15話 慟哭
タイトルの字が違っていたので変更しました。
その瞬間世界から彩が消えたような気がした。
「そんな、うそだろ?」
俺は自分のポーチの中のカードホルダーを探る。
そこには本来無いはずのカードが残っていた。
はつゆきの召喚カードだ。
(再召喚すれば彼女は戻ってくるはず・・・)
俺は魔力をカードに送る、カードが光って・・・何も起らない!
「そんな馬鹿な!なぜなんだ?」
もう一度、さらにもう一度、さらに・・・
「もうやめて・・・いくら繰り返しても彼女は戻ってこない。」
俺の腕をつかむのはしらゆきだ、見ると、涙でひどい顔になっている。
「はつゆきが俺を置いていく訳がないんだ、きっと戻ってくる。」
そう言って反対の腕で再度カードを使おうとするとその腕を掴む者が居た。
「正人さん、もうやめてください、現時点では召喚は不可能です。」
クリスが悲しそうな顔で言った。
「放してくれ、俺ははつゆきを呼ばなければいけないんだ。」
「そのカードはもうはつゆきさんとは繋がっていません、いくら召喚してもだめなんです。」
手からカードがはらりと落ちた。
その場にひざを付く。
そして。
「そんな・・・そんなそんなアアアアアアアアーーーーーーーーーー」
俺は、叫んでいた。
戦いは終った、ロフスとリリスの召喚した部隊と到着した亜由美たちの参戦で、
白銀の軍団は壊滅した。
そしてアグサスを倒した事で、こちらの勝利が確定した。
だが、その代償は取り返しがつかないものだった。
俺は、かけがえのない存在を失った。
彼女の残したものは俺が贈った魔結晶のついたリングと変身用のリング、魔法のポーチなどだ。
俺はそれを持つと、ふらふらと立ち上がり魔法を使う、目の前に白い扉が現れた。
「しばらく、一人にしてくれ。」
そう言って扉を開け中に入る。
隔絶空間の白い世界で俺はさらに魔法を使う、{奥の院、機能開放、時間停止。}
さらに目の前に扉が現れ中に入る。
その中で俺は座り込んだ、何も考えられない、自分でも俺らしくはないと思ってはいるが、
どうしようも無いのだ。
ふと、手に持ったリングとポーチに目が行く。
リングを贈った時、彼女は非常に喜んでくれた。
その時の笑顔が目に浮かび、切なくなる。
俺はリングを自分のポーチに仕舞う、そして彼女のポーチを開けた。
中に入っていたのは大量の魔力石だった。
それで、あの攻撃に耐えていたのか・・・
それと一緒にはらりと一枚の紙が落ちてきた、見ると封書のようである。
表には、俺の名前が書いてある、どうやら俺宛の手紙らしい。
震える手で開けていく、中に入っていた便箋には丁寧に書かれた彼女の文字が綴られていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この手紙を貴方が読んでいるという事は、私はもう居なくなっているということなのでしょう。
このような形でお別れを告げる事に私も不本意なのですが、
私にとって貴方を護る事は最上位任務となっているのです、
そして、この手紙を貴方が読んでいるという事は、任務が成功したという事なので、
任務を達成した喜びに私は満足しているとお考えください。
黙っていましたが、私には未来が垣間見えるスキルがありました、
その力が貴方の危機を教えてくれました。
ですが心配はしていません、以前の経験から、
然るべき代償を払えば、それは回避できますから。
ここまで読んで彼女がなぜ盾になったのか気が付いた、
代償、つまり身代わりを務めようとしたことだ。
そしてその目論見は成功したのだ。
俺は、のろのろと手紙を持ち続きを読み始めた。
私がいなくなっても悲しまないでといっても無理かもしれません、
ですが、貴方の周りには貴方を愛する者達がたくさんいます、
きっと、貴方の悲しみを受け止め、分け合ってくれるでしょう。
そうすれば貴方の悲しみをやわらげられる事が出来ると思います。
貴方には大事な人が傍にいてほしいから。
その言葉を見たときに、彼女がなぜハーレム状態に容認だったのか知った。
自分がいなくなったときに俺が一人にならないように、
家族を失って孤独になった俺が再びそうならないように、
考えていてくれていたという事に。
でも、本当は、もっと一緒にいたかった・・・
召喚されて貴方に会って私の世界は変わっていった。
「物」であるはずの私が、「人」である貴方と寄り添って生きる。
そんな時間がいつまでも続けばいいのに・・・
手紙はそこで終っていた。
きっと最後まで書く事が出来なかったのだろう。
俺は、手紙を握り締めて突っ伏した。
涙が知らずのうちに溢れてくる。
「俺も、ずっと一緒にいたかった・・・」
その声は閉ざされた空間に消えていった。
ここまで読んでいただいて有難うございます。
誤字・脱字などありましたらお知らせください。
感想や評価などあれば今後の励みになります
よろしくお願いします。