74.役員候補を選ぶらしい
ともあれこれでGOサインが出てしまったわけで僕は早速両親に連絡した。
いや、相変わらず僕が起きている間は帰って来ないからキッチンのテーブルの上に伝言を置いといたんだけど。
翌朝キッチンに行くと指示が置いてあった。
同じ家に住んでいる家族同士で伝言ゲームって(泣)。
それはともかく親の指示によればまずは新会社の役員を決める必要があるそうだ。
これは株主とは別で会社の経営陣になる。
僕は確定しているけど同級生の中からしかるべき人を選ぶように、と書いてあった。
決まったら時間をとってその人たちの保護者に説明して了解して頂く。
一番いいのは説明会で一挙にやることだけど、駄目なら一人一人に会って説得すると。
そんなことする必要ってあるの?
(矢代大地の両親って物凄く有能だな。
いいか。
矢代大地の同級生たちにいくら前世があろうが端から見たら未成年の高校生だ。
そいつらから金を集めたり得体の知れない事業に引っ張り込もうとしているんだぞ。
普通に考えたら悪質な詐欺にしか見えないだろう)
そうなのか!
確かに高校生がバイトならともかく会社作って経営しますと言っても普通は信じないよね。
僕の両親が他人のご子息やご息女を引っ張り込んで何か怪しい事をさせようとしているとしか思えないかも。
(会社を経営するって事は損害が出た場合の補償責任を負うわけだ。
未成年なら親に賠償責任が回るんだぞ。
俺が親だったら断固拒否だ)
そうだよね。
これは黒岩くんや高巣さんがどうする、というのとは別の問題になるわけか。
僕たちは日本人だ。
いや今世では。
こないだ政治経済だったかの授業で習ったけど今の日本では18歳で成人と見做される。
逆に言えば17歳以下は未成年だから責任がとれないんだよね。
ラノベみたいに誰かと戦って倒すついでに周囲の家やなんかを破壊したら、その損害賠償責任は親にいってしまう。
親は破産だよ。
(そうだ。
だから、少なくとも矢代大地たちが18歳になるまでは自分勝手に動けないことになる。
日本の法律は瑞穂と違うかもしれんが、瑞穂皇国では未成年が何かやらかそうとしたら親にはそれを強制的に止める権利があるはずだぞ)
無聊椰東湖が言うには、例えば黒岩くんが新会社の役員になろうとしても親が止めたら認められないそうだ。
瑞穂皇国では。
多分日本でも一緒だろうな。
だから親父たちは説明会するとか言っているわけで。
大変だな。
(まったくだ。
矢代大地の両親ってちょっと信じられないくらい息子に甘いな。
というよりは発想がぶっ飛んでいると言うべきか)
僕の親だからね。
ならばしょうがない。
僕は登校すると黒岩くんたちに説明した。
「その通りでございます」
さすが黒岩くん。
言われる前から判っていたみたい。
「我が2年1組の臣民は全員、日本の法律上は未成年者でございます。
何をするにしても制限が付きまとうのは必定。
かといって成人を待つほどの余裕はないかと」
そんなに何を急いでいるのか。
まあいいや。
知りたくないし。
「というわけで役員候補を選んで欲しいんだけど。
僕の親がその人たちの保護者と会って説明してくれるって言っている」
「重ね重ね申し訳ございません。
わかりました。
早急に検討させていただきます」
「よろしくね。
あと、親からの伝言だけど無理そうなら役員は決めなくてもいいって。
僕はやることになっているけど他の人が駄目なら一時的に僕の両親が代行してくれるから」
「……そこまでご迷惑をおかけするわけには。
承知致しました。
誠心誠意励ませて頂きます」
何か黒岩くんが途中で変になったみたいだけど、まあいいか。
よく考えたら黒岩くんを筆頭に全員前世ではちゃんと成人して仕事していたどころか、戦争の最中に停戦交渉団に選ばれるくらい有能な人達ばかりなんだよ。
僕みたいなガキが心配する必要なんかないって。
(それには賛成だ。
むしろ矢代大地がいない方が上手くいくんじゃないのか)
五月蠅いよ無聊椰東湖!
放課後、宮砂さんが来て言った。
「黒岩から伝言です。
申し訳ありませんが、役員候補の選任にしばらくかかりそうですのでダイチ殿にはお待ち頂けないかと」
「うん、判った」
これ、待ってろという意味じゃなくて帰れということだよね?
(そうだろうな。
何か王国の連中だけで話し合いがあるんだろう)
だったら僕は僕でやらなきゃならないことがある。
黒岩くんには了解して貰っているんだけど、晶さんたちや武野さんたちにも説明しなければならないんだよ。
黒岩くんから連絡して貰えれば楽だったんだけど、そうすると帝国人や未来人が王国人の下につくみたいになってしまうから駄目だって。
(連中はさすが大人だな)
そうだよね。
下校しながらスマホで集合をかけるとすぐに返事があった。
突然の呼び出しにもめげず、両者とも来てくれるらしい。
暇なのかな?
例のモールのファミレスを指定する。
距離的に言って僕が一番早いのは当然だけど、晶さんと省吾君および武野さんと鞘名さんのコンビも両方ともそんなに遅れずに来てくれた。
「みんな突然呼び出してご免」
「いやいいって。
黒岩から概略は聞いていたからな。
いよいよ決まったんだろう?」
「そのつもりでここしばらくは予定入れてなかったよ」
どうも王国から話が行っていたらしい。
王国がGOサインを出すまで待っていたそうだ。
ウェイトレスさんに全員でドリンクバーを注文してそれぞれ飲み物を取りに行く。
僕はジンジャーエールだ。
まだ暑いから。
「で、どうよ」
晶さんに急かされて僕は用意してきた資料を配った。
王国で配布したのと同じ奴だ。
同じような説明をする。
「会社設立か。
動きが速いな」
晶さんは頭をガシガシ掻いた。
そうやってるとやっぱ小学生男子に見えるんだけど。
「まったくです。
殿……アキラもいい加減に女性らしく行動して頂……しないと」
パターン通り噛む省吾君。
多分、普段の生活ではあいかわらず敬語なんだろうな。
前世からの因縁というか呪いだね。
「ふーん。
まずは役員決めか。
サヤがやりなよ」
「いやよ!
そんな面倒なこと。
コヨリやればいいじゃない」
「うちは親がなあ」
未来人はまとまらないみたいだ。
「よし判った。
とりあえず俺とショーゴは確定な」
帝国人は決断が早かった。
「大丈夫なの?
親の了解得ないと駄目だよ?」
「俺は将軍やってたんだぞ?
予算を出し渋る財務省や勝手な事ばかり押しつけてくる参謀本部との交渉には慣れてる。
親の説得くらい出来なくてどうする」
「そうですね。
殿……アキラの通った後にはペンペン草も生えないとまで言われた強弁スキルは健在です。
問題ないでしょう」
「そんなこと言ってるがダイチ。
ショーゴの方はもっと酷い事言われてたんだぞ?
副官殿が怖くて前線を志願する連中が後を絶たなくて」
「あれは演技ですよ」
漫画みたいだ。
見た目は小学生男子と眼鏡高校生、その実体は帝国軍司令官と参謀。
ほっといていいよね。
未来人の方も話がまとまったみたいだった。
「しようがない。
私がやるよ」
やっぱ武野さんの方か。
「いいの?」
「ぶっちゃけ、そろそろ私らの収入源について親に怪しまれかけているんだよね。
ダイチの親に出て貰って説得して貰う」
他力本願かよ!




