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目が覚めるとそこには…

 朝、目が覚めてまず思ったのは、体が動かないということだった。

(か、金縛り!? ここ、お酒飲んでたリビングだよな)


 しかし、次第に何か暖かい物がすぐそこにいることに気づき、状況を把握してから絶叫しなかった俺を俺は褒めてあげたい。


(圭吾さんがなんでこんなことに!?)


 俺よりもかなり長い脚は、なぜか俺の両足をしっかりとホールドしており、その上半身は服を身にまとってはおらず、右腕は腕枕、左腕はそれこそなぜか…


(なんで、この人の手が俺の胸に!!!?)


 服の下から滑り込み、素肌である胸の上に手が置いてあった。

 手をどかそうと動こうにも全身で体の自由が奪われているし、無理やり起こすと怒られるんじゃないかと思ってしまう小心者の俺はなんだか泣きそうになった。さらに、俺はあるものに気が付いて更に体を硬直させた。


(た、勃ってる!!?)

 なんと、信じられないことに固くなっているアレが俺の腹に当たっていた。


 ガチャリ。奥の部屋から寝ぐせのついた隆二さんが出てきた。

 まるで、神様が助けに来てくれたと思えるくらい嬉しかった。

「た、助けてください~」

 俺は心底情けない声で助けを求めた。この異様な光景を目の当たりにした隆二さんは目をぎょっとさせ、慌てて近寄ってきた。

「このっ、ばか!」

 バシンと遠慮なく圭吾さんの頭を殴る。とてもいい音だった。流石にいつも冷静な隆二さんも驚きと焦りを隠せれていなかった。

「…ん? あれ? レナちゃん?」

「寝ぼけてるだろ! いいから起きろ」

 むくりと起き上がりぼーと当たりを見渡している圭吾さん。

「あれ? 俺、アイドルのレナちゃんとこれからヤルところだったのに… なんでお前らいんの?」

 俺はようやく体を起こし、隆二さんの後ろに隠れた。いまだに心臓がバクバクしている。

「どんな夢見てるんだよ。ゆうたくんが朝から迷惑してるだろ」

 圭吾さんは頭をぼりぼりと掻いて、んー?と唸り、先ほどの光景を一生懸命思い出していた。

「ああ! 悪い悪い。もう少しで、お前を襲うとこだったな。わははは」

 昨日と変わらずの豪快な、全く悪びれていない笑いである。

(俺だったからまだよかったけど、もし相手が女の人だったら大問題だぞ)

 臆病者の俺は、やっぱり思うだけで口には出せない。

「ま、そんなことよくあることだ。男相手は初めてだけどな」

 俺は膝から崩れ落ちそうになった。

(…流石イケメン。この人も、俺とは全く住む世界の違う人だ。まあ、これだけカッコよかったら押し倒されても女の人も納得しちゃうのかな)


「それより朝食まだか?」


 さも、当たり前のように言う圭吾さん。

「はあ。わかった。ちょっと待ってて」

 ため息を吐きつつキッチンに向かう隆二さんは、いつものこと過ぎてなのかこのやり取りに疑問はないようだ。

「…どうしたら、俺もそんな風になれるんだろう」

 俺もついついため息が漏れてしまった。

「なんだ、お前。先生に憧れてるのか」

「!?」

 いつの間にか肩に腕を回され、隆二さんに聞こえないように圭吾さんは言った。そういえば、この人に昨日の夜なにか意味深なことを言われた気がするけど、酔いが回っていたし、あまり思い出せない。

「りゅ、隆二さんにも憧れますけど、圭吾さんもか、かっこいいです」

「そうか? ふふん。そりゃ、男上げるしかねえよな。よし、今夜俺が、裏DVDを持ってきてやる。鑑賞会しようぜ」

「え!」

 なぜそうなるのか俺には分からなかったが、圭吾さんはとても上機嫌だ。

「ばっか、声がでけえよ。あの堅物な先生が許すはずないだろ。あいつはドライな男だからな。あいつが寝静まった夜に観るんだ」

「こ、この部屋でですか?」

「俺の家は遠いからな」

「でも、俺、これ以上隆二さんに迷惑をかける訳には…」

「いいんだよ。あいつはむしろお世話するのが好きだからな。昨日からなんやかんや言いつつ、色々してくれてるだろ」

「でも…」

「なんだ、お前観たくないのか? 結構すげーぞ」

 色々なことを考えた。優しい隆二さんは確かにもう一晩泊めてと言っても断らないだろう。しかし、昨日久しぶりに会って、一晩泊めてもらっただけでも申し訳ないことだ。それに2日も外泊したら母さんがなんというだろう。説明が面倒だ。


「…み、観たいです」

「よし!」

 

 自分に嘘はつけなかった。



 そのあとは、隆二さんが作った美味しいオムライスをいただいて、俺はそのまま職場であるコンビニへと向かった。

 マンションを出たときに、圭吾さんとアドレスを交換して今日の夜のことは上手く言っとくから、家の人に泊ることを伝えておけと言われた。俺は申し訳なさ半分、友達がいないので誰かに誘われたということに対して嬉しさ半分だった。

(あんなイケメンな人たちと少しでも関わっていたら、俺も少しは変われるかもしれないしな)

 自然と足取りが軽くなった。

 





 けれど俺は知らなかった。

 俺とは違うあの人たちの世界に、簡単に足を踏み込んではいけなかったということを。

 自分自身の知らなかった残酷な一面があったということを。



 誰の心にも、闇は存在するということを。








思ったより長編に挑んでみようと思います。

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