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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
5章 魔法使いの弟子たち(王国歴149~152年)
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魔法使いの卒業と魔法ギルドの始まり

「ミュロン、合格おめでとう。ここに卒業の証明として、賞与と、メダルを授与する」

「ありがとうございます!」


 年初めからしばらくして。

 イルムは弟子たちの実力を確認し、その能力を保証するとして、証書とメダルを渡していった。


 弟子たちの中にはそのまま弟子でい続けたいと願う者もいたが、今回の卒業試験で手を抜いた場合はそれも叶わないので、試験は本気で挑んでいた。

 不合格者は破門というのは、脅しとしては有効だったらしい。下手に実力を隠して不合格を目指す者はいなかった。



 卒業時に与えられるメダルだが、これは証書一枚では味気ないからと、イルムが頑張って考えたものだ。


 最初は魔法使いなのだし、杖を渡せばいいかと考えていた。

 しかし下手な杖を渡した場合、困る事が起きる。

 それは魔法使い用の杖の大量発注だ。


 魔法使いにとって、魔法の威力を高める杖の有用性は語るまでも無い。

 これについてはゲームと変わらず、短い棒状のワンド、ちょっと長めのロッド、人間の身長とさほど変わらないスタッフと種類があるのだが、どれも魔法の威力を高めるというのには間違いない。

 使われる素材が大きく影響するというのは間違いないが、作り手によっても品質が大きく変わるのもゲームと同じ。

 そしてイルムは、かなり上質な杖の製作が可能だった。


 現状、イルムは魔法関連の教師として満足できる生活を送っている。

 これ以上の労働をしたいとは思わない。

 そこそこの収入にそこそこの労働。全身全霊、本気で取り組む仕事というのよりも、心に余裕のある働き方がいい。

 これ以上の労働など、イルムはごめんだった。

 良い魔法使いの杖は自分や妻の分だけあればいいと、隠し持つことにしている。



 お国のために、というのであれば実力を隠すのはあまりいい選択肢であるとは言えない。

 力を持つ者として、貢献すべきである。


 イルムは家を得たのだし、サーベリオン領の発展に寄与するのに文句を言う気は無いが、馬車馬のように働きたいわけではない。

 杖の作成で弟子を取るのも嫌だったので、実力を見せない方がいいと思っていた。


 力ある者には義務がある。

 ノブレス・オブリージュ。


 しかしイルムは俗物であった。

 よって義務など背負わなかった。





 イルムの弟子5人は、そのまま高弟としてイルムの補佐に回る。

 そしてイルムは新しい弟子を受け入れることになる。

 そうやって、一度に受け入れる人間を増やしていくというのが上の出した方針だ。


 ゆくゆくは魔法ギルドのような物を作ろうという事である。



 技術の秘匿という意味では学校のような大仰で開かれたものを作るという事は無い。

 無いのだが、技術の伝承という意味では学校、組合的な場所を作るのが最善であると考えられている。

 そしてその技術を伝承するための組織がギルドなのだ。


 いわゆる冒険者ギルドというイメージが間違った印象を与えるが、ギルドというのは本来、技術の伝承を目的とする組織である。そういった組織が出来る事を、貴族たちは求めている。


 出来ればサーベリオン領が魔法に関するこの伝承技術を独占したい。

 そのあたりの細かい話はイルムが関わらない。むしろイルムから完全にその「教える技術(ノウハウ)」を盗むためにもギルドという形は有効だ。

 最初は教えるイルムに名誉を与え、最終的にはイルムがいなくても魔法の伝承に問題が無いようにする。

 イルムの影響力が残らない組織にしたいと考えていた。


 イルムはどちらかというとそれを当たり前のように考えており、技術などを独占する気が無い。

 それにより自分が排斥されるとは考えておらず、特別扱いはされなくなるだろうが、どうせ手は足りないだろうからと頼られるものと考えていた。

 特別性を失った自分が殺されるとまで、想像していない。



 多くの人が関わり、魔法ギルドは形を与えられていく。

 この高弟たちは魔法ギルドの幹部として運用されていくことになるはずであった。


 ただ、その行く末は、まだ誰にも分からなかった。

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