合成魔法の研究
イルムは、自分が魔法を究めているとは思っていなかった。
なぜなら、ここはゲームシステムに縛られていない世界だからだ。
イルムが最初に考えたのは、複数の魔法使いが同時に魔法を使った時の結果だ。ルーナとネリーに魔法を教えたのも、それを調べたかったという理由がある。
それはいわゆる、魔法干渉・魔法合成の研究である。
ゲームシステムでは、魔法は一つ一つ処理される。
≪ダブルキャスト≫など、複数の魔法を同時に使うかのようなアビリティはあったが、これはどちらかというと『同じ魔法を連続して使うだけのアビリティ』でしかなかった。イルムがやりたい事とは違った。
イルムがやりたかったのは、例えば左手から炎の魔法、右手から氷の魔法を出す準備をして、そのまま使わず手を合わせて魔法を合成、極大消滅呪文にするというものだ。
似たようなことはいろいろなファンタジー系創作物で行われており、定番と言われている。
別ゲームでは複数の魔法を究める事で新しい魔法を覚えるといったシステムもあり、どうにか再現してみたいと考えたわけだ。
ひとりで二つの魔法を同時に扱うというのは、イルムでもできなかった。
イルム自身、ゲーム情報によって多くの魔法を使えるようになっているだけなので、これは仕方のない事と言える。
ただ、そんなイルムでは対処しようのない事があったので、その先を求める気持ちが燻っていた。
これはしばらく忘れていた感情だったが、妹と古い友人に再開したことで再燃した感情だ。
村を襲われた時に安全策を採ったら何もできなかったというのは、イルム本人も気が付かぬ間にトラウマになっていたのだ。
「炎と氷でソウル〇ォース、駄目だな。
人数を増やせばバランスが取れて何とかなるかもしれないと思ったけど。結局、魔法が打ち消し合うのか」
別ゲームの合体魔法、複数の魔法使いが協力し合って使う魔法を試しているが、実際は全然上手くいかない。
≪ハイ・ファイア≫と≪ハイ・アイス≫の魔法をそれぞれ4人がかりで同一の的を狙って使ってみたが、互いの魔法が干渉しあい、打ち消し合う結果になっていた。ゲームでは起こりえない現象だ。
最初は、イルムが嫁二人とやっていた時は、イルムの魔法だけが発動した。
イルムの魔法が強すぎ、嫁二人では対抗できなかったのだ。
だからバランスが同じぐらいならどうにかなるかもと期待していたのだが――結果は「干渉しあった魔法は打ち消し合う」というものだった。
これは魔法の組み合わせを変えても同じで、≪ハイ・ファイア≫と≪ハイ・サンダー≫などでも同様の結果である。同じ魔法ですら、打ち消し合った。
「魔法は相殺が可能だが、共振による強化合成はしない」
実験により、その事が魔法業界の常識として、イルムの中では確定した。
魔法を合成したければ術式の段階で合成する必要があるという事。
イルムの元知識である某別ゲームも、魔法の合成には専用のスキルか装備が必要だったので、そういうものだと割り切るしかない。
そう、思っていたのだが。
「師匠、魔法をそのまま使っているのが問題なのではありませんか?」
「どういうことだ、ミュロン?」
「はい。おそらくですが、干渉しあって打ち消し合うのは、魔法の基本法則として、魔法の術式にそのように組み込まれているのだと思います。
ですから、打ち消し合う部分の削除を行い、“干渉を許容する魔法”を作れば、あるいは」
「一理あるな。たしかに、どこか見落としがあったのかもしれない」
高弟のミュロンは、イルムの教えから別の可能性を見出していた。
イルムの思いつかなかったアプローチを提案する。
「よし。では、一度それを調べてみるか。いや、言い出したミュロンにそれは任せよう。
俺の方は何らかの大規模補助具で一つの大規模魔法ができないか、考えてみる」
「はい!!」
イルムは次の可能性、儀式魔法と呼ばれるものが存在しないかを調べることにした。
複数人数の使う複数の魔法を合成するのではなく、複数人数で一つの魔法を使うというものだ。これもゲームではお約束のひとつである。
そしてミュロンが魔法を改変して、合成用魔法の研究をする。
ミュロンは弟子育成も含めてイルムの目の届かない場所にいる事が多くなるのだが、それをイルムが気にすることは無かった。
イルムが魔法の研究をするように言ったのだから、それはしょうがない事と思われてしまったのだ。




