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Lv.17

 冒険者ギルドで刀を貰い、道具袋(アイテムボックス)を買って貰い、尚且つギルドの訓練所の使用許可まで貰ってしまった。

 序でに言うと、俺ばかりに色々やるのも不公平だよね、との弟子の主張により、ライとルフトにもユキさん(仮名)とか言う弟子の知り合いだか友人だかの持ち物から、武器では無く魔導具が贈られた。装備していると、体力や魔力の回復が少しだけ早くなるそうだ。…ちょっと羨ましい。

 何だかもう、弟子に足を向けて眠れない気分である。

 気分だけだけどな。

 俺は北枕は絶対しない。……寝相次第では仕方無い、とは思うが。尤もヘスペリアはエーデルシュタインの南西に有るので、そもそも足を向けて寝る事の方が難しいのだが。

 気分だ、気分。

 そんな訳で弟子と皇帝陛下に連れられ、また街中を歩いている。


 今度は鍛冶屋に行くと言う事で、職人通りである。表通りとはまた違い、専門店が立ち並ぶ様は結構面白い。

 鍛冶屋も幾つか過ぎているのだが、ギルドマスターのラーシュさんが紹介してくれた店とは違う様で、全て素通りしている。まぁ店先に並んでいるのが鍋やらフライパンやら鎌や鋤なので、これから行くのは武具専門店なんだろうな、と言うのは察せられる。


 それにしても圧巻である。


 細やかな彫金細工や、魔法薬しか並ばない店。錬金術師の店は何を売っているのかさっぱり判らないし、魔石が並ぶ店は魔法使いだけでなく、普通の人も出入りして品物を選んでいた。多分自宅に置いてある魔導具の動力を補給しに来たんだろう。

 三種の魔具、とか言って、冷蔵庫とエアコン、照明が魔導具として一般に流通して久しい。何処かで聞いた様なネーミングだが、最近はそれに洗濯機も加えられそうだ。それら全て動力源は電気、ではなく魔石なのだから、魔石屋はそりゃ繁盛するだろう。


 それにしても結構歩いた気がするが、未だ着かないのだろうか。

 そう思いかけた途端に弟子の足が止まる。

「此処だ」と言う弟子の声に店を見ると、店の中から鎚打つ音。見上げた看板には盾と剣、それと炎と鎚の意匠が施されていた。



 カランコロン、と扉を開けると意外と軽やかな鈴の音が鳴り響いた。店に入ると同時にフワリと熱気が肌を包む。だが目の前には無人のカウンターと、雑多に置かれた鉄の塊や折れた剣、武器で埋め尽くされた壁が有るだけだった。

 店主は何処だろう、と思ったが鎚の音が止まないと言う事は、作業中か、と理解する。

 それにしても客が来たのに出て来ないとは、佳境なのか商売っ気が無いのか。何と無く後者な気がする。店番を置いて居ない所からして、そんな気が犇々(ひしひし)とする。

 鎚音が止まない限り、誰も出て来ないのか、と思った所で突然店の奥から叫び声が聞こえた。

「うおあっちいぃ! 何だいきなり!? えぇ? 客ぅ?」

 野太い男の声がしたと同時に、棚の脇から声の主が現れた。その男を見て俺は目を丸くしたと同時に興奮した。

 ドワーフだ。ドワーフの鍛冶屋。

 ファンタジーの定番である。初めての遭遇に興奮するな、と言う方がおかしい。

 それにしても作業中らしかったのに、何故急に終わらせて店に出て来たのだろう。叫び声と関係有るのか?

 そんな疑問を抱いていると、ドワーフの鍛冶屋は俺達をジロリと()め付け、吐き捨てるように言った。

「お前等、どんな魔法を使ったか知らねェが、鍛冶師の作業を中断させるなんざ、随分と良い度胸してるじゃねェか。あァ?」

 機嫌悪く一気にそこまで言った鍛冶師は、次の瞬間小さな炎に攻撃されていた。

「うおッ!? 何だよ、そうじゃねェのか?」

 頭や顔、腕や服に小さな炎が幾つも付いては消えていく。多少焦げた臭いはするものの、火傷をする程では無いらしい。

 其の様子を見て、弟子が済まなそうに声を掛けた。

「え~と、火の仔? そろそろ止めてあげて。話が出来ない」

 其の言葉にピタリと鍛冶師への攻撃が止み、代わりに小さな炎はクルリと回って人形(ひとがた)になると弟子の肩にフワリと止まった。炎を纏っているが、弟子に変わった――火傷をしたり、服を焦がしたりした――様子は無い。

 何だこれ。今度は火の精霊だ。立て続けにファンタジー世界の住人が出て来て、驚くより呆れてしまう。

 しかもどうやら鍛冶師の方も、小さな炎には話し掛けていたが、人形になった途端目を剥いて凝視している。彼方もかなり驚いている様だ。

「どうもすみません。別に作業を中断させるつもりは無かったんですが、この仔が私の用事を優先させようとした様です。その、私は『精霊の愛し子』なモノですから」

 弟子の告白に俺を始め一同がギョッとする。いや、皇帝陛下とディオさんは驚いていないので、知っていたのか。


 精霊の愛し子、と言うのは加護の一つだ。程度はどうあれ、この世界に存在する精霊から、守護や贈り物が与えられる。時には主従の契約すらも。

 精霊との契約は、無くても問題は無いが、魔法使いなら誰でも望む事――精霊の力を借りる魔法が多いから――だが、力有る精霊で有れば有る程契約は難しいとされる。だから『精霊の愛し子』という加護は、魔法使いにとっては喉から手が出る程欲しいものとなっている。加護の強さにも因るが、有ればそれだけ高位の精霊と契約がしやすくなるからだ。

 あれ、若しかして皇帝陛下の伴侶になったのって、それが理由?

 思わず見上げて視線で問い掛けると、皇帝が俺を抱き上げ耳打ちした。

「言っておくが、俺はアレ(センリ)に加護が有ろうと無かろうと、伴侶に選んでいたからな? …寧ろセンリの守護精霊は強烈過ぎる。居ない方がマシだと本当は言いたい所だ」

 物凄い美声で耳元で囁かれた。俺が女ならイチコロだな。内容は扨置き。


「ん、んんんんー。お前さんが精霊の愛し子ってなら、頼みたい事がある。叶えてくれるなら、仕事の邪魔をしたのはチャラにしてやらァ」

 鍛冶師のオッサンはそう言うと、ついて来い、と俺達を作業場へと案内した。

 火を扱う神聖な現場なのに、良いのかな? と思うものの、当の本人が連れて来た訳だし、願い事も気にかかる。ゾロゾロとついて行くと、ムワ、と店より更に強い熱気が肌を刺す。

 炉の前に俺達を案内した鍛冶師のオッサンは、漸く自己紹介した。

「この工房の主、オシアン・ユハ・カレヴァ・イルマリネンだ。見ての通りドワーフ族だ」

「杷木千里です。―――他の方々の紹介は省きまして、お願いは?」

 俺達を紹介しない辺り、弟子にも思う所が有るのか、すう、とオシアンさんを眇めて見る。それに気付いていないのか、オシアンさんは炉を掻き回して火を熾すと振り返って弟子に言う。

「今鍛えている最中の剣なんだが、火と金属の相性が悪い。多分火が弱いせいだと思うんだが、生憎この工房じゃこれ以上の火力は出ねぇ。お前さんが若し火精と契約しているなら、この剣を鍛えるだけの火を熾しちゃ貰えねェか?」

「…その仔じゃ力が足りないって事ですか。因みにその剣は誰かの依頼? 自分の趣味?」

「趣味だな。俺の工房じゃこの金属は鍛えられないのが判ったから、扱わないか、炉を強化するか、燃料を研究するか、何れか選らばにゃならんが、今鍛え始めたのは仕上げてやりてぇ」

「其処まで判って居るなら……フェンちゃん?」

 薄く笑った弟子が呟くと同時に、熾火が揺れた。


 忽ち炉の中一杯に焔が立ち上り、室内の温度がグンと上昇する。先程とは比べ物にならない程の熱気に、汗が噴き出る。

「こりゃ……期待以上だッ!」

 オシアンさんが呆れた様に叫び、今の内に、と思ったのだろう。慌てて鍛えかけの塊を炉に入れ、熱く真っ赤になった所で鎚で叩く。弟子の肩に居た小さな精霊も、炎に惹かれる様に飛び込み光を放ち煌めき同化する。みるみる成形されていく剣が、何度も炉に焼べられ叩かれ、やがて一つの形となった。

 焼き鋳れた剣が冷やされ熱を失いつつあるのを見届け、納得したのかオシアンさんが満面の笑みで振り返り弟子の手を握りブンブンと振った。

「センリとか言ったな! 有り難ェ、お陰で仕上げる事が出来そうだ! 助かったぜ。このまま使って大丈夫か?」

「其れは良かった。仕上がるまでは、炉を消さなければ大丈夫ですよ。…で、此方の用件ですが」

 ゴソゴソと懐から、ラーシュさんからの紹介状をオシアンさんにひょいと渡す。軽く渡されたからか、そのまま封を切り内容を確認してから、俺と弟子を二度見して……叫んだ。

「はあっ? ラーシュの冗談か? そうだな? そうと言ってくれ!!」

「何て書いてありました?」

「…………お前ェが皇帝陛下の伴侶で、金髪のボウズがエーデルシュタインの王子だと……」

「事実ですがそれが何か?」

 にこりと笑う弟子の笑顔が黒い気がするのは俺の気のせいだろうか。


 弟子の言葉にガクリと項垂れたオシアンさんは、直ぐに顔を上げ弟子に縋り付いた。

「頼むッ! 俺の態度が悪かったのは謝る!! だから投獄は……いや、精霊の力を失くすのは止めてくれ!!」

 いきなり叫んだ内容に驚いたが、直ぐに思い至る。普通に考えれば、今までのオシアンさんの態度は、普通の貴族ならば不敬に当たる。

 皇帝陛下の伴侶を怒鳴り付け、精霊を利用する。投獄されてもおかしくは無い。尤もオシアンさんは皇帝陛下の伴侶云々よりも、弟子の契約精霊の方が重要な様だ。

 弟子の契約精霊はあの炉の炎の強さから察するに、かなり高位の精霊の様だ。オシアンさんが使役している精霊を『消す』事など容易いだろう。精霊の力を利用して鍛冶師をしていたなら、その協力を得られないのは、利き腕を捥がれたも同じなのかも知れない。そもそも最初の願い事、炉の炎の強化を今更止められても困る、と言う事か。

 其処まで考え、先程弟子が俺達を紹介しなかった理由に気付く。

 試したのだ。オシアンさんが、鍛冶師としてどれだけの力を持っているのかを。

 始めに弟子が訊いた、依頼か趣味か、と言うのは依頼ならば断るつもりだったのだろうと思う。

 出来ない筈の依頼が成功したなら、再び似た依頼が来ないとも限らない。その時オシアンさんは依頼を断れるのか?

 断れなかった場合、自力で炉や燃料をどうにかするなら良い。出来ずに弟子を頼るなら問題だ。

 そんな甘い考えを持つ鍛冶師をラーシュさんが紹介するとは思えないが、無いとも言い切れない。

 趣味の場合、オシアンさん次第だろう。やはり造る度に頼られるのは問題だし、自力で何とかすると言うなら、弟子の事だ。寧ろ逆に協力を申し出るだろう。たった今そうだった様に。

 俺達の名や身分を明かさなかったのは、オシアンさんと関わりを持つべきか否かを弟子なりに考えた結果だと思う。で、弟子の中では紹介しても良い、と言う事になったんだろう。

 …紹介の仕方に若干の悪意が感じられるのは、気にしないでおこう……。


 その後、縋り付いて懇願していたオシアンさんを宥め賺して落ち着かせ、やっと本題に入る事が出来た。

 最初どう見ても少年な弟子が皇帝の伴侶と信じられなかった――俺が王子だと言う事は信じたが、弟子の事は精霊と契約している俺の護衛と思いたかった(ヽヽヽヽヽヽ)様だ――オシアンさんだが、縋り付いて懇願していた所を引き剥がされて、怒鳴り付けようとした相手が皇帝陛下なのに気付いて蒼くなったのは、最早ご愛嬌と言って良い気がする。

 弟子が俺達を鍛冶屋へ連れて来たのは、俺が貰った刀を研ぎ直して貰う為だった。打ち直しで無いのは 、刀が魔剣で鍛え直す必要が無いから、らしい。だったら研ぎ直しも必要無いんじゃ、と思ったのだが、其方は必要らしく、オシアンさんも直ぐに作業に取り掛かってくれた。

 鍛冶師が研師も兼ねていると聞いて、妙な感心をしてしまった。日本で生きていた頃、刀鍛冶を訪ねた事が有ったが、彼等は完全な分業を行っていた。簡単な研ぎなら刀工も行っていたが、仕上げの磨き研ぎには研師に渡してから実に一ヶ月は有していた。其れを此方の世界では鍛冶師が行うのだから、処変われば、と思う。尤もヨーロッパじゃどうだか知らないし、ドワーフの拘りだからこそ、と言うのも有るかも知れないが。


 拵えを外し、刀身のみになった刀をオシアンさんが研ぐと、波打つ刃文が更に引き立った。シャッシャッと言う規則正しい音が止んで、オシアンさんが自分の髭を一本抜く。そのまま刃を上にした刀の上に落とすと、プツリと髭の重さだけで切れた。その切れ味の良さに、今までのやり取りを黙認していたフォル爺が待ったをかけた。

「此れは……余りに切れ味が良すぎる。クラウド様には未だ早かろう?」

「ミッフィーさんは、王子殿下が無闇矢鱈に刀を振り回すお莫迦さんと言いますか?」

 フォル爺の言葉に弟子が平然と言い返すと、俺大好きなフォル爺がうッと黙り込む。余りの切れ味に心配が先に立った様だが、フォル爺もどちらかと言えば『男は無茶して大きくなれ』と言う考えなので、俺の普段の行動を思い返したのか渋々だが引き下がった。

 (なかご)には、月と龍の意匠が施されていた。よく見ると其の回りにも何か模様が刻まれていて、光にも雷にも見える。銘を探すと小さな文字が見付かった。

 どうしよう。どう見ても日本語って言うか、漢字なんだが? 前世持ちな事はカミングアウトしたが、異世界の文字を読めるって、変な事か当たり前なのか判らない。

 戸惑っている間に、オシアンさんは拵えを戻して、刀を鞘に納めて俺に渡す。

「王子様よォ、コレが魔剣だって言うのは知っているな? 銘は読めたか? 持ち主になれるヤツには自然と読めると言われている。ボウズが読めるなら、剣に選ばれたって事だ」

 成る程、判った。漢字とか関係無いのか。オシアンさんの問い掛けに頷く。

「魔剣には二種類有る。誰にでも使えるものと、ソイツにしか使えねェものと。ソレは所有者にしか扱えねェヤツだ。使いたいなら、所有権を主張しな」

「どうすれば良いんですか?」

「物にも因るがソレは名前を読めば良いヤツだ。魔語(ルーン)は唱えられるか? 出来るなら『我が欲する、剣よ。我が物となりて我を助けよ』その後、書いてある銘を読め」

 言われた通り、魔語を唱える。


「―――我が欲する、剣よ。我が物となりて我を助けよ。『月光龍雷』」


 捧げ持つようにしていた刀から、淡い光が放たれ、俺の頭から全身を包むとまた元の刀に戻っていった。キラキラした光に気を取られ、気付くと握っていた柄が手に馴染む太さに変わり、太刀が脇差し程の大きさになっていた。

「う~ん……名前から察するに、結構面白い刀ですね、ソレ。効果とかは鑑定すれば判ると思いますが、使っていれば何れ判りますよ」

「今すぐ使いたい訳じゃ無いから、直ぐには良いよ。でも名前からって何でだ?」

 弟子の呟きが気になり、貰った道具袋に元通りに布に包んで刀を納めて訊き返す。因みに表示は『名刀:月光龍雷』になっていた。…妖刀じゃなくて良かった。

「月光龍雷、字は違いますが『亢竜』、栄華を極めたって意味が入っていますから、相当良い刀かと」

「…亢竜悔いあり、にならないようにするよ」



 そんな訳で研ぎ直された刀を受け取り、ホクホクしていた俺だが、現在何をして居るかと言うと。


 絶賛鍛冶体験中なう。


 余程俺が興味津々で見ていたのか、研ぎが終わってから再び鉄を鍛え始めたオシアンさんが少しやってみるか、と声を掛けてくれた。

 勿論やると即答したが、多分今までの流れが後ろめたかったんだろうな、と思う。一応此方も刀を研いで貰ったから、気にしなくても良いと思うのだが。教えて貰うのは吝かでない。

 流石に始めからまともに作れる訳は無いので、叩く真似だけ、と思ったのだが一打ちして火花が飛んだと同時に、お馴染みの効果音が流れた。


『【打撃術】のスキルを得ました』

『【鍛造】のスキルを得ました』

『【鍛冶師】のスキルを得ました』


 …うん、だからスキルを得るのは構わないんだけどさぁ。一叩きしただけで取れるって、どんだけ……。


 結局スキルを得たお陰か、初心者なのに叩き方が巧いと褒められ、一つ作ってみるか、と小さなナイフを作らせて貰った。そんなに上手い出来では無いが、一つ仕上げられたと言う事に満足している。

 で、このままでも良かったのだが、折角だから研いでみた。ペーパーナイフにしては切れ味が良すぎるが、ちょっとした細工をするのには向いているかもしれない、と言う出来だ。

 当然の事ながら、【研磨】スキルを貰いましたが、何か?



 ギルドにも行ったし、鍛冶屋にも行った。街中は既に冷やかした後なので、特にこれと言って行きたい場所も無いのでそろそろ城に戻ろうか、と工房を出て帰路に向かう。

 すっかり弟子には甘えてしまったが、どうも皇帝陛下が俺をダシにして弟子とデートを楽しみたかったんじゃ無いか、と言う疑惑が浮かんで消えないので、この件に関しては気にしない事にする。

 ほぼ丸一日出歩いて居たので、眠い。よく考えなくても俺は幼児だ。寝るのが仕事、みたいな所も有ると言うのに、興奮しっぱなしだったからか、疲れがどっと出ているんだと思う。

 そんな訳で皇帝陛下に抱っこされてマス。片手で抱き上げられ、反対の手は確り弟子と手を繋いでいマス。然も恋人繋ぎだよ。やだ、もうこの皇帝。

 ルフトもフォル爺に抱えられて夢現だ。今日一日振り回して悪いなー、と思うが楽しそうだったから良いか。


 船を漕ぎつつ、気付けば離宮の宛がわれた部屋で寝ていた。

 起きて父に挨拶すると、皇帝に迷惑を掛けるな、と一頻り小言を言われたが想定内だ。それよりライに土産があるのに父には忘れていた。

 どう誤魔化そうか考えたが、誤魔化しようが無いので、泣く泣くペーパーナイフを渡すと、思っていた以上に喜んでくれて、逆に心が痛い。

 すまん、父。其れは父の為にって訳じゃ無かったんだ。単なる試しなんだ。

 ……帰国するまでに、母上と弟への土産を父と選ぼう。その位の時間は作れると思う。



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