23話 召喚勇者VS転生魔人 前編
主人公視点ではありません
ロフスの発言に勇者の動きが止まった、「なん・だと・・・」
「どういうことなのじゃ?」
傍に来たリリスが心配そうに問う。
「以前前世の拙者は殺されて転生したと言った事があったでござろう、
そして殺したのがこの松岡翔でござる。」
「こいつは勇者だろう、なぜお前を殺したりするんだ?」
正人が問いかける、理解しがたい事態だからだろう。
「そう、そのときのことは今でも忘れる事は無いのでござる。」
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前世でのロフスこと野川玄気 はオタクな高校生であった、
だからといってボッチだったとかではなくリア充な生活だったといっていいだろう。
かわいい彼女が出来楽しい事はこれからの人生、
だがそれは唐突に終る事になる。
「いやーあの戦車の重量感は凄いな。」
友人と総合火力演習を見に行った帰りに彼は興奮していた、
新型の戦車のお披露目を見ることが出来そのすごい性能を見て、
満足に溢れていた。
時刻はすでに夜の時間になっていて辺りは闇が支配する時間になっている、
人気のない踏み切りに差し掛かったところで友人が口を開いた。
「なあ、玄気。」
「なん・・・」振り返りながらそこまで言葉を開いた彼の目が見開かれた、
そして体にはもの凄い衝撃が走っている。
「・・・!」 立っている事も出来ずにそこに崩れるように倒れる、
動かない体に鞭打って顔を上げると見下ろすようにしている友の手には、
黒い物体があった。
スタンガン、高圧電流で対象を麻痺させる護身用の武器を持った友の顔は、
愉悦に歪んでいた。
「どうして・・・」切れ切れに出した問いに、彼はうれしそうに答える。
「待っていたんだよ、お前をこうする日をな、心配するなよあの娘は俺がいただいてやるから。」
その言葉に目を見開きなおも質問をしようとする、
その時倒れていたレールの上に振動と音が伝わってきた、
まさかこれは・・・
「ははっ来たようだな、これでお別れだ、さようなら。」
そう言って踵を返し去っていく、動こうとしても動けない体に歯噛みしながら彼は思った、
このままでは終われない、きっとこのままにはしておけない。
振動と音とそして光が彼に迫り・・・
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「そうして拙者は死に、転生したのでござるよ。」
その事を聞いていたリリスは肩を震わせて叫ぶ。
「そんな酷いことするなんて!そんなのが勇者など間違いではないのかじゃ?」
「そうだな・・・」正人も不愉快そうに勇者をにらみつけた。
「一つ聞こう、彼女はどうしたのでござるか?」
その問いをかけたときの勇者の顔は醜悪そのものであった。
「もちろんいただいたさ美味しくなあ、
けどよあんまり騒ぐんでお前の後を追わせてやったんだがなあ、
貴様が転生してるなんて思いもしなかったぜ。」
「なんてことを・・・」
ロフスの目から涙が一筋流れる。
そこに勇者が声を被せる。
「だがよお、お前を殺した現場を監視カメラに撮られててなあ、
危うくつかまるとこだったぜぇ、けどよ神は俺を見捨てなかった、
勇者召喚で危うく捕まる寸前にあの世界をおさらばできたんだからよ。」
「だからよ、俺は神に選ばれた{勇者}だ、貴様のような魔人は俺の敵じゃねえ、
さっさと消えるんだなぁ。」
腰の剣を抜き嘯く勇者。
「拙者は負けん、いや貴様を倒してみせる、彼女のためにもな。」
そう言ってこちらも腰の大剣を抜き放った。
「ハッ!この聖剣に叶うと思うのか!」
肉薄し剣を振るう勇者、ロフスはそれを受け流し、大剣を軽々と振り回して切りかかった、
それをバックステップでかわす勇者、だがその攻防は魔人のほうが勝ったようだ、
彼は一気に間合いを詰める。
「な!貴様縮地を使うか!」
思わず勇者も声を上げるほどのすばやさで剣を振り下ろす、
かろうじて聖剣で受ける勇者。
「くっ、生意気な。」
大きく後ろに跳んで間合いを取り勇者は剣を構えた。
その間正人は勇者の付き人たちに話しかけていた、
勇者の行状をどう思うかと、付き従う必要があるのかまで問いただしていた。
「我々は神に選ばれし勇者の従者、そのような些細な事問題になりません。」
なかなか勇ましい言葉とは裏腹に正人は内心動揺があるように感じられた。
その間にも勇者と魔人は剣を打ち合い攻防を繰り返していた。
じれた表情をした勇者が剣を掲げて新たな攻撃を準備する。
「こうなったら奥の手を使わせてもらう、貴様ら全員成敗だ!」
そして聖剣を掲げて叫ぶ。
「出でよ、我が願いし力の持ち主よ!」
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