閑話9 同志
33話から34話の間くらいのおはなし。
「ふぉぉぉぉぉぉぉ!すごいでござる!」
新しく仲間になったロフスが興奮して叫んでいる。
ここは鉄鋼王国のゴーレムの試験場だ、
先日の戦闘で使われたものをこちらに戻して並べている。
壊れたものは修理が効くものは工場に持っていっているようだ。
オタクなロフスにとってここは宝物庫よりも価値のある場所だろうな。
「まさか{大鉄人}の実物大を見れるとは!」
No17と18の前で叫んでいる、元ネタ知ってるのか?
「もちろんでござる、必殺技がグラビトンといって超重力で敵をつぶすのでござる。」
それでグラビティコアを使って擬似ブラックホールまで作ったわけか。
その話をするとますますそのオタク魂に火がついてしまったらしい。
「そこまで完璧に再現するなんて感動でござる!」
涙まで流さなくても・・・皆ドン引いてるぞ。
のじゃ・・・リリスは別のゴーレムの前で興奮していた。
「すごいのじゃ!あの{蒼}が見られるなんて感動なのじゃ!」
そのゴーレムは五傑の襲来のあと工場からロールアウトしたものだそうで、
初めて見る機体である。
全高は十メートルと小型である。
蒼いボディーに魔導ライフルを持ち背中には大型のスラスターパックが付いているが、
交換式になっていて砲戦型、陸戦型、さらには大気圏外での使用もできるようになっている。
「これも{マキシマムVシステム}を再現してるのじゃろうか?」
「もちろん!完璧だ!」
ヨウコのドヤ顔が眩しいくらいだ。
「モデルもここに居るしな。」
そう言って俺を見る、ああ!魔力を纏ったのを真似たのか。
「ほえ!なんとそんなことができるのじゃ?」
「そういえばあの時蒼い光を纏っておられたでござるな。」
ルアン王都での戦いのことである。
「機体の外に余剰魔力を放出することで攻防一体のフィールドを展開できる、
もちろん魔力の消費が激しいので頻繁には使えないが。」
「感動したでござる!師匠と呼ばせてもらうでござる。」
「同感なのじゃ、感動をありがとうなのじゃ。」
がしっと手を握り合う三人、感動的なシーンなのだが皆はそうは思わないようだ。
「なんか怖いです。」
「私もそう思う、不穏な雰囲気よ。」
リアンナとクリスは恐怖を感じたようだ。
「復興が遅れないといいけど。」
「レベルの高いもの同士合い通じたのかな?」
「なんかドン引くねぇ。」
亜由美や美奈、美月も異様さを感じていた。
「何か良くわからんが仲良いことは良いことじゃな。」
「違和感はありますがいいことでしょう。」
ミリヤムはオタクを知らないので平気である。
テレーゼも鋭いので感じるものがあるらしいが悪いことだとは思ってないようだ。
周りの目を気にせず盛り上がっている三人であった。
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なぜか{蒼}の試運転を頼まれた、解せぬ。
「分身で操ってよ!」
ヨウコに頼まれた、めんどくさいが後が怖いので言うとおりにしよう、
今晩は彼女の番だったし。
コアに分身を送り込み起動させる、スラスターに火が入り飛び立つ。
近くの射爆場に向かい標的に向かってライフルを発射する、
連射性に優れていて的を次々と破壊する。
ここで必殺技とやらを試してみることにする。
{MAXIMUM Vシステム起動!}
すると機体の回りに蒼い魔力を帯びて出力が上がった。
そのまま標的に突っ込む、
標的は魔力フィールドに触れるとバラバラになった。
(すごいな!) 分身の俺が驚いている。
しばらくすると稼動限界が来て動きが止まる、
各稼動部が熱を持ったので冷却に時間がかかるようだ。
「この状態だとやられてしまうな、こうなる前に敵を全部倒さないといけないわけか。」
俺が問題点だと思ったところを指摘したが、
彼女たちは違う視点のようだ。
「やはりこの紙一重なところが萌える。」
「リスクがあっても使うのが心意気でござる。」
「やっぱり{蒼}はいいのじゃ、私も召還するのじゃ!」
結局彼らの盛り上がりがすごく、俺を含めみんなあきらめ顔になった。
早く復興にかからなくてはならないのに。
俺はため息をつくと分身の俺が動かす機体を見上げるのであった。
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