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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
2章 傭兵団の始まり(王国歴142~145年)
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シナリオ完全崩壊

 ダーレン伯爵の懲罰には、ジャック卿が第一騎士団を率いて向かった。

 さすがに伯爵領ともなれば簡単に攻め落とす事が出来ず、ミルグランデ公爵側の援軍もあり、戦闘は長期戦の様相を呈していた。


 それでもじわじわと軍を進め、ジャック卿率いるサーベリオン公爵軍はダーレンに王手をかける。

 これが最後の決戦と、伯爵もダーレン手前の平原で公爵軍を迎え撃つ。


 そうして総力戦となったのである。



 ここまでは、イルムの知る歴史(ゲーム情報)と同じ流れであった。





「ジャック卿、戦死に御座います!!

 軍は壊走、御味方は討ち死に多数! 騎士だけで半数は討たれた模様!!」


 凶報が届いたのは、イルムたちが公都に来てから半年経ってからの事であった。


 ダーレンにいる騎士では相手にならず、ミルグランデ公爵もさすがに裏切ったばかりの伯爵相手のために自身の最強を派遣する事はしていなかった。

 よって、騎士個人の戦闘能力を見た場合、ジャック卿は間違いなく戦場で最強、負けるなどありえない人であった。


「御味方の放った矢が敵の魔法と干渉、逸れてジャック卿の首を射抜いたのです。

 ちょうど、敵の大将と一騎打ちをしていた時の事でした」


 だが、戦場は非情である。

 何が起こるか分からず、強者であってもほんの少しの「何か」で容易く死ぬ。

 今回は、それがジャック卿の身に起きたというだけであった。


 そうして大将が討たれた軍に動揺が走り、戦争に負けてしまったという訳だ。



「そんな馬鹿な!?」


 この話に一番驚いたのはイルムである。

 公爵や卿の息子たちよりも、イルムが驚かされた。


 ゲームではそのままダーレンをサーベリオン侯爵側が開放する流れであった。

 ダーレン伯爵が死に、ボロボロになったダーレン(最前線)へとイルムたちが戻るはずである。


 ここでジャック卿が死ぬというのは想定外にもほどがあり、イルムの覚えているシナリオでは最後まで生き残る予定の人だった。

 シナリオでジャック卿には何度も助けられているため、彼がいなくなったことでどれほど影響が出るかは、イルムでは全く先が読めない。父である騎士バルバス不在もあって予定していた助力は半分程度に減るかもしれないと考えてはいたが、ここでまさかゼロになるとは思っていなかった。



 イルムには分からなかったが、これはバルバス不在の影響である。

 お助けキャラであるバルバスは傭兵団にいると戦闘バランスを崩してしまうため、よくシナリオの都合で他の場所に行くことが多かった。

 今回もバルバスが生きていた場合は彼が一騎打ちをしており、流れ矢で死ぬという事も無かった。

 イルムの記憶には、その流れが頭に残っていなかった為、事前に防ぐという事が出来なかったのである。





 ジャック卿の死は、サーベリオン公爵側に大きな影を落とす。


 ダーレンはミルグランデ公爵に押さえられ、奪い返すことが困難になった。

 同規模の軍を向けたとしても、サーベリオン公爵軍には最強の騎士がもういない。士気が大きく違うし、練度も落ちる。

 弔い合戦と言えばいいのかもしれないが、その場合は味方を死兵にしかねない。これ以上の損害を出したくない公爵にとって、それは難しい話である。

 だったら大軍を向かわせようにも、アブーハ公爵も警戒せねばならず、大軍を動かす事もできない。


 失った第一騎士団の再編と人員補充も必須であるし、すぐに軍を差し向けるというのは現実的な話ではない。



 何よりも大きな問題は、騎士団長の後釜だ。


 順当にいけば副団長であった男が繰り上がって騎士団長になればいいように思われるが、事はそこまで単純ではない。

 現副団長は誰かの補佐をして最大のパフォーマンスを発揮するタイプの人間で、団長向きの人材ではなかった。

 だからと言ってジャック卿の息子を騎士団長に立てようにも、長男はまだ20代半ばと歳若く、経験が浅い。団長職を任せるには剣の腕も経験も足りていない。

 まともな候補がいなかった。





 ゲームシナリオに近い行動をして未来の状況を記憶に沿ったものに調整する、というのがイルムの考えであった。

 多少の誤差が生じているが、今ならまだある程度調整できると思っていた。

 だが、イルムの基本方針は完全に崩壊した。


 この先の情報が全く見通せず、イルムは人知れず絶望するのだった。

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