32話 戦後のあれこれ
転移した先は激しい戦闘の爪跡が残る戦場の中心だった。
見ると分身が入っているゴーレムの前でヨウコが騒いでいる。
「俺ガンキタコレ!」
やっぱりか・・・
「何やってんだ?」と聞くと、こちらを見て驚いたようだった、
皆こちらを見つけて集まってくる。
しらゆきとあたごが来たので「お疲れさん、良くやってくれた。」とねぎらった。
「私たちよりも皆が奮戦してくれたからです。」
「今回は負傷者も多いので見舞ってやってください。」
「判った、そうしよう。」
その前に分身を回収しなくては。
「えーこのままにしておいてよ!」
ヨウコが抵抗するがそういうわけにも行かないのである。
ゴーレムに触れコアの中の分身を回収する。
そうすることでこちらでのことが判ってくる。
最後にヨウコがやったゴーレムの攻撃には流石にあきれた、
擬似マイクロブラックホールなんて危険すぎる。
「いいじゃん!敵に引導渡したんだし!」
「駄目だ、過剰な力の行使は世界の崩壊を招くぞ。」
こっちも普段はリミッターをかけているのはそういうことなのに。
「向こうはどうなったんですか?」
テレーゼの質問に俺は今までのいきさつを話した。
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「スコープ○ッグが居たの!見たかった!」
ヨウコ・・・言うと思ったよ。
「我々の世界からの転生者ですか・・・」
美奈はそのあたりに興味があるようだ。
「兄さんが来ているんですか!」
リアンナ(ギリル)はそちらのほうが重要なのだろう。
話し合いの為に向こうに行くことになったので準備をする、
鉄鋼王にも立ち会ってもらうために王宮へ行くことにして、
その前に行くところがあるのであった。
「ご主人様・・・」
俺が居るのは負傷したものを休ませる施設にいる、
そこのベッドに寝ているのはすずなみである。
隣にはまきなみ、彼女も兵装をやられて休んでいる。
「大丈夫か?」
俺はすずなみの手を握り魔力を送りこんでいく。
同時に治癒魔法を発動させて。
顔色がよくなかったのだが、今はつやつやしている。
すると、握った手をぐいっと引かれた。
そして俺の姿勢は彼女に覆いかぶさる形になり、
彼女は開いていた手で引き寄せて誘導する。
そのままキスの体勢に、抵抗することなく開いた手でそっと頬に触れてキスをする。
こちらからとは思わなかったのか少しおどろいているようだ。
離れた時彼女の頬は赤く色づいていた、少し声が震えている。
「ご主人様、わたし・・・いいんですか?」
彼女が言いたいのは自分を受け入れてもいいのかという確認だろう。
いまさらそれを言うのかと思うけど、
彼女の中でははつゆきやしらゆきへの遠慮などがあるのかも知れない。
「いいんだ、よくやってくれたんだ、だからその気持ちに応えたい。」
「だから、体をまずは直すんだ、後の事はそれからさ。」
再び抱き合い口付けを交わす。
つづいてそばでそれを冷静に見ていたまきなみに向かう、
彼女はリングに魔力を流すほうがいいみたいだ、
そうしようとするとすっと手を差し出してきた。
「私も抱きしめて、そしてキスして。」
どういうことなのだろうか?
こちらが反応に困っていると、向けていた顔に少し赤みがさしていた。
「私は、ご主人様が好き。」
それを聞いていたすずなみが声を掛ける。
「まきなみちゃんも私と同じ・・・でも彼女は伝えるのが苦手だから。」
そうだったのか、その辺がわからないなんて、俺もまだまだだな。
「わかった、その気持ち大切に受けさせてもらうよ。」
俺は彼女にも同じように抱きしめてキスをするのであった。
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とりあえず、皆の準備ができたようだ。
鉄鋼王をはじめ主だったものたちだけで向かうことにした。
「では、行きますよ。」
転移魔法を発動させる。
巨大な魔法陣が形成され光に包まれる。
そして、一瞬のうちに風景が変わって行った。
ルアンの王都郊外、先ほどの戦場のそばに出た。
若林さんたちや筆頭従者さん、魔族の皆さんもそろっている、
ルーダ王女の姿も見える。
臨時の話し合いをするためだが空間魔法で作ればいいだろう。
リアンナはガイザムの姿を見て駆け出した。
「兄さん!」 「無事だったか!」
感動の対面だが、メイスフィード以外の魔族たちは驚いている。
まあ、獣人が妹だって言ってもね、説明してても驚くか。
「驚いた、あの子がギリルなのか?」
「実際に目にするとまあ驚くよな。」
俺は魔族の若く見える男の問いに答える。
鉄鋼王国から来た皆の目線が彼に集まった。
俺は彼を皆に紹介することにした。
「彼は、魔族を束ねる魔将で次期魔王だよ。」
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