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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
3章 英雄の台頭(王国歴145~148年)
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幕間:騎士団長たち

 イルムが後方支援部隊の隊長職を受けたという報告を聞き、騎士団の団長たちが集まり、会合の場を開いた。



「上手くいくかどうかは賭けであったが。成功したのは何よりだな」

「ああ、全くだ。ああいう手合いは扱いが難しいが、一度味方に付けてしまえば、こちらが誠意を見せる限り、まず大丈夫だ。ああ、上手くいって良かった」

「では、隊員候補は予定通り声をかけて良いのですかな?」

「うむ。彼女たちにはちゃんと話を通しておくように」


 今の騎士団長たちは実務能力が無いわけではないが、戦闘能力とカリスマを買われて団長になった者たちである。全員が屈強な体つきをした30代半ばの騎士たちである。引退目前の名誉職、家柄だけの名ばかり騎士、そういったものは一人としていない。

 そんな彼らが、イルムという外部の人間が大人しくしたがったという、ただそれだけの事に一喜一憂していた。


 その理由は簡単だ。


「これでようやく、魔法部隊の夢が叶うかもしれん」

「ああ。回復魔法の方も忘れてもらっては困るぞ。治癒術士部隊ができれば、兵の損耗がどれだけ減らせることか」

「あの年齢で魔法関連の育成ができるとはなぁ。あと何年、何人の術士を育ててくれるか。夢が広がるの」

「内容次第では、ワシらも魔法が使えるようになるかもしれん」

「おお、それは素晴らしい!」


 彼らは、イルムの魔法使い育成能力が目的だったのだ。


 ジャンの報告の中には嫁二人、ルーナとネリーの事も書かれていた。

 そして二人が優秀な魔法使いであり、イルムから魔法を教わったというエピソードまで聞き出していた。彼らはだからこそ、ジャック卿とは違うイルムの活用方法を選択した。


 魔法使いは貴重であり、軍ではほとんど見かけない。

 ゲームはゲーム、現実にいる魔法使いは軍に所属しないのだ。彼らは貴族の御付きになることがほとんどであり、戦場には出ない。

 軍関係者にとって、魔法使いの確保は何より大事であり、悲願と言ってもいい。


 なお、報告者であるジャンもまた、イルムの教えを受けて簡単な魔法を使えるようになっている。

 そして貴族の子弟であるジャンは過去に魔法使いの指導を受けているが、その時の効果は全く出ていなかった。

 ジャンはこれまで魔法は全く使えなかったのだ。それが半年に満たない短い時間で見習い魔法使い程度になったのだから、その驚きはどれほどのものか。



「卿もなぁ。あの男一人だけで何ができるのかと、それを分かっていなかった。個人で出来る事などたかが知れておる。人は育ててナンボだろうに」

「うむうむ。確かに優秀な傭兵は使い勝手がいいだろうが、団が一つあったとしてもできる事は小さい。人も増やさんみたいだしの。ならば軍で魔法使いを育成する、教導隊に組み込む方がよほど有益である」

「まずは戦場で活動したという実績を積ませ、しかるべきのち、後進の育英に当たらせる。それでどの騎士団にも魔法使いが配属され、新規で魔法使いを主軸とした部隊を編成する。それが出来れば我ら騎士団は無敵無敗となろう」


 彼らは亡くなったジャック卿を尊敬していた。

 だが、尊敬していようと、その方針や考え全てに納得する訳でもない。

 イルムの存在を知り、その能力をより有効に活用するにはどうすればいいのかを考え、ジャック卿とは異なる結論を出していた。

 魔法使いを増やす計画を立てたのである。



 ただの傭兵をいきなり優秀な魔法使いだと紹介しても、軍内部での実績が無ければ言葉がどうしても軽くなる。

 なので、とにかく軍に所属させ、実績を作り、それから人の育成をさせようと考えた。


 問題はどうやって軍に所属させるかという話だが、そこは女を使うのが常道だろうと、利害関係が一致する若くて美しい女を探し出し、手配した。

 いくつかの面で優秀な彼らの仕事は、とにかく早い。



「そういえば、報酬は家とその維持費用程度でよかったと聞いたが?」

「うむ。無欲なものだ。もう一桁ぐらいかかると思ったが」

「給与は支払うとはいえ、安い報酬で無理を通したのだ。あまり無理をさせんようにしないとな」

「何か、別の報酬も考えた方が良いか?」


 ただし、仕事の早さと正確さは別であり。

 彼らの気遣い(・・・)はイルムの思いを無視して暴走するのであった。

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