

 近くで燃える火の手を完全に止められないなら、鎮火した場所であっても、いずれは再び炎に飲まれるだろう。



 しかし、火が無い間に、そこにいる人を助けることはできる。


「急げ! 無事な者は今のうちに怪我人を連れだせ! 俺は火をもう少し食い止めに行く!

 ロイダンはこの場にとどまり治療を!」


 イルムは叫び、救助活動をしろと呼びかける。

 すると、炎の中にいるであろう誰かを呼んでいた人たちは、急いでがれきの山へと走り出す。

 イルムもまた、まだ火の手が上がっている場所へと駆け出し、続けて鎮火を行う。

 ついでに道から大きめの瓦礫を吹き飛ばして、救助の助けになるよう通路を確保する。


 連れてきたロイダンはその場に残して治療にあたらせた。

 イルムと一緒に動くには魔法の腕が足りないし、同じ事は出来ても一度きりであまり意味が無い。

 騎士団の隊長だった彼は、戦場での応急処置ぐらいはできる。騎士団の人間という立場もあれば回復魔法も使えるので、何かと活躍できるだろう。

 回復要員として使う方が有効なのだ。





 そうしてイルムは延焼していた場所の約半分を一人で消火し、大勢の命を救った。

 聖女ウノも後から来た事で、死傷者の数はこの規模の災害にしては少ない被害で収まった。


 だが、それでも数千人の人が死に、数万人の被害者が出た。

 家族を喪い、家財を焼け喪った人の表情は暗い。



 原因はすぐには分からず、サーベリオン領は騒然とするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ