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2.クラスのみんなもおかしいらしい

 悩んでいるうちに校門に着いたのでそのまま自分の教室に行く。

 アニメの主人公じゃない僕の席は教室の中央辺りだ。

 少子高齢化で子供の数が減っているらしくて、2年1組も生徒数は35人だったと思う。

 だから机の間隔も結構余裕があって、隣の席の奴と内緒話をするのは難しい。

 あまり人付き合いのよくない僕は、休み時間中でも滅多に会話しない。

 ただし、ボッチというわけでもイジメを受けているわけでもない。

 うちの学校はアニメやラノベに出てくるようなカースト制度はほとんどないし、みんなは構って欲しくないという僕の態度を尊重してくれていると思っているんだけど。

 頭が混沌としている今日に限って誰かが話しかけてきた。

「ええと……君は誰だっけ?」

 無言で睨み返す。

 僕はモブのボッチだからしょうがないけど。

 クラスメートの名前も知らんのか。

 もっとも僕もそいつの名前が出てこない。

 サッカー部かバトミントン部だったかくらいしか知らない男子生徒だ。

 いや同じクラスなんだけど、親しくない相手に興味ないし。

 やっぱ関心がない奴の事なんか覚えてないよな、と思いかけて無聊椰東湖(オッサン)になりかけているのに気づく。

 お願いだから引っ込んでいて!

 応えないわけにもいかない。

「矢代だよ。

 矢代大地」

「あー……いやそうじゃなくて」

 そいつは困ったように首を傾げた。

 何がそうじゃないって?

(俺の名は無聊椰東湖だけどな。

 ちなみに東湖が名前だ)

「俺は矢代大地だっての!」

 思わず心の中の無聊椰東湖(オッサン)を怒鳴りつけてしまった。

 その途端、なぜか男子生徒(クラスメイト)は顔色を変えた。

 無言で背中を向けると去る。

 何だよ?

 見ていると数人が固まった場所で話し合っているようだった。

 そういえば今日は教室が騒がしい。

 座っているのは僕だけだ。

 後は全員が数人ごとのグループになって真剣に話しあっているみたいだ。

 何かイベントでもあったっけ?

 グループ学習の発表会とか。

 覚えがない。

 僕だけハブられているってことか?

 いや、うちの学校はそんな露骨なイジメはないと思う。

 アニメで言えば日常系なのだ。

 別に意識が高いとか平等主義なわけじゃない。

 無視(イジメ)とかまでやるほどの気力がないんだよ。

 基本的にみんな争い事を好まないし、積極的に人に関わろうというような雰囲気もない。

 相性が良い仲間同士で固まっているだけだ。

 良くも悪くも現代の高校生だから。

 超進学校(エリート)でもオチコボレでもなく、あまり金持ちも貧乏人もいない。

 生徒会長はひょうきん系だったと思う。

 そんなぬるま湯気質の学校だ。

 だったら何で?

 何気ないふりをして周囲を伺っていると、あちこちで固まっていたグループが次第に集結していくのが判った。

 なぜか見られている。

 僕を指さしてひそひそと囁かれている。

 嫌な雰囲気だ。

 (俺の事を気づかれたのか?)

 いや無聊椰東湖(オッサン)の存在が知れるわけがない。

 だったら何で?

 くそっ、まだ授業始まらないのか。

 何もかも嫌になって頭を抱えていたら、不意に声がかかった。

「矢代……さん?」

 いつの間にか俺の机を取り囲むように立っている数人。

 もちろん全員クラスメートだけど、名前を知っているのは半分くらい。

 僕に話しかけてきたのは幸いフルネームを覚えている女子だった。

 背が低くて素朴で癒やし系の高巣洋子さん。

 よく見たら結構可愛いんだけど地味だ。

 手芸部員だったっけ?

 意外だった。

 高巣さんは引っ込み思案で、何かやるにしても先頭に立ったりはしないはずなのに。

「何か?

 高巣さん」

 すると高巣さんは何か必死な表情になった。

「矢代さんですのね?

 矢代大地さん!」

「いやそうだけど」

 無聊椰東湖(オッサン)じゃないぞ僕は。

 ここは日本で僕は高校二年の平凡な男子なんだから。

 間違っても瑞穂皇国のサラリーマンじゃない!

 気を強く持たなくては。

「あの、お願いがあるんです!」

 そんな僕に構わず高巣さんは両手の平を合わせて拝むように言った。

「わたくし達を助けて下さいませんか?」

 はい?

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