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僕のクラスは厨二病 ~厨二病でもまともに青春したい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 王国人?

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12.コスプレメイドでは駄目らしい

 高巣さんが何か合図したらしくて、誰かが近寄ってきた。

 何と。

 我が2年1組が誇る? ナンバーワンギャルではないか。

 比和春美さん。

 すらっとしていて背が高く、それでいて巨乳の美人さんだ。

 成績も運動も平均だけど、美人という以外に際だった特徴がある。

 今時珍しく金髪で碧い目なんだよ。

 ラノベに出てくるギャルそのものだ。

 でも名前で判る通り、別に外国人というわけではない。

 髪は染めているだけだし碧眼はカラコンだという話だった。

 ある意味、この騒ぎが始まる前から厨二病? を発症していた人だ。

(凄いな。

 矢代大地(ガキ)のクラスメートとは思えん。

 何ていうかコスプレ?)

 無聊椰東湖(オッサン)は黙っていて!

 階層(カースト)が全然違うので、僕は話すどころかほとんど接触した事もないんだけどね。

 それでも名前くらいは知っているクラスの、いやむしろ学校の有名人だ。

 如月高校(うちの学校)は校則も緩やかだし先生も生徒が犯罪を犯しでもしない限り放任なので問題になってないけど、普通の高校なら生徒指導室の常連かもしれない。

 そんなギャルがどうして?

 僕の疑惑をよそに比和さんはまず高巣さん(王女様)に一礼した。

 いや頭を下げるんじゃなくて、逆ハーものや悪役令嬢物語によく出てくるアレだ。

 (カーテシー)って奴?

 現実に誰かがやっているのを初めて見た。

 ていうか丸顔で癒やし系の高巣さんに対してどうみてもギャルの人が礼をとるって、物凄い違和感なんですが。

「ヌレンィ……比和、お止めなさい。

 ここは日本ですよ」

「失礼致しました。

 我が君(ユア・ハイネス)

 比和さんが慌てて身体を起こすともう一度頭を下げた。

 我が君(ユア・ハイネス)って。

 非日常感が酷い。

 確かに臣下がお姫様をそう呼ぶのは知っているけど。

 これも本当に誰かが話すのは初めて聞いたぞ。

「お掛けなさい」

「はい」

 高巣さんもちょっと高校生らしくないというか、やっぱ現代を舞台にした悪役令嬢物(ラノベ)のキャラのようだ。

 その背後に近衛兵よろしく立つ(イケメン)琴根(マッチョ)

 しおらしく控える長身で金髪碧眼の美少女。

 どうみても厨二病を発症したコスプレ研究会の部室の風景だ。

 僕だけまともで。

 前世はサラリーマンだけど(泣)。

「比和。

 矢代大地殿にご相談したいことがあるのでは?」

 高巣さんが水を向けるとクラス一の美少女ギャルが話し始めた。

「私は前世、メイドでございました。

 人種はヒトです」

 ああ、この時点で厨二病が炸裂しているぞ。

 普通だったら席を立つか、あるいは病院に電話しているレベルだ。

 僕だって無聊椰東湖(オッサン)さえいなければ。

(残念だったな(笑))

 五月蠅いよ!

「メイドさんだったんですか」

 外見はとてもメイドじゃないけどね。

 むしろ高飛車なお嬢様というイメージだ。

 貴族令嬢じゃなくて成り上がりの金持ちの。

「この外見は、その、今になって気がついたのですが前世を模したものでございます。

 無意識に影響を受けていたようで」

「比和の前世はわたくし付きのメイドでございました」

 高巣さんが付け加えた。

「侍女とか?」

「そうではなくてメイドでございます。

 侍女になるには身分が不足しておりました」

 やっぱそういうの、あるんだ。

 ていうかこんなことを平然と話している自分が信じられない。

 やっぱり厨二病だよね?

 みんなで僕を騙しているんじゃないよね?

「思えば比和の前世は確かに金髪碧眼でございました。

 顔形は違いますが、それ以外の外見は前世に近いと思います」

「私も……『比和春美』の記憶では、どうしてコスプレのようなことをしなければならないのか自分でもよく判っていなかったみたいで。

 ただ、この姿になると精神(こころ)が落ち着くことは確かです」

 ギャル、じゃなくて比和さんがたどたどしく言う。

 態度と外見が全然合ってないぞ。

 問題はそこですか?

「違います。

 私はメイドでございます。

 メイドとしての矜持がございます。

 ですが、今のままではどうにもなりません」

 比和さんが言うには前世を思い出す前からどうにも居心地が悪かったそうだ。

 比和さんの家は普通のサラリーマン家庭で、しかも僕と同じで両親ともに忙しいので放任主義だという。

 比和さんが髪を金髪に染めようがカラコンしようが面白がるばかりで止めようともしないとか。

「いい家、というか家族なのでは」

「それは感謝しております。

 ですが私のメイドとしての技能を発揮出来ないのです」

 前世が蘇る前から比和さんにはメイドの仕事をしたいという衝動があった。

 だけど住んでいるのはマンションなので、比和さんがメイドとしてお掃除などをしようとしてもすぐに済んでしまうそうだ。

 しかも3つ上の大学生のお姉さんがいて、この人が妹に甘くて率先して家事をやってしまう。

 両親も同じ考えで、高校のうちはたっぷり遊べ、という方針らしい。

 ラノベみたいな話だ。

 普通は勉強しろとか女の子なら門限があるとか締め付けが厳しそうなのに。

「恵まれているんだから好きにしたら」

 ちょっと油断した隙に無聊椰東湖(オッサン)が出てきて投げやりに言った。

 いや、僕も聞いている内に面倒くさくなったけど。

 だって何が問題なのか判らないよね。

 せっかく美人でギャル風なんだから好きに遊べばいいのに。

「一昨日まではそうでした。

 何が原因なのか判らず、適当に遊び回っていたのですが、前世を思い出したことで気づいてしまいました。

 私はメイドのお仕事がしたいのです!」

「秋葉原とか行けば?」

 最近は衰退しているらしいけど、まだメイドが路上でビラ配っているからいくらでもバイトできそうだ。

 比和さんくらいキャラが立っていて美人ならすぐに雇って貰えると思うけど。

「実は前世を思い出す前に行きました」

「そうなんだ」

「メイドという存在に何か心引かれるものがありましたので。

 ですが駄目でした。

 あれはメイドとは言えません!」

 あー、そうだろうね。

 和製メイドってメイドじゃないから。

 そもそも本物のメイドはご主人様の帰宅をお出迎えしたりしないでしょう。

 いや、僕も本物のメイドを知っているわけじゃないけど。

 19世紀の英国メイドを主人公にしたアニメがあったけど、メイドってのはつまり家政婦なんだよ。

 裏方だ。

 掃除洗濯買い出しが仕事で。

 料理や家庭教師はまた別だ。

 日本で言えば「お手伝いさん」かな。

 僕はそんなもん見たこともないけど、祖父母が子供だった頃にはまだいたらしい。

 どっちにしてもむしろ単純労働者で、間違っても「ご主人様」と個人的に接触できるような職種じゃなかったとか。

「そうなのです!

 私はそういうメイドなのです!」

「比和は前世では有能なメイドでございました。

 わたくし専属で、身の回りのことをすべて任せていたほどです。

 ですが……残念ながら、現代日本ではそういった職業は存在しないようですね」

 高巣さんが無情に宣言すると比和さんは俯いてしまった。

 外見はギャルそのものだから物凄いミスマッチというか。

 アキバ行ったらメチャクチャ人気出そうなんだけどなあ。

「そこで矢代大地殿にご指導頂きたいのです」

 高巣さん(王女様)が僕を見つめて言った。

「何とか、比和を満足させてやって頂けませんか?」

 言葉の使い方、間違ってない?

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