28話 裁きの女神
異世界転移魔法陣から現れたのは、見知らぬ人物だった。
有体に言えばゴスロリの格好をした少女にしか見えない。
だが、その見かけとは違い感じるのは・・・
「まさか{管理神}なのか?」
ヨウコの方を見ると顔を青褪めさせてぶつぶつつぶやいている。
「まさか{断罪の女神?}そんなはずは・・・」
すると俺たちが尋ねる前にゴスロリの彼女が言葉を発した。
「始めましてだの、我が名はマラク、{断罪の女神}とも言われる存在じゃな、
筆頭から依頼を受けてこの地にきたのだがの。」
そう言って俺のほうを見ている。
「ほう、そなたが筆頭の言っておったマサトか?中々の力の持ち主だの、
彼が頼みにするのがわかったの、よろしくたのむの。」
そう言って頭を下げてきたので此方もあわてて頭を下げる。
お互いの紹介をしていると彼女ははつゆきの方を見て、「ほぅ」と言った。
「マサトも中々の力の持ち主じゃがの、そなたの力それを超えて居るの、
これならば使徒が来ても問題はなかったの。」
俺ははつゆきがその力を得た出来事を語った。
「なるほどの、それでそれだけの力を得たわけかの、たいしたものよの。」
俺たちが会話している向こうでロフスが捕縛した勇者と相対していた。
「くそぉ、オリジナルの俺たちが何でコピーなんかにやられなきゃならないんだ。」
「まだわからないのでござるか?
たとえ複製された者であってもその身に宿る命は一つでござる、
そしてその命はなんらオリジナルとは変わりがないのでござるよ。
そして生きるために全力で戦う彼らに敵わないのはあたりまえでござるな。」
「・・・ ・・・」
俺たちはマラクに{神域}との通信途絶と捕縛した勇者一行の処置を尋ねた。
「向こうと通信できないのはの、現在{使徒}どもが攻撃しておるからじゃ。」
「なんですって!」
ヨウコを筆頭に皆驚くがマラクはそんなにはあわててはいない様だ。
「いかに{使徒}どもが大挙して攻めてもそう簡単にやられる{神域}ではないの、
筆頭はの、それに備えて精鋭を残しておったんじゃからの。」
その言葉に俺たちは安堵した。
「あとこやつらじゃが現在筆頭と連絡がつかないゆえに我がとりあえず処断するぞ、
{断罪の女神}でもあるしの。」
そう言って彼女は勇者達の所に行き懐から輝く球体を出した。
「これはの各世界のアカシックにアクセスすることが出来るアイテムなのだの、
これでこやつらの所業を見てみるとするかの。」
そう言って球体に魔力を送り目をつぶる、そうやって見ることが出来るそうだ。
しばらくして目を開いた彼女はため息をついた。
「はぁ、この勇者とやらは元の世界でかなり非道なことをしておるの、
此方に召喚されてからも敵対した側に対してもな。」
この勇者は{ダーク・コロッセオ}で戦っていた者たちの召喚で異世界転移して、
勝利に導いたあと{使徒}になったそうだ。
もちろん当時からパーティにいたリオナのカモフラージュとしてだ。
さらにロフスの話を聞いたマラクは首を振りながら話す。
「確かに彼とその彼女を殺した件は向こうの世界では露見しておっての、
現在も指名手配中なのじゃの、どうするかの?」
彼女はそう言ってロフスを見る、彼が復讐をしたければ許可しそうな感じである。
「では、元の世界に送って罪を償わせるでござる、拙者が復讐してもむなしいだけでござる。」
「良いのかの?」
「きっと彼女もそう言うでござろうから・・・」
そう言ってロフスはうつむく、それを隣で見ていたリリスが彼に抱きついた。
「ロフス・・・」
マラクはそれを見ていたがふいに勇者に向って言った。
「ではそなたは元の世界に送還する事にするの、そこで相応に償うがよいの。」
そして腕を上げ転移魔法を唱える。
勇者が魔法陣の中心になり光につつまれていく。
勇者を見ながらマラクが話す、冷ややかな態度で。
「そなたの考えはみえておるの、送還されても勇者の力で逃げおおせると思っておろうの、
じゃがこの送還魔法は特別製での、そなたの得た{力}をすべて奪うことが出来るのだの。」
「なんだと!」
見ていると勇者の体から光るものが抜けていくのが見える、
あれが勇者が勇者召喚で得たスキルなどだろう。
「やめろ!俺は{勇者}なんだ、世界を救った英雄なんだぞ!こんな事あるのかよ!」
そうわめきながら光と共に消えていく勇者、そして光が消えて居なくなった。
「さて、どうなったかな?」
ヨウコが画面を映し出す、そこにはいきなり警察署の前に現れて
取り押さえられる勇者の姿があった。
なにかわめいているが声は聞こえないのでわからない、
きっと「俺は勇者だ!」とか言ってるんだろうな。
「これで良かったのかの?」
「はい、ありがとうござる、これで拙者は満足でござる、
ですが亡くなった彼女は無念なままでござろう。」
抱きついているリリスの髪をなでながら、悲しそうな顔でロフスは話す。
マラクはそれを見て又球体に向って何か見ているようだ。
しばらく見ていると、その表情がなにか面白い者を見つけたように微笑む。
「ロフスよ、そなたが愛した彼女を今も想っているのかの?」
「それは・・・」当然と言いかけて、ロフスはハッとしてリリスの方を見た。
リリスは泣きそうな顔をしている・・・すでに瞳は涙が溢れてきそうだ。
「あーすまんすまん、そういうつもりはなかったのじゃの、
いや、縁というものは不思議なものじゃとおもっての、
お主の彼女はすでに生まれ変わっていたのだの。」
「!それは一体どこの誰に?」
「うむ、地球世界での名前は飯野里佳子 という名前じゃの、
そして又そこから転生し今はリリスティア・カルナハスという人物じゃの。」
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別作品で ある戦国武将の後室の物語 というのを書いております。
ジャンルが違いますがよろしかったら見てください。