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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
8章 戦場にて英雄は名を轟かす(王国歴155年)
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幕間:混迷の王国

 イルムたちが戦場で戦っている頃。

 クリフのいた村では、抑え役(クリフ)がいなくなったことで、とうとう不満が爆発した。


「ミルグランデとは手打ちになったんだろ!? なんでまた徴兵なんだよ!!」

「これ以上若いのを持っていかれては、村が成り立たん!」

「いったいいつまで戦おうって言うんだ!? サーベリオンは穏健派じゃなかったのかよ!」


 クリフのおかげで生活水準が多少は向上したものの、それ以上に戦争に人を取られて生活が成り立たなくなっていったのが、その理由だ。

 クリフは確かに頑張ったが、新しい火種を次々と放り込まれては意味がなかった。

 貴族たちに振り回される今に、誰もが耐えられるわけではなかったのだ。


 あのままミルグランデ公爵についていればもっと悲惨であったのだが、それはそれ、これはこれ。

 サーベリオン領どころか王国全体に言える事だが、戦争続きで民衆は大いに疲弊していたのである。





「しかし、どうするんだ?

 ミルグランデには戻れん。サーベリオンを見限るとしても、その後が問題だ。軍を差し向けられて終わりじゃないか?」

「ううむ。そうなんだよなぁ。他に、何か頼れる後ろ盾があればいいんだが」

「ウノを頼るのは……無理だな、会う前に捕まって終わりだ」

「クリフを使えばいいのでは?」

「無理だろ。侯爵の命令で引き離されたって言っていたからな」


 問題は、爆発した不満の向け先である。



 公爵たちに頼ったとしてもいいように使われるだけ。

 自分たちはただ、争いなどと関係ないところで平和に暮らしていたいだけ。

 税は――払いたくないが、我慢できる。

 盗賊は怖い。治安維持に、徴兵も耐えよう。


 だが、戦争などというくだらない(・・・・・)事に人を取られるのは我慢できないのだ。

 彼らにとって、戦争とは貴族の(・・・)我が儘(・・・)にすぎない。

 戦争など本来する必要のない、猿山の猿がボス争いをしているだけのどうでもいい事なのだ。誰がボスでも自分たちの生活は変わらないし、自分たちがボスになる訳でもないから本当に関係ないと思っている。

 戦場が自分たちの村の近くであるならともかく、遠方の戦争に人を取られる事には納得できない。



 とはいえ、普通に戦って勝てない相手であることは明白。

 死んでも意地を通すなどというぬるい考え方をしない村人たちは、現実的な思考から結論を出す。


 とりあえず、周囲も巻き込もう。

 サーベリオンもミルグランデも嫌いな連中というのは、意外とたくさんいる。



 彼らの舞台は、再びダーレンを巻き込みつつ王国を混迷に陥れる。

 さすがにイルムも公爵たちも、この展開は想定していなかった。

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