閑話13 死神と呼ばれて・・・(後編)
影山家の家の裏に訓練場がある、一見倉庫のような作りであるが
中は彼ら一族が生業とする諜報、暗殺などの訓練をする施設が入っている。
その中の格闘訓練場に美月たちは来ていた。
「さて、{魔法協会}とやらで身に着けた力見せてみよ。」
向かい合う形で父親は言う、片手には訓練用の模擬刀を持っている、
仕方ないという感じで美月は変身リングに魔力を送る。
リングが光り、彼女は戦闘防護服に変身する。
黒を基調としたフリルつきのメイド服で髪型もツインテールに変化した。
「あらあら、似合ってるわ、そちらのほうがお母さん好きねえ。」
少し離れたところで見ていた母親が感想を漏らす。
「なるほど、それが{魔法少女}の装備ということか、面白い。」
「では、その秘めたる力見せてもらおう。」
「いいよぉ、見せてあげるねぇ。」
{シャドウ・ウイップ!}
影が伸び無数の鞭となって父親に迫る。
「笑止!」
それを模擬刀で迎撃する父親。
「じゃあ!{シャドウ・チェインソウ}!」
今度は伸びた影の先端部に回転する刃が現れた。
「やるな!だがまだまだ!」
影には影とばかりに自分の影をハンマーのような形に変化させてチェインソウを弾き返す。
「その位か?{調査室}をやめてまで行くような所だったのか?」
挑発に対して彼女は平静だった。
「まあこのくらいじゃぁ、変わんないかぁ、あれやるしかないかねぇ?」
そう言うと、彼女の纏う魔力の質が変化した。
「む?これは!」
莫大な魔力が美月から迸り彼女の戦闘防護服が変化していく、
黒以外の部分がすべて黒色に染まっていき完全に漆黒のドレスになった。
そして彼女の影からせり上がってきたのは漆黒の大鎌である。
「なに?その装備、まさか?」
初めて父親の声に動揺が見られた、彼にはあの装備に見覚えがあるかのようである。
大鎌を手にした美月はそれを軽く振り構えを取った。
「これが{魔法協会}で身に着けた技だよぅ、死なないようにしてねぇ。」
そう言うと、その瞬間彼女の姿が消えた、直後父親の背後に現れる美月、
父親が辛うじてかわした空間を漆黒の鎌が切り裂く。
「なんということだ、まさかこの技は?」
どうやら動揺が激しくこれ以上は手合わせは無理なようだ。
「そこまでね、二人とも。」
ナイスなタイミングで母親の制止が入ったのだった。
「ご先祖様が使っていた技ぁ?」
変身を解き先ほどの部屋に戻って話したところ「中興の祖」と呼ばれる人物が
美月のような技を使っていたという言い伝えがあるということだった。
その祖先は仕えていた皇家に仇なす意図が明確になったある戦国武将を
武将が滞在していた寺で当人とその配下すべてを一人で討ち取ったのであった。
その先祖の二つ名が「死神」というものであった。
それ以来同じ技を使えた者はいなかったらしい。
「お前の技はまさに{死神}にふさわしい!」
父親はそう言うが死神呼ばわりは無いわぁと思う美月であった。
「それで、挨拶に行くのはいいとしてテンプレな対応は無いだろうな?」
「んーたぶん大丈夫だよぅ。」
あれから数日経って、スカウトから帰った正人と実家に向かう美月である。
正人は良くある「俺を倒していけ」がテンプレイベントで起こるのを警戒していた。
ところが着いて部屋に通されると。
「娘を頼む。」
その一言を言って頭を下げる父親の姿であった。
(どうなってんだ?これ?)
(さぁ? どうしたのかねぇ?)
それをにこにこと見守る母親。
「驚いたでしょ?あなたの力は大体わかってるから、あなたなら美月や他の娘も護れるから。」
どうやら、正人のことを調べつくしたようだ。
(すげーなこの情報力)
正人は素直に感心していた。
その後それ以上の情報力を持った組織を知って上には上があると思ったのは余談である。
正人と美月は現在セーフハウスのベッドの上にいる、
先日の貴族討伐作戦の時の美月の戦いの話から先ほどの回想につながったのだった。
「なるほど、あの時そういうことだったのか。」
「えへへぇ、おどろいたでしょ?あの時はぁ。」
「まあ、なんで?と拍子抜けしたけどな。」
貴族を殺った時のあの姿を見せられれば流石にああなるかと納得した正人であった。
「だけどな・・・」
「なあにぃ?」
「こっちに来て良かったのか?ほんとは・・・」
その言葉を続ける前に最終兵器がその口をふさぐ。
「いいんだよぉ、好きな正人と一緒に居られる、そのほうがいいんだからぁ。」
そうして彼女はいたずらっぽく笑うのであった。
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