22話 敵は勇者
お待たせいたしました
ウエルネスト(改) ルアン王都
正人たちは現在特に用事が無い時には王都に詰めている。
{敵}の襲来に備えてである、
転移魔法を使って一瞬でたどり着く事が出来るので、
戦力の分散を避けているのだ。
「とりあえず、こことエスペランサは非常時の対応は何とかなりそうだ。」
ヨウコの発言に俺たちは頷いている。
彼女と鉄鋼王国の技師達の奮闘で、早期警戒網を完成させていた。
異世界転移魔法で侵入してきてもすぐに特定できる優れものだ。
あと、ヨウコの新しく管理する事になった二つの世界の方はそこまでは行っていない。
こちらの二つの世界と違って管理神が大きく関与していなかったからだ。
そのためにごく一部の者だけにコンタクトを取り対策を採っているが限定的だ。
この間のような使徒が来たら絶望的になる。
そのために警戒網をあちらの世界の者たちに気づかれないように用意することしか出来ていない。
「いざとなればバレばれてでもやるしかないが・・・」
「地球世界は行くに行けませんね・・・」
亜由美たちも最悪対消滅しかねないので地球世界に援軍は出来ないという姿勢である。
「まあ、ゴーレムたちの大量投入で対応するしかないな。」
それを見た向こうの人間達がどういう反応するのか一番気になるな。
オリジナルウエルネストのほうも、獣王やミリヤムやクリスたちは行く事が出来ない。
俺たちと同じ理由である。
「まあ、あちらの方はまだましだが。」
あちらは神殿を使って{神託}という形で注意を呼びかけられるそうだ。
「それに新たな使徒の世界への侵攻は現在止まっているから大丈夫かも知れない。」
なぜかは判らないがあれから新たに侵攻してきては居ないようだ、
師匠(筆頭上級神)の推測では、準備段階で発覚したため手駒が少なかったのではということだ。
この世界に魔族を送り込んだ神の失態だが、此方にとっては幸運だったようだ。
「とはいえ油断は禁物だがな。」
そんな事を話していると壁についていたクリスタルが赤く点滅し、警戒音が鳴り響いた。
どうやら、噂をすれば来たらしい。
「異世界転移魔法陣の発動反応です、場所はウエルネスト(改)ルアン王国内、
ポイントは・・・」
きりしまが警戒情報をキャッチして教えてくれる。
「よし!全員で行くぞ、ポイントに転移する!」
俺たちは反応のあったポイントに転移するのであった。
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ルアン王国内トーア平原
転移した先は、かつて王国の穀倉地帯のあった地域である、
魔獣の跳梁で荒れ果てて現在は再建中であるため人の姿は少ない、
その少ない人たちも警報を受けて避難している。
俺たちが転移した場所から離れた処に彼らは居た。
「あれが今度の{敵}かい?」
「みたいだが・・・」
いきなり攻撃されてもいいように俺ははつゆきたちに障壁を用意させて待機させ、
奴らに接触しようとした、するとロフスが「拙者も一緒に。」と言って来た。
「どうしたのじゃ?」
常に彼の傍にいるリリスが不思議そうに問う。
「気になることがあってな。」
普段見せない彼の真剣な表情に俺も不思議に思いながらも同行を許可した。
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「この地に何の用か?」
そう問いかけると、向こうの集団から、若い男が出てきた。
見かけは俺たちと同じ地球人に見える人族だ。
「愚問だな、勇者たる俺様が来るということはこの地にはびこる悪の巣窟を殲滅するのが
お約束だろうが。」
「勇者?お前がか?」
「そうだ、俺様こそ主に認められし勇者、ショウ・マツオカ様だ。」
なんとも自意識過剰な自己紹介に内心呆れてしまうが、
風貌と名前からその出自をたずねる事にした。
「その姿と、名前から地球出身か?」
「そうだ、ただしお前らと違ってオリジナルの方だ、知っているぞ、
お前達は所詮コピーだと言う事を、コピーがオリジナルに叶うわけなかろう。」
その声が聞こえたのか後ろでヨウコが顔をしかめている。
俺もその言葉に反発を覚えて前へ出ようとしたがそれを止めるものがあった。
「ここは拙者に任せてくだされ。」
ずいと一歩前にでたロフスが勇者を睥睨する。
「なんだ、貴様、魔族が何の用だ?」
「相変わらずでござるな、翔、こんなところで勇者なんぞやっているなんて思わなかったでござるが。」
「貴様、俺を知ってるとでもいうのか・・・」
「忘れられるものではないでござるな、拙者を殺したのは松岡翔、お前なのだからな。」
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