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4.オタサーの姫ではないらしい

 いつの間にうちのクラスが地下アイドルのコンサート会場になった?

 しかも姫様ときた。

 そういえばさっきも「姫がお呼びです」とか言われたような。

 呆然としていると、黒岩くんが僕の方を向いた。

 頷く。

「姫」

「はい」

 高巣さんが片手を上げると、クラスメートたちはガタガタと音を立てて椅子に腰を降ろす。

 凄い統制力だ。

 高巣さんっていつの間にここまで人気が出たんだ?

 オタサーの姫なのか?

「矢代大地さん」

 高巣さんが呼びかけてきた。

「は、はい」

 敬語になってしまった。

 相手も敬語だし。

 同級生(クラスメイト)なのに。

「貴方は矢代大地さんに違いありませんね?」

「そうです」

 無聊椰東湖(オッサン)でもあるけど。

「○×△◆王国をご存じですか?」

 何それ。

「知りません」

「×ングェッ△○ム砦については?」

 凄い発音だ。

 半分くらいよく聞こえない。

「聞いたことありません」

「そうですか」

 高巣さんはため息をついた。

「皆の者、聞きましたか?」

「「「はい! 姫様!」」」

「矢代大地さんは日本人です。

 わたくしは大地さんに指導して頂こうと思います」

「「「姫様のお心のままに!」」」

 何かよく判らないけど嫌な方向に話が進んでいるような。

 僕が日本人だから指導して貰う?

 だって高巣さんたちも日本人でしょう。

 日本語話しているし。

 いやさっきは変な言葉で話していたけど。

「それでは▼ン○コォッ□ト。

 後はお願いします」

「かしこまりました」

 高巣さんが黒岩くんを変な発音で呼ぶ。

 黒岩くんは最敬礼してから僕の方を向いた。

 僕の後ろにいたはずの(イケメン)琴根(マッチョ)はいつの間にか消えていた。

 と思ったら自分の席に戻っている。

 忍者かよ!

「矢代大地殿」

 重低音が響いた。

 黒岩くんって怖い。

「はい」

「驚かれると思いますし、にわかには信じられないでしょうが、これからお話することは真実でございます」

 とりあえずお聞き下さい、と黒岩くんは言って説明してくれた。

 黒岩くんたちの前世は何とかいう王国の人なのだそうだ。

 黒岩くんは日本語で言うと王室顧問官とか相談役みたいな役職で、これは結構偉いらしい。

 高巣さんはその王国の王女だという。

 そしてここが重要なんだけど、どうも2年1組は俺を除く全員が何とか王国国民の前世持ちだというのである。

 ラノベかよ!

 ていうか王女に王室顧問官って。

 厨二病が炸裂している(泣)。

 しかもそれがクラス全員。

 そんなザルな設定だと読者がついてこないよ?

「設定……というわけではありません。

 我々も困惑しているのですが、真実です」

「みんなそうなんですか?」

 僕もつい敬語になってしまった。

「確認しましたところ、矢代大地殿以外の全員が○×△◆語を流暢に話せます。

 本人の自己申告ではありますが職業や身分も確認出来ました」

 何とか王国には身分があるらしい。

 それも現代地球の英国なんかと違って封建制バリバリで、つまり王様や貴族が実際に権力を握っている。

 王女様である高巣さんにみんなが忠誠を誓うわけだ。

「文明進度は地球で言う近世でしょうか。

 一部では動力装置が導入されておりますが、庶民レベルではまだ馬車に人力です。

 それに」

「それに?」

「魔法がございます」

 キターーッ!

 完全に異世界物だよ!

 しかも転生物!

 クラス全員転生とか、もうテンプレにしても苔が生えているレベルだ。

 舞台は現代日本だけど。

 黒岩くんが咳払いした。

「今、魔法と申し上げましたがアニメに出てくるようなものではございません。

 むしろ錬金術に近いものではないかと」

「ええと、黒岩くんも魔法を使えるんですか?」

「使えました」

 使えるんかい!

 つまり魔法使いか。

 王室顧問官で魔法使いとはもはやラノベというよりは逆ハー物語なのでは。

 見た目はむしろ衛兵長なんだけど。

「今私が言ったのは『王国では使えました』という事です。

 今は使えません」

「なぜ?」

「日本……この世界には魔素(マナ)が存在しないからです」

 そうなの。

 さすがにそこまで厨二ではなかったか。

 ていうかこれも手垢がついたテンプレだけど。

 「俺」は思わず口に出した。

「話が逸れているぞ。

 そっちの事情は大体判ったが、何が問題なんだ?」

無聊椰東湖(オレ)会社員(サラリーマン)だ。

 正直異世界とか転生とかは馬鹿馬鹿しい限りだが、矢代大地(ガキ)の記憶で何となくはイメージ出来る。

 俺自身がどうやら矢代大地(ガキ)の前世らしいことも理解した。

 そういうのは後にして、会社員いやむしろ企画課の社員としての無聊椰東湖(オレ)から見て、この黒岩とかいう格闘士(プロレスラー)の言いたいことがよく判らん。

 あの「姫」とやらは最初に「助けてくれ」と言ったはずだ。

 こいつらから見て矢代大地(ガキ)は単なる高給中学……ではなくて高校生でしかない。

 困っているにしても、矢代大地(ガキ)が何の役に立つというのだ)

 僕はガキじゃないぞ無聊椰東湖(オッサン)

 と思っている僕も無聊椰東湖(オッサン)なんだけど。

 でも、確かにもっともだ。

 黒岩くんたちが何かに困っているようには見えないんだけど?

 すると高巣さん()黒岩くん(相談役)は顔を見合わせた。

「その件についてもっと詳しくご説明させて頂きたいのですが」

 そうなの?

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