表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
4章 聖女と守護騎士(王国歴148年)
44/135

プロローグ:騎士団の一撃

 ダーレンでの戦いは佳境に入っていた。



「第一部隊、突出し過ぎだ! 呼び戻せ!」

「右翼押されているぞ! なにやってんの!」

「くそ! 怪我人を後方へ! 治療させろ!!」


 ダーレン伯爵は軍を街の前に展開。籠城ではなく野戦を挑んできた。

 前線はすぐに接敵し、戦端が開かれる。


 最初に飛び交うのは矢の雨だ。

 双方、ここで使い切るかのような勢いで弓を引く。

 弓兵は狙いなど付けない。ただひたすら、前を向いて弓を引くのみだ。そうやって矢の雨を作り出す。


 ただし、弓と矢はあくまで戦いの序盤を彩る先駆けに過ぎない。本番はその次、騎馬の突撃だ。



 矢が飛び交う事で、互いの最前面に立つ、盾持ちの兵士たちがどんどんと倒れる。

 彼らは盾のみではなく、長さ3~5mもの、とても長い槍を構えていた。それは騎馬の突撃を防ぐ馬防柵を作るための槍。特に訓練も受けていない兵士が与えられる武器にして防具。

 つまり彼らは、どのように表現しても人間でできた盾でしかない。

 その盾が放たれた矢により軍勢から剥がれ落ちていく。


 盾がなくなれば、騎馬による一撃だ。

 この一撃こそが、軍を烏合の衆へと変える最強の一手。

 戦場において騎兵が最強とうたわれる所以である。


 先に動いたのはサーベリオン軍。前列に隙間ができ、その隙間を縫うように騎馬が現れた。

 それに呼応するように、ダーレンの騎士も前に出る。



「突撃ぃぃーーっ!!」


 響く銅鑼の音色、部隊長たちの号令。

 そして駆け出す、馬の蹄が大地を駆る轟音。

 音は大気を震わせ、そこにいる者たちの耳を苛むが、気にする者など一人としていない。


 この一撃で、勝敗の大半が決するからだ。

 言い換えると、自分が生きるか死ぬかは、この瞬間に決まるのである。


 騎馬に乗る者乗らぬ者。

 手にした馬上槍に。

 手にした長柄の槍に。

 引き絞る弓の弦に。

 敵の姿が見えなければ固唾を飲んで。


 その瞬間を待つ。



 ダーレンの騎士も、確かに突撃はしたのだ。

 しかし彼らは大半が途中ですれ違う騎馬に馬から叩き落され、人馬いずれかが矢傷を負い、あとのほとんどは槍の餌食となった。

 運良く敵陣までたどり着けた者も、袋叩きにあってその命を奪われた。


 対するサーベリオンの騎士はそのほとんどが無事であった。

 人馬ともに鎧をまとい、矢を跳ね返した。

 陣にて構えられる槍はすでに隙間だらけ、無き物のごとく駆け抜ける。

 そして駆け抜ける馬に、多くの兵がはねられ死んでいく。


 たとえその場で死なないまでも、戦闘不能であるのは確かだろう。

 これで戦況は一気にサーベリオン軍に傾いた。



 サーベリオン軍の使う軍馬の体重は、400㎏前後である。

 これは世界を見渡せばやや小型の馬であるが、王国では最も普及している品種の馬だ。小回りが利き、体力もある。

 そして、たとえ馬にしては小型だろうと、鎧をまとった騎士と共に駆ける事ができるし、人間の数倍ある体重での突進力は脅威の一言。とても耐えられるものではない。

 さらに、この世界特有の魔力などを消費して使うスキルも存在し、物理法則を超えた破壊力を生み出す。


 この世界では、魔法による攻撃を除けばだが、騎士の一撃こそ最強なのだ。





 そんな戦場の趨勢(すうせい)からは離れた場所で。

 イルムは自分の戦場で、とても忙しそうにしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ