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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
5章 魔法使いの弟子たち(王国歴149~152年)
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新弟子

 弟子たちが卒業したが、すぐに次の弟子が補充される。

 今度は卒業生、高弟となったの5人がいるからと、10人が押し付けられた。

 新弟子は高弟が教えやすいようにと、高弟である5人の元部下のみであった。顔見知りであるので、彼らも互いに何でも言いやすいだろう。


 イルムは総監督というか、高弟が新弟子を教えるのをサポートするように動く。

 元より魔法教本があるのだ。まずはそれに沿って教えれば問題は起きないだろう。



 イルムはギリアムという名の高弟の様子を見ていた。


「では、魔力を感じる訓練からだ」

「団長、この本に書かれている内容の、意味がわかりません! なんで川に入らねばならんのです?」

「意味がわかる必要はない! まずは言われたことをやってこい!」


 新弟子は気安さからか、高弟が相手でも物怖じせずに疑問を投げ掛ける。そして高弟たちは自分がその修行をしていたときの事を思いだそうとしては、朧気な「修行の意味」を教えている。

 普通なら何でも言い合える関係は良いことなのだが、言い合いがある分、進捗はよろしくない。つまらない質問をして修行の進行を止めるので、イルムが教えていたときに比べ、倍以上の時間をかけていた。



 イルムは口を挟まず、その様子を見守る。

 素直だった弟子と自分の幸運に感謝しつつ、高弟の苦労に苦笑いだ。


 この日は予定の三分の一しか修行が進まず、最後に何が問題だったのか、反省会をしてお開きとなった。





 その翌日。

 今度こそはと高弟(ギリアム)は気合いを入れる。


「よし。では、今日の修行を始める。

 事前に言っておく。今日は一切の質問を受け付けないので、そのつもりでいるように。分からないことは、やってから、あとで聞け」

「団長。それだと効率が悪くないですか?

 自分が何をしているか理解しつつ進める方が覚えが良いと思います」

「安心しろ。“理解は必要ない。言われたことを、何も考えずにやれば良い。”

 やったあと、自分なりに納得できる答えを考えろ。その方が覚えが良いだろうからな」


 ギリアムは弟子たちに、言葉による事前の理解は不要と言い放つ。

 実際、その考えは正しい。

 なぜなら、説明されても理解できないからだ。


 人間の理解は、過去の経験を基に行われる。

 今回の場合は魔法関連で、彼ら弟子たちの中に全く経験の無い事を教えようとしている。剣を教えるように、見たことがあるからなんとなく言われて理解できることとは違う。

 理解のための下地が無いのだ。


 だからギリアムは先に経験をさせ、魔法関連の経験を積ませてから、自分なりに経験を理解に変えろと言っているのだ。

 自分という成功例があるので、言葉には説得力があった。



 その後のギリアムは弟子をよく教え、順調に指導をしていく。

 他の高弟も特に問題なく指導を行い、イルムの出番はどんどん失くなっていった。


 それが、イルムの価値を相対的に下げていく。

 半年で世代がひとつ進むというのは、公爵にとってどれ程の意味があるのか。

 それにイルムだけが気が付かなかった。

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