3話 神域での戦いその3
主人公視点ではありません
何が起こったのか?
それすらも判らぬままに沈められていく。
さすがに本隊の方はまだ余裕があった。
艦隊旗艦から見えているのは殲滅されていく前衛の惨状である。
「前面からだけでなく左右両方からの攻撃です!」
「十字砲火地点に誘い込まれました!
我々は罠に嵌められたのです!」
報告を受けながら顔を歪めるフヤキは直ちに後退を指示しようとしたが、
その前に新たな報告がそれを止めさせた。
「後方に敵艦載機群!後衛を攻撃してきています!」
そう、彼らは完全に包囲網に囚われていたのであった。
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「艦載機部隊攻撃開始しました。」
報告を受けてあたごはふっと息を吐き出した。
とりあえず作戦は成功を収めている。
彼女が取った作戦は目新しいことではない、陸戦と違いはあるが、
かつて地上ではこのような作戦は良く使われていた。
「おめでとうございます、敵の半数を撃破しつつあります、このまま行けば完全勝利ですね。」
「まだよ、追い詰められた敵は次の動きをを仕掛けてくるはずよ。」
そうしてじっと作戦指揮パネルを見つめるのであった。
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「このままでは全滅します、どういたしましょう?」
幕僚に聞かれてフヤキは決断を下す。
「艦隊を再編成!陣形を紡錘陣形に、正面に火力を集めて突破する。」
「非常に困難です、十字砲火に晒されてすべて撃沈されますぞ。」
「このまま手を拱いていても全滅は免れまい、だが一点に火力を集めれば、
突破できるはずだ。」
「承知しました・・・直ちに命令いたします。」
そして、被害を増やしつつも陣形の再編にかかるのであった。
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使徒たちが再編成を行っているその正面に当たるポイントには戦艦を中心にした部隊が展開している。
防御力と攻撃力の優れた彼女達で敵を防ぐためである。
「どうやら正面突破を図るつもりらしいな。」
「防げると思う?」
大和に武蔵が問いかける。
「大半は沈められると思うが突破はされると思うな。」
「半分やっつけたとはいえ数は多いからね。」
「だが相手は密集隊形を取りつつある、{アレ}を使えば。」
「テストもしていないのに?危険じゃない?」
「そうも言えない、突破されれば数が多いあちらによってこっちにも被害がでる。」
「そう、じゃあ仕方が無いね。」
「ああ、全開では使わない、八十パーセントくらいで行こう。」
「了解!スタンバイするよ。」
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あたごのもとに敵の動きに変化が現れた事が知らされた。
「紡錘陣形で密集したところで火力の集中か・・・」
予想通りの展開である。
先ほど正面の部隊に注意をしたがその返事が返ってきた。
「大和・・・アレを使うつもり?テストも無しで大丈夫なの?」
だがこのままでは被害が出るのは明らかである、
そのため、彼女は次善の策を取る事にした。
「左翼と右翼は砲撃を続行、なるべく打ち減らしていって。」
「艦載機部隊は合図があり次第左翼と右翼部隊側に退避、帰還して。」
それを指示するとパネルを見上げる。
「後は、大和達・・・任せたよ。」
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多大な犠牲を出しながらも艦隊はどうにか再編成を終えて陣形を整えていた。
「前進あるのみ!火力を集中して突破せよ!」
命令を受け陣形の先端部から苛烈な砲火が浴びせかけられる。
その向こう側では障壁を張った戦艦群が反撃をしてくるが・・・
「敵部隊後退しつつあり、中心部の陣形が崩れ始めています。」
「よし!そのまま前進せよ、突破はもうすぐだ。」
さらなる猛射に戦艦も被弾したのかつぎつぎと離脱していく。
「よし!このまま突破だ!」
「待ってください!敵陣後方に更に戦艦二隻確認!」
「たった二隻でなにが出来る、このまますりつぶせ!」
そうして彼らは突進していく事になる。
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「敵艦此方に向ってくる!」
「丁度いいな、魔力充填率は?」
「現在七十七パーセント・・・七十九・・・八十!」
「コアに回路接続!」
「砲口開きます!」
上部兵装の艦首部分の紋章がついている場所あたりが開き巨大な砲口が
顔を見せる。
「照準あわせ上下角プラス1左右マイナス3!」
「照準ロック完了!自動追尾問題ない!」
「対ショック対閃光防御障壁展開!」
その言葉と同時に黒色の障壁が前面に展開する。
「魔導回路オールグリーン!圧縮機作動!薬室内圧力上昇!」
砲口に赤い光が輝き、そしてその色は更に明るさを増していく。
「収束率はどうするの?」
「拡散モードで、拡散率三十%はとらないと密集していてもそれなりに居るから。」
「了解!収束率調整完了、射撃準備よし!目標イエローゾーンからレッドゾーンへ!」
「全艦に通達、射撃範囲より直ちに離脱繰り返す!離脱急げ!」
それを聞いた各艦は直ちに左右に退避していく。
「発射タイミングを大和と同期させる、トリガーを回した、後は頼む!」
「了解!同期完了、発射カウントダウン、10・9・8・・・・」
「3・2・1・0、発射!」
トリガーが引かれ砲口に光が溢れ辺りは真っ白になった。
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