1話 神々の集い 前編
四章スタートです
主人公はいきなり出てきません。
神々の管理する{世界}の中心にそれはある。
関係者は単に{神殿}と呼んでいるそこでは会議が開かれようとしていた。
「皆さん、お久しぶりです、直接会うのは何周期ぶりでしょうか?」
「そうじゃのう、二周期ぶりかのう?」
白いひげを長く伸ばした老人が答える、
二周期とはこちらの神殿が存在する世界が恒星を巡る周期だが
一周期が五十年くらいであるので百年位前のはなしである。
もっとも彼らにとってはあっと言う間のことらしいが。
「まあ、皆忙しいからの、どうしても映像による会議ばかりになるからの。」
こちらは小柄な見かけはゴスロリな格好をした少女だが見かけ通りの存在では無論無い。
そうして会議が行われる部屋の中に段々と神たちが集まっていく。
「筆頭、お久しぶりです、といっても先日お話したばかりですが。」
「ああ、だが直接会うのはやはり違うものだからね。」
「ですね。」
筆頭上級神に話しかけたのは、穏やかな雰囲気を纏った青年である。
「まあ、会議が終ったら旧交を温めるという事でね。」
ジェスチャーで会議の後のお楽しみを表現すると、青年はクスリと笑った。
「あいかわらずですねえ、ええ、お供させていただきますよ。」
和気藹々と話をしているとそこに絡んでくるものが居る。
「のんきなものですな!筆頭ともあろう方が、遊ぶ事だけですか!」
そう言って睨んでいるのは鎧を纏った武人然とした男である。
「南の・・・相変わらず暑苦しそうだねえ。」
「な!そんなに着込んではおらんわ!」
「いやいやいや、装備の話じゃないから・・・」
流石の筆頭も苦笑いで答える。
「皆様方もそろわれた事ですし、そろそろ始めてもよろしいのでは?」
傍に控えていた筆頭従者の言葉に{ナイスタイミング!}と心の中でつぶやきながら、
彼は立ち上がると宣言した。
「そろそろ始めようか、『定例会議』を。」
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まず行われたのは現状報告、こういうのはどこの会議でも変わらない光景である。
神の世界にも入れ替わりや代替わりがあるので必要な事なのだ。
それが終ると早速筆頭に噛み付いてきた者が居る。
「筆頭!ダークコロッセォの摘発からどれだけの時間が経って居るのですか!」
「いやあ、なかなか巧妙でね。」
「ふん!聞けば前回の臨時会で議題になった貴方の弟子は
自分の世界の修復を未だになしておらぬ様子、
禁忌に触れた者をかばうのがそもそもおかしい、
師匠が本来なら処罰されるべきでしょう。
そういう者が弟子で配下というのが問題なのではありますまいか?
さっさと引退して後進に道を譲られるがよろしかろう!」
その発言に主をバカにされたと殺気を放つ筆頭従者。
「なんだと、我が主を愚弄するか!」
両者の間に不可視の火花が散る。
「よしなさいよ。」
手を挙げて従者をなだめ、先ほどから口撃してくる上級神{南の暴風神}の二つ名を持つものに向き直る。
「まああの不肖の弟子は困った奴でしてね、
あんな欲望や煩悩に忠実な奴は見たことがないですな、
ですがあのようなものでも一つだけ持っているものがあります、
それはあの者が常に一生懸命に自分の管理しているものたちを慈しんでいることですよ、
それだけは誰にも負けないでしょうな、
命を玩具にするダークコロッセオをやっている連中なんかとは比べ物にはなりませんよ。」
「・・・・・・」
「そして、彼女はやってくれました、誰も出来なかった事をね。」
「なにをしたのかの?」 ゴスロリ少女の姿の上級神が尋ねる。
「つかんだんですよ、ダークコロッセオにつながる手ががりをね。」
その言葉に、会場はシンッと静まり返ったのであった。
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ここからは筆頭の独壇場になった。
「まずはこれをごらんあれ。」
手元の石版に手を触れると、皆が座るテーブルの上に映像が浮かび上がる。
「この映像は先日手入れに入ったところだ、この世界の勝者は魔族だったな?」
筆頭従者が補足する。
「魔族:デザインナンバー〇二二二四七グリーン・アルファです。」
「そして先日彼女の管理する世界に侵攻してきた異世界の魔族。」
戦っている魔族の姿が映し出される。
「デザインナンバー完全に一致してます、同じである確率九十九%以上です。」
参加している上級神たちはテーブルの上に釘付けである。
「そして、これらを影で操っていたものがこれです。」
石版の別のところに手を触れると映し出されたのはある神の姿、
そしてその顔に真っ先に気が付いた本人は呆然としていた。
「馬鹿な!ありえん!」
さっき筆頭に暴言まがいの非難をしていた{南の暴風神}である。
映し出されていたのは彼の弟子で配下の神であった。
「いやー魔族たちに{神託}を送ってるとこを押さえるのは大変だったんだよ、
まあ、侵攻の方も彼女の仲間が無事に跳ね除けたけどね。」
そうして合図を送ると外から扉が空き彼の従者たちが現れた、
皆屈強なものばかりで筆頭従者と同じく上級神クラスの者たちも居る。
「さてと、弟子の不始末は師の責任だそうだから、
遠慮なくお話聞かせてもらおうかな?」
「ま、待ってくれ、俺は何も知らん!やつがあんな事をしていていたなんて!」
「そうも行かないんですよね~」
「ちょ!まって」
「な・ん・て・ね」
いきなりセリフの雰囲気を変える筆頭上級神、
会場の皆あっけに取られている。
「実はね、関係者はほとんど捕縛しちゃったんだよね。」
石版の別の箇所を押すとテーブルの画像が一気に増えた、
「最初の奴がうかつな奴でやり取りしたログなどを残していたみたいなんだ。」
そして、決定的な言葉を口にする。
「そう、そして元締めまでたどり着けたんだ、そしてそいつはこの中に居る!」
彼の声は静まり返った部屋に響いた。
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