9話 立ちはだかる者
目の前の老人は好々爺のように見える。
だが、俺はこの人物が見かけと違い相当な実力を持っていると言う事を感じた。
「ふむ、筆頭上級神の新しい弟子か?わしはミヒャエルと言ってな
まあ、隠居した爺だと思えばええ。」
マラクに尋ねるとこの老人に見える人物は先ほどの竜の姿が本当の姿で、
かつては筆頭管理神も務めたことがある人物との事だ。
(銀河竜・・・始まりのドラゴンとも呼ばれている・・・この神域というか、
世界を包むこの銀河の誕生時からいるといわれる存在だ・・・)
ヨウコがパスでこっそりと教えてくれる、そうなると一体何歳なんだ?
「まあ歳なんぞ幾つか忘れてしまったのう、引退してすでに数十万年は経っておるからのう、まあなにかあったときに出てくるだけじゃよ。」
いつもは旅に出ており、神域で定例会議があるときだけ顔を出すらしい。
そこまで話したとき筆頭従者さんが声を上げた。
「さっきの話ですが{迷宮}を何とかできる方法があると言われてましたが。」
彼女はその中の筆頭上級神が気になるのだろう。
「うむ、わかっておるよ、まずは{迷宮}の確認からじゃ。」
そう言ってミヒャエルは目をつぶり周囲の探知を行う。
「うむ、そこか、うん?これは!いかんな・・・」
そう言って彼はある言葉を唱える。
その言葉は光の文字列のようになり辺りを飛んでいきある地点に吸い込まれていく。
そうするとその辺りの空間がゆがんでいくのが見えて・・・
そこに二人の姿が見えた、一人は立ち、一人は倒れている、
そして俺たちの知る人物は倒れている方であった。
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「アレク様!」
筆頭従者さんの悲痛な叫び声で我に帰った。
彼女はためらいも見せずに筆頭上級神の元に向った。
そして、その前をさえぎるようにマラクとミヒャエルがウエズリィと相対する。
「ウエズリィ、そなたはアレクを手にかけたのか?であるならばこのままにはしないなの。」
マラクはそう言って両腰につけていた扇を手に持ち構える。
「落ち着くのじゃマラク、アレクはまだ死んでおらん、であれば{迷宮}は消えておろうからな。」
ミヒャエルは冷静に言い放つ。
「ウエズリィよ、もう止めるのじゃ、おぬしがしておるのは単なる復讐じゃ、
管理神を滅ぼし{世界}の住人を解放するのがおぬしの願いじゃそうだが
そのために相争わせ命を奪うのはまちがっておるな。」
「ミヒャエル老か・・・もう遅い・・・遅いんですよ、今更ね。」
「ウエズリィ・・・」
「さあ、ここを退いていただきましょうか御二方、
私はアレクにまだ聞かねばならないことがあるのですよ。」
「ふむ、さしずめあやつの事か、お前さんの故郷の管理神であった者、
かつての筆頭管理神のことじゃな。」
「そうですよ・・・奴をこの手で八つ裂きにすることが最後の望みですからね。」
「どうしてもなのかの?」
「マラク、どうしてもです、ここで貴方とミヒャエル老を倒してでも!」
「そうかの、我らを侮るでないぞ、我らに勝てるとおもっておるのかの。」
「そうですね、{断罪の女神}と{銀河竜}双方と戦うのは愚か者でしょうね、
ですがここにいるのはその愚か者のようですよ。」
そう言って彼は構えを取り力を込める、その力のみなぎりように二人は驚いているようだ、そしてその感じは・・・
「馬鹿な、我ら二人よりも力が・・・」
「ウエズリィ・・・そなた。」
俺にクリスがパスで伝えてくる。(マサト、あれは・・・ )
それで納得がいった、その力はそうして手に入れたのか。
俺はウエズリィと二人の間に割り込んだ。
「!?」
「何をするのじゃ。」
俺はウエズリィに向き直り言葉をかける。
「これ以上師匠には手を出させない、俺たちが相手する。」
「ふむ?アレクのお弟子さんであの{世界}の管理神でしたね、
お名前は確か・・・」
「マサトだ、だが今はその名前ではない。」
「ん?」
「俺の名はグリーゼ、 グリーゼ・アウラトゥースだ。」
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この地に降り立つ時にこの姿になっていた、
近接戦闘になれば獣人族のグリーゼのほうが強いからである。
俺はポーチに仕舞っていた槍を取りだす、笹の葉のような形をした六メートル
位の槍である。
それを構えるとふわりと俺の隣に降り立つのは。
「わたしの名ははつゆき、私も彼の弟子よ。」
俺たちを見ていたウエズリィは微笑んで得物を構えた。
「いいですね、貴方達を倒してアレクに聞きたいことを聞くとしましょう。」
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