閑話12 死神と呼ばれて・・・(前編)
異世界への旅立ちの日が近くなったある日、影山美月はある場所へ向かっていた。
(融合されて無くなる世界といってもねぇ、挨拶無しは無いだろうしねぇ。)
だが正直な所余り足を運びたくは無い場所であった。
(でも、行かないと後悔することになるだろうねぇ。)
足取り重く向かうのであった。
「ほう、我が家の敷居をまたぐ度胸がまだあったとはな、褒めてやろう。」
玄関に仁王立ちしているのはこの家の主である。
「そりゃどうもぉ。」
「話くらいは聞いてやる、上がるがいい。」
「ただいまぁ。」
久々の帰省であった。
「異世界だと?」
「そうでえすぅ、こことは別の世界ですぅ。」
「その位判るわ!」
異世界に行く話し自体は理解してもらえたようだが、
それについての可否は別物だろうと当たりをつけている美月であった。
「許可できんな。」
ばっさりである。
「あうーっ!そうなると思ったよぉ。」
「あきらめろ、現実を見るんだ。」
「現実をしっかり見た上でのお話なんだけどなぁ。」
「どこがだ!」
言い合いになっていると奥から「あらあら」と言いながら
お茶とお茶請けを持った女性が出てきた。
「あなたが異世界に行くのは彼が行くからなのね。」
奥にいたのに会話を聞いていたのは流石に美月の母親だけのことはある。
「そうだよぉ、あるぇ?正人のこと話したっけぇ?」
「そのくらいのことはお見通しよ。」
にっこりととんでもないことをさらりと話す彼女であった。
「流石、母上だけのことはあるねぇ。」
会話に興じていると、お向かいに座っていた主、
美月の父親から黒いオーラのようなものが見えた。
「おい、美月」
「はあぃ?」
「正人を連れて来い!」
「んー今は出かけてるねぇ、オーストラリアの近くにいるんじゃなぃ?」
そう、ちょうど式神スカウトの旅に出ていたのであった。
「正人に会ってどうするのぉ?」
「知れたこと、斬る!」
いつの間にか日本刀の業物を手にしている、しかも抜刀している。
「お父さんたらせっかちですねえ、まだお呼びしてもいないのに。」
母親の飄々とした態度が彼女が大物であると証明している。
「そうだよぉ、帰ってきたら挨拶に一緒にくるからぁ。」
そういいながら美月は父親が「娘を連れて行くなら俺を倒していけ!」という
テンプレなシーンをしたいのかと思っていた。
「では、訓練場に来い、お前の覚悟を見せてもらう。」
どうやら、素直には帰してはもらえないようだ。
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