3話 再生への歩み
ルアン王国北部{陥落地区}
「もうちょい右!あと少し!OK!どんぴしゃよ。」
スコープを見ながら亜由美がOKを出す。
「よーし、{アースドリル}起動!掘削開始!」
支持台の上にマウントされたドリルが回転し始め地面に下ろされた、
そのまま地面に穴を掘って潜っていく。
「深度10、15、20・・・50メードに到達。」
「目標まで障害物なし!」
「深度100に到達。」
「アンカー打て、固定作業開始!」
「固定剤散布」
「固定完了、{杭}の起動テスト開始。」
「起動チェック!オールグリーン、起動成功!」
「OK!お疲れさん、ここでの任務終了だ。」
俺は皆にサムズアップして終了を告げる。
亜由美や美奈と機材の片づけをしていたら、はつゆきたちがやって来た。
「周辺の魔獣の駆逐も終了した、三千位はいたかな?」
「おつかれ、ご苦労さん。」
帰ってきた皆をねぎらう。
「後は世界樹の移植場所だが・・・」
そこへいいタイミングでクリスがやって来る。
「場所が決まったわ、こちらよ。」
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「ここか・・・」
この地域は余り木が生えておらず開けたところであった。
クリスが選んだのは{魔素溜まり}の中心部分である、
こういう場所はなぜか木が生えにくいようだ。
すでに世界樹の苗が植えられており、
周りに妖精の結界が張られている。
「後はドライアドに森を作ってもらうだけね。」
そう言ってクリスはドライアドを召還する。
「おひさしぶりー」とドライアドが現れる。
森を作ってもらうように頼むと「魔力もらえればいいよー」とある意味予想通りの返答。
「うっううううぅん・・・」 魔力を吸われていくと回りに木が生えてきてたちまち大木になり、
気が付いたら小さな森ができていた。
吸われた魔力は今まで最大値・・・だと思う。
すぐに回復するけどね。
「これで完成、後は里を作るだけね。」
世界樹の成長と共に森も成長して最終的にはハーミットのようになるそうだ。
とりあえずここの守備隊としてハーミットから来たエルフたちと、
艦隊から分派した部隊で護ることになる。
魔獣はあらかた駆ったのでそう心配はしなくてもいいだろうが。
「さて、後はマルキリウス諸島だけだな。」
「転移で行くのは明後日にしよう、明日は出立の準備と休憩だ。」
ヨウコが話を締めくくった。
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「この後の身の振り方か・・・」
一緒にセーフハウスの中に居るのはヨウコである。
話しているのはいわゆる「その後の勇者」である。
せっかく世界が救われるのに、勇者の存在でまた世界が混乱することも考えられる。
そんなことにはなりたくないのである。
「ここのような世界樹の守護をすることが一番いいかもな。」
「私は管理神としての勤めをしながら神殿で巫女でもやってることになるだろうな。」
そのほうがよさそうだ。
「だが、お前はそうもいかんぞ、なんせ次期獣王にルアンの女王の王配なのだからな。」
にやっと笑うヨウコに俺は肩をすくめた。
「悪目立ちしすぎたからな、仕方ないさ。」
「けど・・・」
ヨウコはソファーに座っている俺の隣に座り体を預けるようにして言った。
「お前が来てくれてこの世界は救われた、それには感謝している。」
「皆ががんばったからだよ。」
「それも、お前が居たからだ私も・・・そうだった。」
彼女は肩を寄せ手を重ねる、そして上目遣いに俺を見る。
「これからもずっと傍に居るから、離れないでね。」
俺は言葉で返事する代わりに、彼女を抱きしめるのであった。
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