29話 神域へ
主人公視点ではありません
マラクの発言についていけなかったのかポカンとする二人、
そしてロフスはリリスを見つめ、リリスは彼を見つめる。
「そんな、そんなことって・・・」
彼は完全に混乱しているようだ。
まだリリスの方は状況が把握できていないようだ。
「私の前世の更に前世?おもいだせないのじゃ。」
そこにマラクが解説してくれる。
「転生したからといって必ずしも前世の記憶が残るわけではないのだの、
むしろその方がほとんどなのだの、今回のケースは非常に稀なものだの。」
「では誰かが操作したとか?」
亜由美が疑問を投げかけるがヨウコがそれを否定する。
「それが出来るのは管理神だけだが、今回は操作とかはないな、
世界への干渉を行うときに自分に替わって実行する者を送り込む時に
使われるが、その世界の者と融合させる事はまずしない、
融合の失敗のリスクが大きすぎるからだ、だから一から新しく生まれさせるか、
最初から元の世界の姿を再構築させて送り込むとかするものだからな。」
「じゃあ、本当に偶然なの?」
「うむ、偶然には違いないがの、あえて言えば{愛の奇跡}といった方がよいのかの?
言っててむずがゆくなるがの。」
そのような外野の声は彼らには届いていなかった。
見詰め合う二人はどちらからと言うわけでもなく抱き合った。
「ん、ハッピーエンド。」
「あの二人はね。」
はつゆきとしらゆきが会話している向こうではマラクがリオナたちに向き合っている。
「そこのリオナ以外は{勇者}と同じく召喚された者たちじゃの、
元の世界でも召喚されても勇者のような事はしておらんの、
ではそなたたちも送還するかの。」
そう言って送還魔法で次々に送り返していく、
彼らは勇者のように抵抗しなかった、向こうで問題は起こしてなかったのだろう。
「さて、最後は{使徒}であるそなたじゃの。」
「私も送還するんですの?」
「送還してほしいのかの?」
「別に、あそこにはもう何もありません、私はもう・・・」
「ふむ、確かに送還してもの。」
二人のあいだでそのような会話が為される。
理由を聞くとマラクが答える。
「リオナのおった世界はの、魔法文明の発達した世界だったんじゃがの、
大規模な魔法陣実験に失敗してな、世界のほとんどが死の世界になったのじゃの、
九死に一生を得た彼女が召喚されて使徒に選ばれたようじゃの。」
「{主}は私に生きる道を下さった、私はそれに答えることが{主}からの使命だと思ったのです。」
その言葉にそこにいた皆は複雑な顔をした。
「皆の気持ちはわかるがの、{主}と呼ばれるものは決して悪でもなく魔性の者でもないの、
ゆえに戦い辛い相手なのだの。」
「知っておられるんですか、相手を?」
ヨウコの問いはみんなの疑問であったようだ。
「うむ、筆頭上級神の古き友人にして、我らとも旧知の特級管理神であった、
ウエズリィ・ノアレ・アンクルソ、 奴が彼らの言う{主}なのだの。」
今までダークコロッセオ絡みの話から今初めて黒幕の名前を聞いて、
驚く皆、ヨウコは身を乗り出してマラクに詰め寄った。
「なぜ、ウエズリィはそんなことを!師匠の友人なのになぜ?」
「{使徒}アグサスより聞かなかったかの?一万年前に滅びた世界の事をの、
ウエズリィはそこの出身なんじゃよ。」
「では、エスペランサは?」
「かつての彼のふるさとじゃの。」
「そんなことって・・・」
絶句するヨウコに代わって正人が尋ねる。
「だから、アグサスはあのような事を言ったんだな、神に頼らずに生きていけるようにすると。」
「そうじゃの、ウエズリィにとっては管理神が存在しなくても生きていけるほど強くなって欲しいと、
ダークコロッセオでふるいにかけておったのじゃの。」
「だがそのやり方では多くの犠牲が出る、それも承知のことなのか?」
「そこなのだの、奴は間違った方向に進んでしもうたの、
あのやり方では徒に多くの犠牲を生むだけなのじゃの。」
「では、正さなくてはならないな、彼の間違いを。」
「そうなのだの、ゆえに私はここにきたのだの、{神域}に向かい奴の間違いをただすのじゃの。」
「判った、俺は行くよ。」
正人が言うと、マラクは得たりと頷く。
「正人が行く所は私の行く所、そして正人は私が守る。」
はつゆきが言い。
「「「「「「私も。」」」」」」
しらゆきや亜由美、美奈、美月にクリスやリアンナたちも同意する。
「私達も行きますよ。」
当然式神たちもすべて同行することを望んでいる。
「では行くとしようかの、{神域}へ皆での。」
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