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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
2章 傭兵団の始まり(王国歴142~145年)
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イベント開始

 イルムがダーレンに滞在しておおよそ1年が経った。

 期待できそうな新人は未だ来ず、三人は三人のままで仕事をしていた。


 月に1回2回と盗賊退治をしているおかげで、生活には余裕がある。

 1回仕事をすればお金に困らず、2回も出かければちょっとした贅沢が許される。

 ただ、ゲームのように『盗む』というスキルで無限に金稼ぎが出来るわけではないし、自分のレベルに合わせて敵が強くなりその分収入が増えるという都合のいい話もない。

 三人の収入は一般人から見ればかなり裕福だが、貴族や豪商といった連中から見れば小銭稼ぎというレベルであった。



「うん。化粧も上手くなったね。鏡を作った甲斐があったよ」

「鉄って、ここまで綺麗になるんですね」

「けど、表面に何か透明な物が塗ってありますよね。これは何ですか?」

「透明ガラスだね。砂を高温で溶かして作ったんだけど。運良く透明になってくれて助かったよ」


 イルムは、魔法と前世知識の一部を使ってちょっとした小銭稼ぎをしている。

 それは主にガラス製品の販売で、盗賊退治の時に手に入れた品だと言い張ってグラスなどを市場に流している。人気はやはり鏡で、良く磨いた鉄にガラスを張ったものは高く売れる。

 もちろん何度も使えるネタではないが、それでも三人にとって無視できない収入源になっている。


 また、そうやって収入を確保したことで、化粧品や仕立ての良い服を揃え出した。

 化粧をしていい服を着るなど、身だしなみを整えることで周囲の視線を集めつつ外見による評価をワンランク上げ、より良い仕事を確保している。

 人間は外見で他人の評価が大きく変わるのだ。


 それに、嫁二人が化粧をすることで美しくなるのは夫としても鼻が高い。

 夜の生活も捗るし、良いことが多い。



「でも、ナンパがウザいです」

「嫌らしい視線がウザいです。自意識過剰じゃありませんよ」

「じゃあ、化粧するのは止めておくか?」

「「それはもっと嫌です」」


 周囲の評価が高くなるのは良い面もあるが、悪い面もある。

 酔っ払いに絡まれることが増え、喧嘩をするようになるなど、もめ事も少し増えた。



 ただ、今のところはよくあると言われる「綺麗な娘が貴族のバカボンに見初められて連れて行かれる」というイベントは発生していない。

 これは嫁二人が残念だからというわけではなく、単純に貴族はあまり平民の居る場所に現れないからだ。彼らは貴族の集まる区画にいることがほとんどだし、街の大通りなどを通るにしても、わざわざ足を止めて平民の娘に手を出す手間を惜しむのだ。

 移動中というのは、目的があって移動しているわけであり、暇つぶしで歩き回っている者は相当珍しい。

 戦時中なので、普通の貴族は忙しいのだ。





 イルムがダーレンで長く活動しているのは、ゲームシナリオを少しでも踏襲し、予期できるイベントを起こすためである。

 また、その時に備え、少しでも立場を固めてイベントを有利に進めようという心積もりでもあった。


 そこらにいる見知らぬ誰かを心から信用するのは難しいが、ゲームの登場キャラであれば多少は性格の傾向などを掴んでいるし、イルムの側は多少だが信用できる。相手の心情は分からないが。



 そうして来るべき時を待っていると。


「おい、こっちだ!」

「追い込め!」

「仲間を呼べ! 囲むぞ!」


 追われる騎士風の男と、追いかけるゴロツキ達を見付ける。

 いかにも分かりやすい、仲間の参入イベントが始まった。



 ――今度はタイミングがずれて強制スルーされるという事がなかったようである。

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