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閑話8 雪の降る日に 前編

雪が良く降るので思いつきました。


途中からテレーゼ視点になります


2/8話数が間違っていたのを修正しました。

アウラートゥス の里は比較的温暖なところにある、

とはいっても冬はあり、時々ではあるが雪が降り積もることがある。


今日は朝から雪がちらつき午後からは本降りになって地面を白く化粧していく、

その風景を窓から眺めていてふうっとため息をつく。


「どうしたんだい?」


後ろから声をかけられて外を眺めていたテレーゼは振り向いた。

視線の先には先ほど声をかけたグリーゼがソファに座っている。


彼女は傍まで歩いていき隣に座った。


「雪を見て思い出していたんです、あの日もこんなに雪が降っていたなって。」


「ああ、そうか、そうだったな。」


彼も思い出したようだった、{あの日}のことを。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「国軍に出仕するのを止めたのですか?」


「ああ、里に止まるべきだ、今の情勢ではな。」


テレーゼは急な話に戸惑っていた、元々国軍に勧誘されていたグリーゼが王都に行く事になり、

それではと言う事でテレーゼも王都に出る事になっていた、

王宮に仕えて礼儀作法などの修行に当てると言う事だが、

婚約者のグリーゼのためでもあった。


国軍に入れば短くて五年はいることになるしその間に結婚させて王都で暮らさせようというのが里長たちの考えであったのだ。


だがその計画が根底から覆ろうとしていた。


ここのところ急速に魔獣の数が増えていた、群れで行動する魔獣の群れが巨大化し、

さらに巨大な魔獣の存在も取りざたされるようになった。


襲撃される里も出てきており被害も無視できないほどになってきていた。

軍も出動して魔獣狩りをしているがそれでも安心は出来ない状況である。


そんな状況で里を出る事はどうなのか?


グリーゼはその事でずいぶんと悩んだらしい、

里長も、父である従士長も王都に行く事は反対はしていない、

行けばグリーゼの成長と言う面ではプラスに働くだろうという考えからだ。


ただ、里の若者の束ね役である彼を欠くことに危惧を覚えるものも多く、

周りの意見は賛成反対半々と言ったところである。

そして悩んだ彼が出した結論は王都に行かないと言うものであった。

だが、それは彼女にとっては困惑を伴うものであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「だめだ、認められない。」


「なぜです?決して無駄なことではありません。」


「そういうことじゃあない。」


二人はこの間からずっとこの話で平行線を繰り返していた。


里から出て見聞を広めたいテレーゼと里を守ることを考えて出る事を断念したグリーゼ、

二人をつなぐ婚約はいまやテレーゼにとって自分の足かせにしか感じられなかった。


「里を守る事も大事だと思います・・・でもその先を見据えていくのも長の家に生まれたものの勤めです。」


「魔獣の事が片付いてからでもいいんじゃないか?」


「それでは遅すぎます!」


「俺たちには里を守る義務がある・・・ともかく王都には行くな!」


「・・・ ・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


これで何回目だろう?


彼がこんなに頑なだとは思わなかった、

ため息をつき彼の後ろ姿を見る、鍛錬に向うその後姿は肩に力が入っていた。

私は大樹の下のベンチから腰を上げて歩き出した、

しばらく歩くと見知った顔が見えた。


「カチヤ?」


「テレーゼ姉さま。」


どうやら、さっきのやり取りを見られてしまったようだ。


「心配しないでいいわ、いつもの事だもの。」


「そう・ですか・・・」


心配そうにしていた彼女も私が問題ないと言うと少し安心したようだった。

私は彼女が安堵した表情になったのを確認して、思い描いていた計画を実行に移す決意をしていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


その日、冬に入った里を一段と冷え込みが襲っていた、

空は曇り今にも降ってきそうである。

そして今日は計画実行の日、私にとって重大な日だ。


「行ってきます。」


屋敷をいつものように出て、里の西門にあるバスの停車場に向う。


荷物はいつも遣いに行く時に使う鞄一つだ。


門に向う道で向こうから彼が来るのが見えた。


「行って来るね。」


「気をつけるんだぞ。」


いつもの会話、でもそれも今日でおしまい。

バスに乗り定刻どおりに出たそれは関所を越えて王都方面に向う。

私が降りるのは関所から二つ目のバス停だ。

そこは私達と同族の小さな集落があり、そこの里長の家に行くのが私のお遣いだ。


雪が降り出した、車窓からそれを眺める。


「テレーゼ、良く来たね。」


「おば様こそお変わりなくて。」


親戚筋にあたるおば様の家。

月に一度こうやってこちらに行くのが慣わしとなっている。

伺って遣い物を渡して一晩泊まって帰る。


次の日、白く化粧された世界の中で私はいつものように帰りのバスに乗る。

ここまではいつもと同じ。


次のバス停で降り、しばらく待つと王都行きのバスが来た。

これも計算通りすぐに乗りバスは王都に向う。

もう後戻りは出来ない。


テレーゼが帰ってこないことに不審を覚えた里長が親戚の里に連絡を取り、

色々調べて彼女が王都に向ったのを知ったのは二日後のことだった。



ここまで読んでいただいて有難うございます。


誤字・脱字などありましたらお知らせください。



感想や評価などあれば今後の励みになります


よろしくお願いします。


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