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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
1章 英雄の翼が折られる時(王国歴139~142年)
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プロローグ

 ヴァルナス王国は人口1000万人ぐらいの、この世界ではそこそこ大きな島国である。

 本領であるヴァルナス島は四角と楕円の中間のような形をしており、平地あり、森あり、山ありと、自然豊かで人間が過ごしやすい土地でもある。南の方には独自色が強く民族意識の強い者たちが住む小さい島々があり、これらをまとめてヴァルナス王国を形成している。


 年を通してやや雨が多く川の氾濫なども少なくは無いが、水資源が豊富なため、稲作なども行われている。

 四季があり、長雨や日照りで冬こそ食糧が足りなくなる事があるが、基本的に食糧は豊富で飢える事は少ない。

 もっとも、農耕技術に未成熟な部分があるので生産性はあまり高くなく、国民の7割が食糧生産に関わる農民で無ければ国は成り立たない。


 なお地震もそこそこの頻度であるため、石造りの家などは滅多に無く、木造建築が主流である。耐震という面では木造建築の方が強いのだ。

 山林から採れる木材で財をなす者も少なくは無く、森と共に生きるための知識、干ばつや伐採後の植樹などは意識して行われている。はげ山を作ると土砂災害が起こるなどの経験は、ちゃんと受け継がれ残っているのだ。





 船で1日ほど北に向かえば大陸があるのだが、そこには王国よりも遙かに大きな帝国があり、時折その魔手を王国に伸ばしてくる。

 海に阻まれ本格的な侵攻をされる事はあまりないが、100年ぐらいに一度、王朝変遷のゴタゴタが起きる前後で攻めてくる事がある。王国歴で134年から3年にわたり大規模侵攻があり、王国は大きな被害を出している。

 これまでは造船・操船技術の未熟さもあり王国側が勝利しているが、今後もそれが続くとは限らない。


 一番の問題は、帝国が蓋をする形になっているために、帝国以外の他国と直接接触できない事であろうか。

 国外交易という面では帝国とやりとりするしか無いのが王国の経済事情だ。


 当たり前だが、王国よりも帝国の方が技術的に進んでおり、帝国に従属し属国となる道を選ぼうとする者も居るには居る。

 ただ、今のところ「王国は独立勢力でいたい」という者たちの方が多いという状況だ。





 国の宗教は唯一神を定めるような一神教ではなく多神教である。

 主神の太陽神であり雷神でもある天空神。その妻にして大地と海の女神である地母神。その他様々な神が信仰されている。


 この宗教は祖霊と自然への崇拝が元になっているため、教義どころか名も知らない神がたまに混ざるが、それを誰も気にしないという気風を生んでいる。

 土着の神が混ざる事も多く、その土地にはその土地の神が居るという考え方をするのが普通だ。


 逆に帝国は一神教が国教となっているため、これを邪神崇拝と忌避する傾向にある。

 帝国は帝国で唯一神の教えに従わない王国の民を人ではない魔物のように扱っている部分もあるため、そこはどちらもさほど変わらないと言えるだろう。


 もっとも、宗教にあまり熱心でない者達による草の根交流、経済的なやりとりはあるので、完全に国交が断絶しているわけではないのだが。





 国の政治体系は国王を頂点とする貴族政治。

 国王とは貴族の頂点ではあるが、絶対的な権力者ではない。それに宗教勢力は別に存在するため、王族であろうとそちらへの配慮が欠かせない。

 力関係で言えば国王こそ国内最高位である事は間違いないのだが、そこまで無茶のできる絶対者ではない。



 そんな王家が特に気を遣わねばならないのが三大公爵である。

 公爵とは王の外戚にあたる者たちの事で、地方の取り纏めをする小さな国王といった者たちである。

 それぞれ農業・工業・林業に強く、漁業や海運業といったものに強い王族でも無視し得ない影響力を持っている。公爵家は王国建国よりも存在するためより歴史が古く、そして当たり前のように権力闘争をしている厄介な者でもある。


 それ故に王家は公爵同士の間を取り持つものとしての役割が主な仕事となる。

 むしろ、そのために王家は作られたという側面が強い。

 直接血を迎え入れる事が嫌だから、一度王家を通してから縁を繋ぐといった形である。


 こうして並べると王家の立場はずいぶんと軽んじられているように見えるが、それでも公爵家は王家に臣従する立場であり、王家の決定に簡単に逆らえない。

 もし不服があったとしても、正面から反発するのではなく、裏から手を回し相応の労力を使って意を通す事になる。下手を打てば他の二家が出てくる事になるので、最低でもそこへの根回しが必要なのだ。


 そうやって国内は奇妙なバランスの上で成り立っていた(・・)





 全てのバランスが崩れたのは、そう、王国歴136年の王太子達の戦死と続く国王崩御が始まり。

 幼い王太子の息子が王冠を戴き宰相にミルグランデ公爵が就任した事で加速した権力闘争が王国全土を巻き込み、泥沼へと落ちていった事に端を発する。

王国歴

134セントラワー帝国、ヴァルナス王国に大侵攻をかける

136王太子が戦死。

137終戦

国王死去

王太孫、国王戴冠

1391章スタート

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