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僕のクラスは厨二病 ~厨二病でもまともに青春したい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第五章 生徒会長?

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117.何とか丸め込めたらしい

 それは僕には判らないことですので。

 目で武野(娘)さんたちに合図すると、渋々口を開いた。

「ええと……投資というか金融というか」

「もちろん非合法じゃなくて」

「最初は色々試してみて上手くいったら続ける予定で」

「まだはっきりとは決まってないんだけど」

 それじゃ全然判らないどころかむしろ誤解が増すのでは。

「はっきり言いなさい。

 どんな仕事なんだね?」

 武野父が苛立たしげに言うけど、二人は口ごもるばかりだ。

 駄目か。

 しょうがない。

 僕は出来るだけ落ち着いているように聞こえる声で口を挟んだ。

「僕が聞いたところではパターン認識を応用した一種の予測システムということです。

 お二人の知識や直感を応用出来ないかということで、如月の者がシステム化を検討することになっています」

 出鱈目だけどね。

 でももうどうしようもない。

 加原くんには泥を被って貰おう。

「パターン認識?」

「はい。

 僕も詳しいことはわかりません。

 AIを応用したものらしいですが」

 よく判らない事はみんなAIにしてしまう。

 よく判ってないのは多分みんな一緒だ。

「そうそう!

 AIねAI」

「予測システムというか。

 とにかくAIで」

 怪しすぎるよ!

 三文役者もいいところだけど、ご両親ズは毒気を抜かれたみたいに黙った。

 反論しようがないのだろう。

 AIが出てきた時点でシロウトは黙るしかない。

 何かひっかかったような沈黙が流れて、耐えきれなくなった僕は賭けに出た。

「あの、ここから先はまだ機密というか、如月(うち)の方でもよく知っている者は限られているんです。

 決して娘さんたちが隠しているというわけではなく」

 そもそも隠すような秘密はない、というよりは厨二病を隠しているんだけど。

 でも真相を話したら少なくともご両親ズは席を立つだろうしね。

 武野さん達は何も言わない。

 痛々しい静けさ。

「……よく判らんが、大地君の真剣さは判った。

 ここは彼を信用するということでいいな?」

 武野父が武野母を振り返る。

 聞かれた方は渋々といった様子で頷いた。

「そうですね。

 少なくとも大地さんが真摯に話してくれていることは判りました。

 会社の秘密というのならそうなのでしょう。

 もっとも」

 ジロッと小和(むすめ)さんを見る。

「コヨリが果たしてどこまで判って言っているのか疑問があるけど」

「そうだな。

 お前もいいな?」

「ええ。

 どちらにしても、ここまで来て無かった事には出来ないでしょうしね」

 鞘名家も何とか納得してくれたようだ。

 いつの間にかお互いに手を取り合っていた未来人ズはほっとしたように笑った。

 調子いいなあ。

 そもそもこの程度のトラブルは自分たちで解決しておくべきなんじゃないのか。

 人を呼びつけて押しつけやがって(怒)。

 その後はみんな和気藹々と適当な事を話すお食事会になった。

 といってもご両親ズが質問してきて僕が応えるだけなんだけど。

 色々聞かれた。

「如月高校は文武両道と聞いているけど、実際にはどうなのでしょうか」

「大学進学率が良い事は知っているが、今回のように在学中から社会に打って出るようなことがよくあるのかい」

「矢代大地君は将来どうするの?」

 何とか答えた。

「はい、如月(うち)は文武両道というよりは文武片道というか、どっちかが出来るタイプが多いですね。

 スポーツで推薦貰ってそっち方面に進学する連中も一定数います」

「いえ、今回のケースは例外というか。

 たまたま在学中に始めたアルバイトが発展した生徒がおりまして、そこからは自然な流れで」

「僕は進学を希望しています。

 会社については暫定的に社長になる予定ですが、将来は判りません」

 何か、途中から僕個人のプライバシーに接触しかねないような質問になってきたので、後半は「まだ決めてません」で押し通した。

 なぜかご両親ズは満足げだった。

 食事が終わって席を立つときには皆さん僕と握手して「いや、有意義だった」とか「この娘たちをお願いします」とか色々言われた。

 勘弁して(泣)。

 美味い食事一回分では割に合わないって!

 会計は宣言通りご両親ではなく武野(コヨリ)さんと鞘名(オウカ)さんがしたみたいだった。

 個人でも結構稼いでいるらしい。

 会社組織というか法人ならもっとイケるんだろうか?

 まあ、僕には関係ないけど。

「ヤシロッチ、ご免」

「でも助かった。

 これから自由にやれそう」

 それは良かったね。

 疲れたから帰っていい?

 挨拶もそこそこに引き上げる僕。

 既にすっかり日が暮れている。

 夜道を歩きながらスマホを見ると、何件かメッセージが届いていた。

 とりあえず急ぎの用はないみたいでほっとする。

 社長を押しつけられたら頻繁にメールが来そうだなあ。

(ま、それはしょうがないな)

 無聊椰東湖(オッサン)が言った。

 僕が質問の集中砲火を浴びている間は気配すらなかったのに!

(あれは矢代大地(ガキ)個人が答えるべき場面だろう。

 俺が変に出ていくと違和感が増すだけだ)

 それはそうかもしれないけど。

 で、何か?

(感心したと言いたいだけだ。

 ガキだと思っていたが、さすがは俺の後世だな。

 ちゃんとあの嬢ちゃんたちの上司やってたじゃないか)

 そうなのか。

 僕はただ、途中から親父だったらどう答えるかなとか思いながら対処していただけなんだけど。

(あれでいいんだよ。

 判らんことは判らんとはっきり言っていたし、判っている事はきちんと説明していただろう。

 しかも責任逃れをしなかった)

 無聊椰東湖(オッサン)はやたらに感心しているみたいで色々と褒めてきたけど、僕はサラリーマンじゃないからね。

 でも学生と社会人でそういう事にそれほど違いがあるとも思えないんだよなあ。

 自分の責任は自分でとるだけだ。

 テレビで時々やってるけど、校内のイジメを教育委員会と校長が共謀して隠蔽したとか、そういう誰がみても駄目なことだけはやらないと決めているんだよね。

 それだけで結構上手くいくような気がする。

(あ、それから一応今回の件は黒岩(プロレスラー)に報告しておけ。

 一応あの未来人たちの上司になるし会社の件だからむしろ奴が当事者だから)

 そうか。

 丸投げしてやろうか。

 僕はスマホをしまって家路を辿った。

 寝る前に適当にレポートを書いて黒岩くんにメールする。

 これで良しと。

 翌日、学校に行くとすぐに黒岩くんに謝られた。

「武野殿方の件では申し訳ございません。

 こちらで対処すべきことですのにお手数をかけてしまいまして」

「いや、僕が食事に釣られただけだから。

 それに先方も一応納得してくれたみたいだし」

「それについては武野殿より連絡が来ております。

 ダイチ殿のおかげでご家庭内の諍いは解消されたとのことでございます」

 そのメールなら僕のところにも来ていた。

 まあ、解決して良かったね。

「それじゃそういうことで」

「お待ち下さい」

 何か不穏な空気を感じたので逃げようとしたけど駄目だった。

 またトラブル?

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