部隊員
イルムが軍に入隊したことで、後方支援部隊が新規で設立される事となった。
新規設立という事で、軍に入ってからもしばらくの間、正式な仕事は回ってこない。
よって入隊後からの3ヶ月間、イルムは軍についての簡単な座学を学び、騎士団長らと顔合わせをしていた。
騎士団長らとの顔合わせは酒盛りとも言い換えることができる有様であったが、こういった軍隊関係者の交流はアルコールが付きものであり、歓迎しているというのを分かりやすくするためでもある。
お酒は高いのだ。
そのお高い酒を暴飲することはどうかと思われるが、これは礼儀などと同じく、儀礼的な行動でもある。
しょうがないからとイルムは酒盛りにちゃんと付き合い、飲み比べで団長2名を撃破するも3人目には敵わず轟沈した。
さすがに、1対5では勝てなかったようだ。
「――行動は騎士1名と従騎士2名の3名が基本単位、10単位で班となり、50班に騎士隊を作ります。
支援隊は10名を1つの基本単位とします。これは基本単位であり、班なのです。我々はこれを単に部隊と呼びます。30部隊で一つの支援隊となり、騎士隊一つに配属されます。
ですので騎士団を構成するのは騎士500名、従騎士1000名、支援隊300名となるわけです。
もっとも、騎士団だけで行動しているわけではなく、これに一般から徴用された兵団が加わることになりますが。
騎士団の主な任務は、他領との境界線を守る事、領内の治安維持ですね。
サーベリオン公爵領では5つの騎士団を常備しており、3つの騎士団が公都に常駐し治安を維持、残る2つが他の公爵領との間を守る壁となっています。
先の戦いで騎士団一つが半壊しましたが、それもすでに立て直しが始まっていて、十分とは言えませんが、治安維持を任せ機能するところまで回復しています」
イルムに講義を行うのはシャリーだ。
彼女との懇親も含めての講義であり、これは嫁二人も参加している。
現状、イルムの嫁であるルーナとネリーはシャリーの事を警戒していない。
彼女の愛が死んだ恋人に向けられている事は明白であり、そんな彼女にイルムが手を出すはずが無いと信じているからだ。
イルムは好意で向かってくる相手ならともかく、そうでないなら相手に自分から近づくという事をまずしない。嫁に義理立てをちゃんとするのだ。
「イルム様には支援隊の中で部隊一つを取りまとめていただくところから始めますね。
部隊員は1月後に顔合わせとなります」
講義も半ばに差し掛かったところで、シャリーは部隊員が集まりそうだと報告をした。
今はイルム、ルーナ、ネリー、シャリーの4人が確定である。もうすぐ残り6人が決まるわけだ。
どんな選別をしているかイルムは知らないが、やるからには生き残るために手を抜く事など考えていない。ちゃんと仲間を鍛え上げ、生存率を高めるつもりでいた。
だが、その報告をしたシャリーの顔はあまり良くない。何か不安を感じているようである。
「シャリー。何か問題でもあるのか?」
「ええ、肝心の部隊員なのですが。もしかすると、全員女性が回ってくるかもしれません」
「隊の性別を統一するのは自然な話だし、不思議な話ではないと思うが?」
シャリーは仲間が全員女性であることを不安に思ったようだが、イルムは彼女が何を不安に感じているのかすぐに気が付かなかった。
「ルーナさんとネリーさんの事を考え、女性で固めること自体は不思議ではありません。
ですが、その……全員、私と同じ婚約者を失った方たちのようなのです」
「は?」
「先の戦で、多くの騎士が失われました。
言い換えますと、婚約者を持つ男性が、戦場に散ったわけです。婚約者を失った女が多くいるのは仕方がありません。
ですが、私たちの部隊だけでなく、他の部隊も女性で固めようとしているような話が聞こえています」
なんとなく、イルムは「ハニートラップ」という言葉を思い出した。
ルーナとネリーは表情を硬くし、シャリーと同じような不安に駆られる。
その予測は、当たっていた。




