10話 襲来
主人公視点ではありません。
{西の領域}と呼ばれる地域がある。
神々の集う{神殿}から見て西にあるのでそう呼ばれているのだが、
この地域の世界は比較的歴史があり、そこに住む住人もレベルが高いとされている。
そこのとある世界に異変が起ころうとしていた。
西の領域の束ねをしている上級神のところに従者が駆け込んできた。
「大変です!世界が、世界が!」
「落ち着きなさい、何があったのです?」
「あ、ええ、・・・世界が破壊されて行ってます!」
「なんだって!」
直ちに管理室に入り映像石版を映すと、そこは地獄のような有様になっていた。
大地は焼かれ、人々は逃げ惑い倒れていく、そこに降り注ぐ破壊の光。
上空にはこの破壊の限りを尽くした者たちらしい姿がある。
そこに向って反撃するものも居るようだが、あえなく返り討ちにあっているようだ。
「・・・ ・・・」
呆然として言葉も出ない上級神に従者はかぶせるように言う。
「この世界だけではありません、少なくとも同時に十以上の世界が攻撃を受けています。」
そして映像を切り替えると、別の世界が写った、そこの世界は文明レベルが高いせいか、
すでに宇宙に艦隊を配置できるほどであったが、その艦隊が何者かと戦っていた、
戦況は不利で、宇宙艦は次々と火球になって消えている。
「あの世界まで・・・ありえない。」
比較はしたことは無いが今映し出されている世界は間違いなく{西域}最強の世界のはずだ、
それがああも簡単に蹴散らされているなんて悪夢のようである。
悪夢をはらうかのように艦隊後方から大型艦が現れ、反撃を開始する。
高出力のビームが見慣れない敵を薙ぎ払っていく、
だがその先には銀色に輝く巨大な物体が控えていた。
「何だ?あれは・・・星?」
上級神がつぶやくとその{星}の表面に漣のような輝きが現れその直後石版の画面が真っ白になった。
しばらくして元に戻ったが、その時には大型艦を含む艦隊は消滅していて・・・
その背後にあった星、世界は燃えていた。
「何が、一体なにがあったんだ!」
上級神の叫びに誰も応える事は出来なかった。
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「{西域}と{南域}で同時にか。」
{神殿}で上級神筆頭は筆頭従者から報告を受けていた。
「はい、すでに両域で四十以上の世界が破壊、或るいは崩壊しています。」
「そしてその他の世界にも魔獣や怪獣の類が襲来しているか。」
「その通りです。」
「・・・全域の上級神に伝達、非常事態宣言だ、
この世界に対する重大な侵略の恐れありと伝え、
各自防衛体勢に入るようにだ。」
「了解しました。」
すぐに手配しに行く筆頭従者。
「これほどのことが同時に行える者が存在している? ありえないことだが・・・」
しばし沈黙し思考する筆頭であったが、目の前の端末石版を操作し始めるのであった。
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「正体不明の敵ですか?」
「そうだ、我々も相手が何者なのか判っていない、厄介な相手だよ。」
上級神筆頭と話しているのは正人である。
はつゆきとヨウコも傍に居る。
映し出されているのは先ほどの艦隊が戦っている映像だ。
「これほどの艦隊が敗れるなんて・・・」
ヨウコも呆然とした顔をしている。
はつゆきはいつもと違い険しい表情を崩さない。
「それで、我々の世界にもこれが侵攻して来ると?」
正人が問う。
「恐らくね、いや必ず来るだろうね。」
筆頭は確信があるみたいである。
「そういう想定で対処して欲しい、{北域}では君たちの世界が狙われるだろうから。」
「判りました。」
「すまない、我々は被害を受けている地域の支援で一杯なんだ。」
「詳細な情報は従者たちから送らせるから、頼むよ。」
そうして通信が終わり、正人たちは皆と相談するために隔絶空間から出るのであった。
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「備えですか・・・」
誰とも無しにつぶやく。
皆を集めた会議の席ではともかくも防衛のために全力で当たることが決定された。
「地球世界とウエルネスト(オリジナル)世界の方は私から働きかける、そのためにしばらく留守するがよろしく頼む。」
ヨウコがそう言うと、皆頷いた。
「奴らが何者で何を狙っているのかは判らない、だが確実に言えるのが、襲われた世界は確実に破壊の限りを尽くされているという事だ。」
送られてきた映像は皆が目を背けるような酷い光景だった。
「こんな事にはさせない。」
ヨウコが真面目に言うのも非常に珍しいのだがその事を誰も突っ込まない、
それだけの余裕も無いというところか。
「前倒しだが、宇宙戦用のゴーレム部隊も配備する、ステーション{メタトロン}の実用化も急がなくては。」
それに、技術班のリーダーである木原綾芽が応える。
「{メタトロン}は実用化は大丈夫です、実戦投入できます! エスペランサの{メタトロンⅡ}も工程八十九%ですが実戦投入可能です。」
「そうか、すまないが配備を急いでくれ。」
「了解しました。」
「もっとも、いきなり地表に転移してくる事例もあるから気休めに過ぎないんだが・・・」
ヨウコのつぶやきは小さくて皆には聞こえなかったようである。
はつゆきに代わってしらゆきが式神たちに言う。
「先だっての話の通り、各自戦力の充実を目指してくれ。」
その言葉に頷く彼女たち。
そして、会議が終わり、解散していくところで、はつゆきが正人を呼び止めた。
「私たちは、エスペランサにいたほうがいい。」
「・・・そうだな、そうしよう。」
彼ははつゆきが{予見視}を使えることは知らないが、このように断定して言う時には従うようにしている、
それには根拠がきっとあるはずだから。
その光景を見て、そっとため息をつくしらゆきであった。
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