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閑話3 彼女の記憶(メモリー)

はつゆき視点です

 私の名前ははつゆき、かつて自衛隊の護衛艦だった存在だ。

今の私はその任を解かれ、船体からだは解体されて人間で言うところの魂だけの存在になっている。


そのような状態になっても別に驚きはない、過去にも経験があるからだ。

最初は神風型駆逐艦の二十五番艦として生まれ、次に吹雪型三番艦として転生している。

そして、大戦が始まり戦いの中で多くの敵を倒し、仲間を失った。

一緒に行動していた、吹雪や白雪に先立たれ、最後はブインという場所で沈んだ。


その後はこの世界のどこか、私の同類の魂が集うところで漂っていた。

そこにはかつての仲間達が大勢いてさびしくは無かった。

そして、ある日私は再び呼び出された。


「はつゆきと命名する。」


進水式・命名式でその名を呼ばれ軍艦行進曲の演奏される中、私は帰ってきた。


今度は、はつゆき型一番艦、ネームシップとして。


その後は、戦争も無く、前世のような「第四艦隊事件」のような事故にもあわずに、

淡々と任務を勤めてきた。

前世の数多くいた姉妹達のうち一緒になったのはしらゆきだけだった。


そして任務を終えて廃艦になりまた戻ってきた。

そしてそのまま次のお呼びが掛かるまで半ば眠ったような状態のままでいるはずだった。


だが、ある日私の中に侵入してきたものがいた。

それはもう一人の「はつゆき」だった。

私の中に彼女の記憶が入っていく・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 上空に対峙する二人、正人と{使徒}と呼ばれるものだ。

あれを見たときに悟った。

{予見視}で見た光景だという事に。

阻止しなくてはいけない、あの結末を、書き換えなくてはいけない、未来を。


「しらゆき、正人の所に行くよ!」


「判った、もしかしてこれがそうなの?」


「うん、急がないと!」


そう言って私は群がる敵を切り裂いていく、近くではさざなみとまきなみも戦っている。


どうやら、ロフスやリリスの召喚部隊も、亜由美達も来た様でこちらは心配ないようだ。


「はぁぁぁぁぁ!」


すずなみが重装歩兵と戦っている、切りつけた剣が歩兵の鎧を半分まで切ったところで、

パキィィィィィィィィィィンと折れてしまった。


「しまった!」


反撃しようとする歩兵を両断する。


「姉様!助かりました!」


感謝するすずなみに鞘に収めた天羽々斬 を手渡す。


「姉様?」


「使いなさい、ここは任せるわ、まきなみも頼むわね。」


「はい!ありがとうございます!」  「了解、敵は撃ち砕く。」


手渡した時に天羽々斬 の所有者をすずなみに書き換える。

大事に使ってね、すずなみ。


しらゆきの手を握り彼女に声をかける。


「打ち合わせ通りにね。」


「判っている、そちらこそ無理はしないでね。」


ごめん、無理しないと護れないの、恐らく未来はそうしないと書き換えられないから。

そう思いながら転移を発動する。


正人たちの上空に転移する。

しらゆきと分かれて正人と使徒との間に割り込む、その前に相手の力を受け流すように、

円錐形の障壁を展開して、さらに兵装を呼び出して降下する。


使徒の攻撃を受け止める事ができた。


だがものすごい力だ、ポーチに入れている魔力石の魔力がどんどん減っている。

このことに備えて他の娘達の三倍の量を用意したのに。


後ろでは正人がしらゆきと攻撃の準備をしている、早くしないとこちらが持たないよ。


ついにポーチの魔力石の魔力が無くなった、後はリングの魔結晶と私の魔力だけだ。

後ろで強大な力を感じる、反撃の光槍が形成されているのがわかる。


そして魔結晶も枯渇して、私の魔力だけになった、そしてもうすぐそれも終る。

目の前に浮かぶのは今までの思い出の光景、お約束の走馬灯シーンね。

すべて、正人との思い出、一緒に笑った事、食事した事、愛し合った事。

ああ・・・もう魔力が尽きたみたい。


頭の上を光が奔る、光槍が敵に向ったんだ。

私は振り返る、正人としらゆきが見えた。

私は微笑んでいた、さよなら正人、あとはたのんだよしらゆき・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


記憶をなぞりながら彼女の話を聞く、神によって分けられたもう一つの世界の私。

彼女は神との修行で強い力を手に入れていた。

そして彼を護るために命を懸けた事も。


私は、それに聞き入りながら彼女がうらやましかった。

人の作りし{物}である私達、でも彼女は人である彼と共にいた。


私は尋ねた、「彼の傍に戻りたくはないの?」


「戻りたい、又彼の傍に行きたい。」


この状態で私が彼女を拒絶すれば彼女は消滅するだろう。

彼女の世界はもう無いのだから。

でも。


「判ったわ、では私と一つになりましょう、そうすればここに止まる事が出来る、

そうすれば彼が貴方を召喚すればまた傍に行く事が出来る。」


「いいの?」


「いいよ、貴方も私も{はつゆき}だから、一緒に生きよう、そして帰ろう彼の元に。」


「ありがとう。」


そして{融合}が行われ私たちは一つになった。


早く迎えにきてね、正人。



誤字・脱字などありましたらご指摘お願いします。


励みになりますので、感想、評価お願いいたします。



{用語解説}


「第四艦隊事件」


1935年(昭和10年)に起こった台風による海軍の艦艇が大損害を受けた大規模海難事故

詳しくはwikipediaで検索を。

初雪は艦橋付近より前が波により破断して失われ54名の殉職者を出した。


吹雪


吹雪型駆逐艦一番艦、でネームシップ。

白雪、初雪と一緒にいたことが多い、吹雪>白雪>初雪の順番に戦没した。

護衛艦には名前が付けられていない。



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