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僕のクラスは厨二病 ~厨二病でもまともに青春したい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第七章 宇宙人?

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161.結果が出たらしい

 試験が終わると気の抜けた毎日が戻って来た。

 3年生なんかもう全然出てこない。

 試験自体をパスした人もいたらしい。

 そんなんで卒業大丈夫なのかと思ったら、試験日が大学の入学試験に被さるとか試験の翌日が遠方の大学の入試で受けられないとかで、レポートで済ませてもいいそうだ。

 そもそも高校3年の後期試験で赤点とっても追試じゃなくてレポート提出で済んでしまうからね。

 もう大学に受かっていて卒業出来なかったら浪人してしまう状態の生徒を落第させるほど学校側も鬼じゃない。

 赤点スレスレでも合格すれば単位は貰える。

 レポートの場合は「可」しかくれないそうだけど、もう内申書は大学に渡っていて高校3年後期試験の成績なんか誰も気にしないから。

 そういうわけで校内は何となく閑散としている。

 試験結果発表までの間は授業と言っても大半は自習だったから、僕たちは生徒会室で雑談したりしていた。

 一応、生徒会役員として働いている所を学校側に見せないとね。

 そんなある日、珍しい人が訪ねてきた。

「矢代くん、いる?」

「先輩!

 どうぞどうぞ」

 何とひょうきん系元生徒会長だった。

 早速席を勧めて珈琲でもてなす。

 高巣さん(王女様)が自ら煎れてくれた。

 いや、今日は神籬さんも比和(メイド)さんもいないんだよ。

 宮砂さんすらいない。

 つまり生徒会室にいるのは僕と高巣さんだけだ。

 まあ、ドアの前には(マッチョ)琴根(イケメン)が立っているけど(泣)。

 案の定、ひょうきん系元会長は声を潜めて聞いてきた。

「ドアの前に立っている人たち、誰?」

「何と言うかボランティアです」

 それしか言い様がない。

 まさか高巣さん(王女様)の護衛兵だと明かすわけにもいかないし。

「そうなのか。

 まあいいけど」

 幸いにしてひょうきん系は察してくれたようだった。

 そうそう。

 厨二病に下手に関わらない方がいいですよ。

 (うつ)りますよ。

「ところで何か御用で?」

「いや。

 ちょっと学務課に書類を届けに来たんだけど矢代くんがどうしてるかと思ってね」

 ひょうきん系元会長は結構いい大学に合格が決まっていた。

 返済不要奨学金付きで。

 如月高校生徒会長を粛々と務めた事による学校からの恩賞(ごほうび)といったところだ。

 いいなあ。

「矢代くんも上手くやってるじゃないか。

 体育祭は近来稀に見るほど混乱が少なかったし。

 先生の評判も上々だよ」

「それはどうも」

 生徒会顧問の先生と親しいんだよねこの人。

 それで思い出した。

 名前はモブ、じゃなくて面部野(もぶや)さんだったっけ。

 モブどころか中ボス臭かったけど。

 ちょっと気になったので聞いてみた。

「先輩は今何してるんですか」

「僕?

 サボッてるのかな。

 引っ越しするアパートも決まったし、持っていくものをボチボチ整理しているところだね」

「そういえば先輩の大学って東京でしたっけ。

 一人暮らしで?」

「うん。

 親は渋ったんだけど僕が奨学金で家賃の差額分を払うと言ってちょっといい部屋に決めた」

 なるほど。

 噂によれば地方から東京に進学すると生活費が大変らしいけど、その大半が住む所の費用らしいからね。

「僕は割合早く合格が決まったから。

 大学に書類を提出するついでにアパートを決めてきた。

 知ってる?

 アパートは先着順なんだよ。

 早い方が有利だ」

 ニヤリと笑うひょうきん系元会長。

 何という策士。

 セコいけど、それでも世渡り上手だよね。

 矢代興業に欲しいくらいだったりして。

「4月からは花の大学生ですか。

 いいなあ」

「どうかな。

 今は好景気だけど4年後もそうだとは限らないし。

 大学生になったら遊んで暮らすというのはもう駄目みたいだ」

 2年生の終わりにはもう就職活動しなきゃならないらしいよ、と元会長(面部野さん)

 大変ですね。

 面部野さんはそれからしばらく雑談してから帰って行った。

「元会長はもう、悲観してらしたみたいですね」

 ずっと黙っていた高巣さんが言った。

 ちょっと人見知りな所もあるなあ。

 まあ、面部野さんとはほとんど面識がないか。

 僕と違って生徒会の事で色々と打ち合わせしたこともなかったし。

「どうかな。

 あの人、結構腹黒だから。

 多分就職も上手くやると思う」

「でも就活って大変なのでは」

「高巣さんはもう就職してるじゃない。

 将来安泰だよ?」

 そう言うと高巣さん(王女様)は一瞬唖然とした。

「そういえばそうですね。

 わたくしは矢代興業の役員でした」

 忘れていたのか(笑)。

 まあ、何もしてないけどね。

「実は僕もそう。

 だから就職の心配はなし」

(社長の放漫経営のせいで矢代興業が潰れなければの話だがな)

 無聊椰東湖(オッサン)が嫌な事を教えてくれた。

 そうなんだよね。

 矢代興業が上手くいく保証なんかないんだ。

 潰れて借金だけが残ったりして。

 僕は高卒か大学中退で働くことになるかもしれない。

 だから黒岩くんたちには是非とも頑張って貰いたい(他力本願)。

 でも高巣さんは目に見えて明るくなった。

 就職が決まった? のがよほど嬉しかったのか。

 もともと2年1組(王国)王女様(トップ)なんだから気にすることないのに。

 臣下の人たちが税金とか上納金とか払ってくれるはずだ。

「わたくしはそのような寄生虫じみた生活はごめんです。

 役に立ってみせます」

 何かスイッチが入った高巣さん(王女様)は試験が終わったばかりだというのに問題集を開いて勉強を始めてしまった。

 まあ無駄にはならないと思うけど。

 そんなこんなで数日が過ぎ、ある日ホームルームの時間に担任から試験結果が渡された。

 恐る恐る通知表? を開いてみる。

 学年44位。

 良かった。

 ちょっと上がっている。

 まだ目標である学年30番台には届かないけど、この調子なら何とかなりそう。

「ダイチ殿。

 どうでした?」

 先生が出て行った後、高巣さん(王女様)がわざわざ僕の席まで聞きに来た。

 通知書を見せると落ち込まれた。

「何番だったの?」

「58位でした……」

 別に悪くないじゃん。

 少なくとも黒岩くんが定めた百位以内には入っているし。

「でもこれではご一緒出来ないかもしれません」

「大丈夫なんじゃない?」

 適当に相手していたら、何となく教室の空気が澱んできているのに気がついた。

 高巣さんも異様な気配を感じたみたいで身構える。

 その原因はすぐに判った。

 教壇の前に仁王立ちする黒岩くん。

 その両側には神籬さんと宮砂さんが控えている。

 そして土下座せんばかりに並んで頭を下げている屈強な男たちと俊敏そうな女生徒たち。

 護衛兵の集団か。

「あの方たち、駄目だったのでしょうか」

「みたいだね」

 大変だな。

 でも僕には何も出来ないしね。

 ここは目立たないように退散した方がいいか。

 高巣さんと以心伝心で頷き合った途端だった。

「ダイチ様!

 私も何とか60番台まで辿り着きましたよ!

 もっと頑張ります!」

 底抜けに明るい比和(メイド)さんの声が響いた。

 TPOを弁えてよ!(泣)

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